表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵家に行儀見習いとして送られた竜人の令嬢は、魔導具作りの夢を捨てたくない  作者: 野干かん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/49

4話 ジルベリヒト 1

 [ ヴァールシュ王国・王都クロイツシュラーセ直轄領 ]


 モルゲンレーエラント侯爵広域領の属する国、ヴァールシュ。その王宮を二人の男性が歩く。

 王宮騎士団の礼装に身を包んだ眩い銀髪の青年と、赤みを帯びた髪色をした50代と思しき男性。


 二人が硬い表情のまま王宮の一室にたどり着くと、警備を務める騎士たちは危険物がないかを確かめ、入室の許可を出す。


「失礼します。モルゲンレーエラント侯爵スタイレン・モルゲンレーエラント・シュタインフェステ並びに」

「王宮騎士団所属、ジルベリヒト・モルゲンレーエラント・シュタインフェステが参上いたしました」

「入ってくれ」


 奥から聞こえる声を確かめると、スタイレンとジルベリヒトは扉を開けて入室し、待ち構えていた人物へ慇懃な礼をする。


「急に呼び出して済まなかったな」

「陛下のお呼びとあれば、一も二もなく馳せ参じるのがヴァールシュ王国貴族であります」


 陛下と呼ばれた通り、二人を呼び出したのは今上国王であるクローナル・ヴァールシュ・ルームシュヴァルトだ。

 クローナルは二人に対して着席を促し、眼鏡を外してから席を移る。


「年をとったからか、書類仕事ばかりに感けているからか、どうにも目の調子が悪くてな。近いものが見えぬのだ」

「魔法での治療は叶わないのですか?」

「身体の機能に関することは難しいらしい」


 目元を軽く押さえたクローナルは、天井を見上げてから僅かばかり呆けて、肩の力を抜く。


「此度呼び出したのは、…我が娘とジルベリヒト君との婚約に関することだ」


 ジルベリヒトは、クローナルの第四子である王女殿下と婚約を結び、それをきっかけに王宮騎士団に勤めることとなった経歴がある。


「解消、でしょうか?」

「悪いな」

「いえ…」


(婚約が決まってから6年あまり。ここ最近の殿下の態度を考えれば…不思議でもないか)


「理由は“呪い”に関することでしょうか?」

「……始祖王、征西帝、鏡開帝といった偉大な先祖たちは威圧的な魔力を持ち、数多を従え追い払った。始祖王の血が流れる正しきしるしを呪いと言うのは、私は不敬だと考えている」


 ジルベリヒトの母であるリリアンネはクローナルの従兄妹であり、現王家の傍流に当たる。


「しかし…実際に魔力を感じることのできる相手を、意図せず威圧してしまう。これは…呪いですよ」

「そう悲観しないでくれ、必要であれば婚約者の紹介もこちらで行ってもいい。なるべく魔力を感知に秀でていない家系を見繕おう」

「お心遣い感謝いたします。ですが暫くは気持ちを落ち着けるための時間をいただければと」

「…そうか」


 クローナルは自身の顎を撫でながら、寂しそうな表情を露わにした。


「実際のところは…我が侯爵家の力を削ぐことが目的でしょうかね?」

「だろうな。しかし、それらは追々話すとしよう。モルゲンレーエラント侯爵広域領を蔑ろにすることなどできようはずもないのだからな」



「それでは失礼します。…王宮騎士団の件ですが」

「私の方から辞令を出しておく。6年という長い間を無駄にさせてしまって悪かったね、ジルベリヒト君」

「いえ、王宮騎士団で鍛錬を積み、学びを得た時間は非常に有意義でした。王家の剣として、王家の鎧としての日々は素晴らしく、掛け替えのない時間でした」


 ジルベリヒトは慇懃な、最上位の敬礼を行い、部屋を後にした。


(ジルベリヒト・モルゲンレーエラント・シュタインフェステ。君の道が偉大な鏡に映ることを祈っているよ)


 この日、王宮騎士団からジルベリヒトという名が消え、シュタインフェステ家へと戻ることとなった。


懸想けそうしていたわけではないが、婚姻を結び生涯を共にすると思っていた分、…気が滅入る)



 この世に生を受けて22年、僕の人生は呪いと共にあった。

 人を圧する魔力を制御できず、魔法や魔導具の類を扱うことができず、僕を孤独にする忌まわしき力。


「すまないな、ジル。我々の政務に巻き込んでいきながら、これといったことをしてやれず…不甲斐なさを覚えるばかりだ」

「構いませんよ。公爵となり正統な血を残すなんて話、荷が重かったので」

「悪いな」

「いえ」


 ヴァールシュ王国の前身、いやそれ以前の昔から現れていたとされる「正統たる徴」に…僕は興味がない。

 対処法は見つかっておらず、これからも見つかることはないだろう。


 気が滅入る。

 誰か…僕に、光さす道を拓いてくれないだろうか。


「そういえば…少し風変わりで気難しい行儀見習いが入るみたいだよ」

「今は…確か、ヴァイナーのオプストホーフェン家から来ているご令嬢が来ているのですよね?」

「ああ。理智的な娘さんでね、到着してすぐに教えることがなくなってしまったとリリアンネが笑っていたよ」

「…それ、行儀見習いとしての意味はあるのですか?」

「オプストホーフェンは順調に力を蓄えているから、対外的な影響力を持つ段階に来ているのだろうね。そのための足がかりとして、モルゲンレーエラントを中心とした人脈形成を行いたいのだよ」

「大変ですね。ところで風変わりな行儀見習いというのは?」

「ヴェレンヴィント子爵領のゼーゲルマン家の出身だそうだ」

「竜血混じりのゼーゲルマンですか?」

「ああ、そうだ」


 久々の故郷、ゆっくりとしたいな。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ