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神喰い  作者: 激田 安
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2

仕事が忙しすぎて投稿を忘れてました。

誰も、彼を引き止めもしない。アルコールの香りが闇に溶けていなくなった瞬間、全員があからさまにほっと息を吐き、体を弛緩させたのが人望の無さを示してた。


「じゃあ、帰るか」


一人が今までの緊張を忘れたかのように明るく言ったのを皮切りに、和らいだ表情で話しだす。


ざわめきの中、帰り始める皆を眺めながら歩き出せずにいた。行ってしまった。本当に誰かがいたら?あの場で無理にでも引き留めるべきだったけど、踏み出せなかった。勇気も力もなかったから。


湊が不思議そうな顔をして振り向く。


「透真?どうしたんだよ」


「俺……、俺やっぱり先輩の様子を見にいくよ」


「お前、もう少しで殴られそうだったんだぞ。お人好しにも程があるだろ」


苦笑しながら言う。どこか不安げな笑い声だった。


「そんなことはないけど。先輩もだけど、女の人が本当にいるなら危ないだろ?」


「待て待て、落ち着けって。あんなとこいるの絶対、訳ありの人間だぞ。お前が巻き込まれる理由はないだろ?」


肩を掴まれて、真剣な目で見つめてくる。

乱雑に肩を組んでくる先輩と違い、力がこもりながらも身を案じる優しさが伝わってくる。

それに応えられない自分が心苦しかった。


「そうだろうけど……。でも、見捨てる理由にはならないからやっぱり、見にいくよ」


「じゃあ、俺も行く」


「は?」


呆れられると思ったところに意外な言葉が飛び出してきて思わず声が漏れる。


「何だよその顔!お前が不安そうにしてるから俺がついて行ってやるよ。親友だろ?」


「そりゃ親友だけど……。俺の我儘なんだからお前が付き合う必要なんて……」


「水臭いな〜。俺が一番困ってた時に助けに来てくれたのも透真だっただろ?だから今度は俺が助ける番!」


いひひと変な照れ笑いする顔に何度、救われたことか。曲げられない性格で呆れられることばかりだった。

それでも、心配して寄り添ってくれる誰かがいることが何よりも嬉しかった。


この暖かさは先輩にはきっと一生縁は無いだろう。嬉しさの中に優越感が入り混じり泥のように粘つきながら満ちていく。仄暗い心地よさを感じるたびに後ろめたく思いながら。


そんな奴のことはほっとけと引き留める先輩や友達を振り切り、呆れた眼差しを背中に受けながら薄暗い入り口に立つ。


「これ、不法侵入になるのかな。俺、法律破るの初めてだ」


湊がどこかウキウキしたように呟く。


確かに不法侵入だ。警察に任せた方がよかっただろうか。じわりと後悔のさざなみが耳に響き渡る。


おっかなびっくりしながら薄闇のなかドアを開ける湊の節が目立つ指を眺める。

ドアノブが子供用の遊具に見えるぐらい大きな手。廃棄物だらけなのにどこか軽快に歩く姿。

不安でも感情を隠せる精神力。

 

何もかも自分にない。

2年になってもコートに出られるかギリギリの実力。ルールを破っても自我を通してしまう身勝手さと不安定さ。

何度も謹慎になりかけた。


扱いにくい選手なんて誰も見向きもしない。湊に近づこうとして誰かが投げ捨てた缶に躓きかけたつま先が憎い。


この不法侵入が大学にバレたら湊も、湊も俺と同じにならないかな。将来有望、誰もが望む絶対エースが俺みたいなトラブルまみれの凡才とこまで落ちてこないかな。


ダメだとわかってるのに止められない。かけがえない友達だからこそ同じ高さまで降りてほしい。自分ばっかりが網膜を灼かれながら上を向き続けてる。

物乞いのように差し出すものもなく奪い続けてる。


対等じゃない。

同じ高さなら対等になれるのに。

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