5
章の切り替わりのため、今日は短くなります。
すみません。
また、ストックが尽きたので多少更新が不定期になるかもしれません。ただ、明日からお休みなのでお休みの間は頑張ってかけたらいいなとは思ってます
なにも、返せなかった。助かる見込みなんてなかったから。建物内で降らないはずの雨、夏なのに凍えるほど寒い気温、謎に満ちた雨を連れた女。どれもが異常で異質だった。
解決しようがない、こんなの。
同じように泣けば慰められるだろうか。泣くのってどうやってやるんだっけ。乾いた目頭に力をいれてみた。
涙は出なかった。
……そこら中に水はあるのだから目尻に水をつけて誤魔化すべきなのか。
言葉を探すために見つめた濡れた床が、青い光をまるで海のように陽気に反射していた。散らばる書類だけはなぜか濡れてなくて不気味だ。
染み込んで同化するはずの水を弾き、黄ばんで薄汚れた紙は自分のようだ。汚くてどこにも交われない異物。
「……どうして、そんな、そんなに落ち着いてるんだよ……」
いつの間にか顔を上げた湊がこちらを向いている。青ざめた顔と対照的に涙で赤らんだ瞳。怯えた顔。
ああ、どうしようもなく俺達は違う。
怖くて、泣いていても湊は、生きるのを諦めない。絶望に浸された瞳の中に生への渇望がある。死を受け入れて泣けない俺とは違うんだ。
こんなにも、湊が悲しんでいるのに俺の心臓は、バクバク大きな音を立てて喜んでいる。
まだ、俺は役に立てる。生きたがってる湊を俺が救うんだ。
びしょ濡れのtシャツごと肩を掴む。お互い冷え切ってるせいか、温もりは感じられなかった。
「諦めるなよ。今までだって色々やってきたけどなんとかなっただろ?俺を信じろ」
逃げる方法もわからないのに不思議と自信に満ちた声が出た。自分を騙そうとしたのかも知れない。嘘が本当になるように。
その声色に乗せられたのか、湊のこわばった顔の筋肉がほぐれるに解けていく。
「お前ってすごいよな……おれみたいにたかだか……才能に……しかないやつに……」
密やかに響いていた雨の音がボリュームを上げて湊の声を遮る。
「えっ?何?」
なぜかとても大事なことを聞き逃した気がする。聞き返したものの、湊はぼんやりと空虚に寒い呟き、ゆっくりと崩れ落ち床の雨粒を撒き散らしながら倒れ込んだ。
あとはご存じの通り、雨を連れた女に襲われた俺たちは何も守れず、どこにも逃げれず俺の親友は冷たい箱に横たわる羽目になった。




