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第六話 異変と怒り

ゆーの視点


あれ…?

ゆーのは自室のベッドの上で目を覚ました

私、寝てた?いつの間に…


コンコン


「はいっていいわ」


入出許可を出すと少し青ざめた様子のメイドが入ってきた。


「話は何?」


息を整えるように一呼吸の間をおいて彼女はゆーのに報告した

普通のことなのにとてつもない違和感を感じた。

しかし、その違和感はすぐに吹っ飛んだ。報告された内容が内容だっただけに。


「東花方桜夜宵がやけました」

「っ!?うそ…あの一番警備が厳重な、東花方が誇る桜夜宵が…本当なのですか?」

「はい。そして西葉方ご当主様から、後日、4方秘儀重要会議が行われますので、ぜひゆーの様のご出席を求めます、と。どうしますか?」


う〜ん、本当は私が出席しても何も変わらないと思うんだけど…


「私を何故呼ぶのか、聞いておいてほしい。私がいなくても、お父様がいれば…」


あれれれれれれ?

先ほどの違和感が頭の中で像を結んだ。またか、と同時に呆れた。こいつなら別にこんな方法でなくとも私と会って話すことなど容易いだろうになぜ毎回毎回こんな問題になるような方法をとるのかゆーのには理解できない。


「かしこまりました。」

「それで?なんのつもりですか?西葉(せいよう)紅亜(くれあ)様。私は一応これでも北雪方の姫。寝屋を襲われたと騒げばどうなるかしらね?」

「っふ、流石はゆーのだね。これでも変装の達人なのだけれど、君の審美眼には敵わないようだ。」


紅亜と呼ばれたメイド…否、少年は服やらカツラやらをそこら辺に投げ捨てる。そこまで派手じゃない服がメイド服の下から顕わになる。しかし、誰でも彼がなにものかわかる。なぜなら、彼の胸元に光る紅色の宝石。ファンシーダイヤモンドに分類されるそれは西葉家を表す特徴的な色だ。これで何度ゆーのが頭痛と腹痛と胃痛を患ったことか。

その脱ぎ捨てた変装道具また片づけないで帰っていくのでしょう?結局。はぁ…


「あと十秒で出てってください。」

「え〜〜?」


マジで苛ついてきた…


「十……、九……、」

「ちょっと、」

「…、七」

「さっきの質問に答える猶予をちょうだい!!」


こいつがこんなことを言うなんて…まぁ大方時間稼ぎなのだろうけど。


「?…まぁ」

「んっ、んっ。答えはズバリっ!僕が父上に頼んだからだ〜。」


はぁ?

少しはまともなことを言ってくれると期待していたが故にいつも以上に呆れ果てた

こいつに期待する方がバカだったか、と猛省する


「ゆーのちゃんと、仲良くなりたいっ!、てお願いしたら叶えてくれたのさっ☆」

「出てってください。」

「えぇ〜嫌だな〜」


めんどくさ…仕方ない。懐に隠していた緊急用の護身術を発動させた


アイスソード


「うっわ!!!!危ないじゃないかっ、ゆーのく」


サンダー


「あぁ!」


か⬛ごおり

あれ? 


「発動阻害ですね?よくできました。おめでとうございま〜す」

「嫌味だよね?でもさ、今の術式、絶対に、お菓子を僕で作ろうとしたでしょ?」

「さあ、なんのことでしょうか」


よーくお気づきになりましたね。パチパチパチ。


「僕は素材じゃないんだけどな〜」


え?


「素材じゃないんですか?」

「結構辛辣っ。ごはっ」


たおれた

見ていて飽きないがさすがにうざくなってきた。


「よ〜し。追い出すか〜」


その言葉を発した瞬間、紅亜は飛び起きた

体力あるなぁと思わず感心してしまった


「まてまてまて。」

「?死んでなかったんですね。」

「ちょっと、今日のゆーのちゃん辛辣すぎない?何かあったの?」 


ふ、感だけはいいのね


「失礼なこと考えてない?」

「いえ。これぽっちも。」

「それで、何かあったの?」

「ふ、あなたに教えるくらいなら全世界に教えますよ。」

「うわ…僕をここまで拒絶するのは君くらいだよ」

「それはそれはとっっっても光栄なことですわね。とてもうれしいですわ。」

「あはは」

「うふふ」 


乾いた笑い声が響く


「僕を怒らせたいのかい?」

「今、現在の立ち位置的には私が有利ですけどね」

「まぁ、そうだね。でも、」


ベッドに押し倒される


「このまま、寝取ることだって可能なんだよ?」

「フフ、何を言い始めると思ったら。あなたにその行為が許されるとでも?」


静電気。


「うわっ!?」

「重いですね、案外。」

「いや、ほんとにどうかしたの?」


スルー


「ゆーのちゃ」

「お嬢様っ!」


執事、じいが入ってくる。


「じぃ!助けてくださいっ」


じいが私と紅亜の間に入る


「誰であろうと許しませんよ?」

「執事長ご無沙汰しております。」

「猫被っても仕方ありませんよ?」

「なぜ、ゆーのと話すのがだめなんだ」


え、それ本気で言ってる…?

ゆーのは紅亜のことを初めて本気で心配になった

不法侵入にボディタッチ等々…今回以外のことも含めれば数え上げればきりがなくなるだろう


「この度は正式なものではありませんので。」

「そうですね、今回は僕が悪かったよ。」


ふふふ、じぃ、ありがとっ!


「今度また会おうね?」

「丁重にお断りいたします。」


絶対嫌だもんね〜


「それじゃあ、ばいば〜い」


窓から飛び降りていった。


「大丈夫かしら?」

「そんなことより、不届き者をお通しいたしましたこと誠にすみません。」

「いいの。西葉方が相手だし。」 

「誠に僭越ながらお嬢様、この度、四方の長を務められるのは御父上ですよ?」


えっ


「嘘でしょ、なんで?」 

「とある事情がたくさん存在するとか」

「ふん。まぁいいわ。」


なんとなく把握はできる。きっと、私の特別扱いと関係してる。


「西葉方に異議を唱えますか?」


う〜ん


「やめておくわ。」


私の遊びをこれ以上制限されたらたまったもんじゃない。…遊び、なのかな?


「そういえば、あなた様の御父上から伝言で『これからは簡単に会えそうにない。』だそうです。」

「そう…。」


お父様…また、か。私が認めるのは貴方だけなのに。なんで、私の周りから大切な人がどんどん消えて行くの?


「じゃあ、いつ、会えるの?」

「それは…」


少し顔が曇る


「わかりません。」


そっか


「ねえ、じぃ、また変わるのかしら?お父様が。ねぇ、また、変わるの?今回は嫌。イヤよ、絶対に」


ゆーのは驚くほど取り乱す。彼女のいつもの冷静さが嘘に見えてしまうほどに。


「あんなに優しくて、厳しくて、私に対して誠実なお父様はいない。いたとしても、お父様以外には絶対に認めない。だって私が求め、知らなかった、それ以上を初めて与えてくれたから。お父様の前のやつなんか、ただの寄生虫よ。この由緒正しき北雪方に来たただの害虫。許さない!お父様以外が来たら殺してやる」


本物の怒り。目から涙も流していた


「私から、言っておきます。お嬢様の我儘。唯一の我儘を、伝えておきますね。」


ぽんぽん、と親が子供の頭を撫でてあやすように、優しく


「本当?」

「はい。私達、使用人の明るく優しいお姫様。」

「あり、がとう」


生まれて初めて取り乱したゆーのはたったこの短時間だけでも疲れ果ててしまった

そのまま気絶するように寝た。

しかし、その疲れは取り乱した疲れだけだったのだろうか。それとも…



一方その頃中央タワー


中央タワーがえぐられていた。

それも地上からはギリギリ見えないぐらいの上層部が人間すらも飲み込んできれいな円を描いて消失していた


「何があった!?」

「異常はなにもない!アレの暴走かっ!?」


そういう声が騒々しく響いてた。

それを物陰から見るゆーのと同じ年頃の少女と少年二人。


「何があったんだろうね。」

「どーせ俺らが教えられてない唯一の存在様の話だろ?」

「それが誰なのか…多分、ゆーのが死ぬ前はゆーのがその存在だったんでしょうね。」

「俺等はなんのために連れてこられたんだか。」

「ほんとーにそれな?このえぐられ方だと上の階、危なそー。いやだなー私の部屋、上じゃん」

「あいり、言葉遣い。」

「は?こんなところで言論の自由がないとか、脱走していいんならいいけどね?」

「まぁ、俺らはいつでも外には出れるからな。」

「衣食住の確保も僕らならできるしね。」

「それでも、」


三人は各々のタイミングで目をつぶった。だけど、


「「「ゆーののために。」」」


なにかの決意を込めたその言葉は自然とそろい、笑いあった。でも、どの笑顔も悲しそうだった。






お父様視点


「あ、あの、当主様!!」


焦った様子のメイドはらしくもなく扉をノックする言う行為を完全に忘れていたようで部屋に飛び込むようにして入出した。

最近こういう言ことが多いな、とかルアは心の中で苦笑した。それと同時にまたもやそんなにヤバイ事案が来たのかと身構えた。もう保管庫が燃やされた程度では驚いてやらないぞと心の中で決意しながらメイドの言葉の続きを聞いた。


「中央タワーがえぐられました!!」


フム、フム。


「はあっ!?」

「………本当ですか?」


さすがに身構えたとはいえ呆気にとられる当主とじい


「え、あっ、はい。」

「なぜだ…なぜ、こんなことに…」

「ご苦労でした。」

「いえ。」


そう言って、メイドは出ていった


「当主様。」 

「なんだ…」

「ゆーの様が先ほど、父親代替わりを聞いて精神が不安定になっておられました。」

「そうか…」


そういうことだったのか…

ゆーのの力は、本人の気持ちや意志に左右されやすい。つまり、怒れば、その矛先がその原因に向くのだ。ゆーのの力は万能だから、な。なんでも知っている。


「それを上に報告しろ。…なにも、変わらないと思うけどな。」


俺だって、嫌だよ。あんなに可愛がっていた娘と生き別れて挙げ句の果てに死が確定しているのに。

まぁ、天罰、なんだろうな。それに最後、中央タワーにいるあの子達に頼むことができればなんの問題もない。


「わかりました…」


そう言ってじぃ、もとい執事長が出ていく。




ゆーの視点


「はぁ、はぁ、はぁ。」


なに?この疲労感。わたし、寝てただけなのに…

寝るだけで疲れるとか、ありえない…というか、普通寝たら疲労感はなくなるものじゃないの?

さすがに主人の異変を感じ取ったのかメイドが部屋の外から声をかけてきた


「お嬢様、大丈夫ですか?」

「ええ、まあ。何故か、疲労感が半端ないけど…」

「良かったです。」


そう言うと下がっていった。

はぁ、お休み〜

それから丸一日、ゆーのは起きなかった。


そのあと、ゆーのは南海方を襲った。寝起きで冴えない頭をなにかがうめつくして、ゆーのは無意識のままに南海方を襲っていた。誰かからもらった服を着て。そこだけは変わらずゆーのだった


『「ふわぁ~。なーんだ」』


そういうゆーのの後ろには人の山ができていた。いや、谷といったほうがよかった。なぜなら、ゆーのが通ったところであろう真ん中には人の体の少しもはみ出さないように整列させられていたから。ゆーのは何もしていない。ただ、ゆーのの闇がいなかった。


『「よわーい。なんか、骨のぉあるやつとかぁ、いないの?」』


あーあ。


闇は言う


なんで、お前は俺を知らない?なのに、なぜ扱える?


…?だ、れ?


ゆーのの意識の断片が返答する。記憶に残さないように会話を試みるには闇がゆーのの意識を奪う必要があった。本人の意識が消える寸前まで。


知らないのか。



あぁ、そうか、お前はもう限界か。しょうがない。俺の存在を知らないのに感情の変化だけで俺を動かせるほうがおかしいもんな。フ…期待しているからな。


え?


なんか聞こえたような、気がするけど…?気のせいか。って、私いつの間にここへ?まあ、いい。目的は達成できるのだから。


ゆーのは目の前にある書見台のみためだが色が全く違うそれに手をかざす。

すぅーとゆーのの耳につけてあるヘッドフォンに吸い込まれた。

データのコピペ完了っと。

来た道を戻る。闇はゆーのの後ろに鎮座した。いつものように


「!”#$%&’()=~」


ハッと振り返るが遅かった。服に何かが吸い込まれた


っち


『「っち」』


忌々しそうにゆーのとゆーのの中にわずかに残ってしまっている闇は舌打ちする


「『印つけられちゃったぁ。』」


ゆーのの声にガラガラとした低い声が乗る

っえ?


「あ、あー」


何も異変はない

なんだ、気のせいか。でも、

名残惜しそうに服を見下ろす

これじゃあ、次は5か月しないとやばいかな。着なければセーフかな。

その事実に安堵する

かーえろ。

一人だけ、ゆーのに印を付けたそいつだけ死んだ。初めての死者ができた。


闇は揺らめく。笑っているように見えたのは作者の気のせいだったのか。

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ぜひ送ってください!




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