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はなかご  作者: 和音
別れの季節
98/106

みんながいるから

「あっ、三人共ただいまー!見てよ、この服似合ってるでしょ?」

なのちゃんはくるりと回ってポーズを取る。黒い羽にちっちゃいツノが生えていて、悪魔のような格好だった。

私達が教室に戻るとすでに西園寺さん達も戻っており、何故かなのちゃんがコスプレをして接客していた。

「なののその服、とても素晴らしいです。最初見た時天使かと思いましたよ。」

「いや、どちらかと言うと悪魔じゃないか?」

「えへへ、可愛いでしょ?もっと褒めてくれてもいいんだよ?」

「可愛いけれどなんでなのちゃんがその格好を?」

なのちゃんはこの学園の生徒じゃないが接客なんてしていいのだろうか?

それはそれとしてなのちゃんはとても様になっているとは思う。さっきからみんななのちゃんのことを見ているし。

「人が足りなさすぎたからアタシが頼んだんだ。元々人が少ないのに西園寺さんも影山さんもどこかいくから困ったものだよ。」

そこには椿もおり、ものすごくだるそうに接客していた。何のキャラのコスプレか分からないが狼の耳がとっても可愛いらしい。

「その件については本当に申し訳ないです。しかし、影山さんが戻って来てくれて本当に嬉しいです。」

西園寺さんは安心した様に優しく微笑む。私としても影山さんが見つかってよかった。

「みんなに迷惑をかけさせて本当にすみません。緊張してしまって。」

そう言って影山さんは頭を下げるがこの場に影山さんを責める人なんていなかった。

「大丈夫ですよ影山さん。嫌なことは無理してやらなくてもいいですから。影山さんがこういったものを苦手なのは理解しています。ただ次からは一言言ってくださいね。」

「そゆこと。人には得意不得意があるからね。それに二人が手伝ってくれたおかげで客がいっぱいだよ。」

「えへへ、私はこういうの憧れてたから楽しかったよ。」

「困った時はお互い様だからね。それに花園さんにはお世話になってるから。」

ピースするなのちゃんといつも通りカッコいい空ちゃん。二人には感謝してもしきれない。

「皆さんありがとうございます。でも僕も少し頑張りたいと思います。西園寺さんや花園だけに負担はかけられませんので。

嬉し泣きする影山さんを私達は温かい眼差しで見る。

この前からずっと思っていたけれど西園寺さんと影山さんはやはり仲がいい。

「そうですか。それなら私達みんなで頑張りましょう。それと日野さんには本当に感謝してもしきれません。」

「それは鈴ちゃんのおかげだよ。鈴ちゃんが影山さんの場所を見つけてくれたから。」

確かに説得したのは私かもしれないが鈴ちゃんがいないと影山さんと話すこともできなかった。鈴ちゃんにはこの前からお世話になってばかりだ。

「流石鈴っち。鈴っちはいつも頼りになるよね。ほら、頑張ったからぎゅーってしてあげる。」

「ちょっと、あまりくっつかないでください。恥ずかしいですから。」

「そんなこと言って嬉しいくせに。私にはバレバレだよ。」

「ハハっ、またやってるね。二人は仲がいいな。」

鈴ちゃんとなのちゃんが戯れているのを空ちゃんと二人で眺める。この時間がずっと続いて欲しい。

『キンコーン、カーンコーン』

気がつけばすでに午前の部が終わりかけていた。

「もう、こんな時間かあ。でもまだ時間はちょっとあるし人もまだ足りてないんだよね。そうだ、せっかくだし咲も手伝ってよ。」

「いや、私は違うクラスだからいいよ。それに少し休みたいから。」

「いいじゃん!せっかくなんだしみんなでコスプレしようよ。」

「ちょっと、私はいいから。助けて鈴ちゃんって鈴ちゃんも乗り気なの?」

私達はなのちゃんと椿に無理やり着替えられて接客することになってしまった。

一応私達別のクラスのライバルなんですが?







「それではこれにて午前の部を終了します。ここからは一度休憩の時間です。午後の部は今から一時間後に開始します。」

あれから結局私達全員で接客をやることになり気がつけば午前の部が終わるまでやっていた。

みんなが頑張ったおかげでたくさんの客が来たし、かなり繁盛したと思う。それに影山さんはおどおどしながらも何とか接客をしていた。それを見た西園寺さんが感動して泣いていた。

「本当にみんなありがとう。おかげで客がいっぱいだよ。このお礼は絶対に返すから。」

「本当ですよ。日野さんがいないとここまで上手くはいきませんでした。感謝の気持ちでいっぱいです。」

「お互い様だよ。それより午後の部もお互いに頑張ろうね。」

「はい。お互いに頑張りましょうね。」

「だね。それと咲の演劇も楽しみにしてるから。」

「それじゃあまた後で。」

午前の部の終了の放送とともに私達は休憩に入ることにした。

私達は西園寺さん達に手を振って教室を出た。

「んー、とっても楽しかったね。これから休憩時間でしょ?どうしよっか?」

「そうですね。とりあえずみんなでご飯を食べるところからですね。」

「うん、私もそれがいいと思う。それじゃあ、早速行こっか。」

午前中は体をいっぱい動かしたため、もうお腹が空いていた。午前はもっとゆっくり回るつもりだったが結局ほとんど回ることが出来なかった。楓先輩のところにも行きたかったのに。

「それでどこで食べるつもりなんだい?」

「今日はみんなが来るから大きいお弁当を持って来たんだ。だから私の教室で食べようよ。」

「やったー、咲っちの料理は美味しいからたのしみだよ!そういうことなら早く咲っちの教室へGOだよ。」

「はあ、はしゃぐのはいいですが迷惑はあまりかけないでくださいね。あと走ったら危ないですよ。」

私達は四人で会話をしながら教室を目指した。

今日はみんながいるからかいつも以上に人に見られてもどかしい。

「チッ、さっきからなのがいやらしい目で見られてる気がしてイライラしますよ。これだから共学校は困ります。」

「そう言えば鈴っちは女子校だったね。確かに女子校は気楽そうでいいよね。私はよく告白されるから困っちゃうよ。」

私となのちゃんは共学校で鈴ちゃんは女子校だった。ちなみに空ちゃんは仕事に専念するために高校は辞めたらしい。

「女子しかいないといっても鈴蘭はカッコいいからどうせモテモテなんだろう?」

「まあ、かなりモテますよ。でも男に告白されるよりは幾分かマシですね。なのも私と同じが学校に来ればよかったですのに。」

「いや、鈴っちの高校お嬢様学校じゃん!私には絶対無理だよ。それに今の学校は友達も多いしとっても楽しいんだ。」

確かになのちゃんは昔から誰とでも仲良かったからどこに行っても馴染めそうだ。

「なのは誰にでも好かれる性格ですからね。それと空もかなりモテるんじゃないんですか?それこそ女の子とかにも。」

「確かに女性ファンはかなり多いな。最近はかなりファンも増えてきて嬉しい限りだよ。」

空ちゃんは有名人ということもありものすごくモテる。中学の頃からも人気だったし今では顔を隠さないと町を歩けないくらいだ。

本当に私の幼馴染達はみんなすごい。

「ふふっ、やっぱり相変わらずみんな人気者だね。私は友達もたくさんはいないし告白とかされないからみんなが羨ましいよ。」

私がそう言うとみんなが何言ってるんだコイツみたいな顔で私を見つめてくる。もしかして今何か失言しただろうか?

「それ本気で言ってます?」

「咲っちってば本当に自己評価低いよね。きっとこの学校にも咲っちのこと好きな人がたくさんいると思うよ?」

「そ、そんなことないよ。だって告白とかされたことないし。」

確かによく学校内で話しかけられることはあるけれど告白とかはされたことはない。蜜柑や柳さんの方が周りからモテると思う。

「ふふっ、咲は昔から変わってないな。」

「本当に鈍感なままですね。これだから咲にはイライラするんですよ。」

「本当だよ。咲っちってばもっと自分に自信持ちなよ。じゃないといつか痛い目みるからね。」

「えっ、何で?私変なこと言った?」

何故か分からないがみんなから呆れられてしまった。

よく分からないがとりあえずみんなで私の教室に入るのだった。








「ただいま、今戻ったよ。」

「あっ、やっと帰って来た!ずっと咲に会いたくて仕方なかったよ。」

私が教室に戻ると蜜柑がいきなり抱きついてくる。今日は中々一緒にいれなかったからかいつもより強く抱きしめられて恥ずかしい。

それに何故か教室には人が一切いなかった。

「むぅ、咲っちから離れてよ。咲っちは私と抱きつこう?」

「貴方は咲と一緒にいたんだからいいじゃん。私は咲エネルギーを補充しないとだから。」

「二人とも喧嘩はよしてください。咲が困るだけですよ。」

二人はまた喧嘩しそうな雰囲気で私達はため息を吐くしかない。この二人は仲が悪いから困ったものだ。

今は鈴ちゃんがいるからいいが私一人だと止めれる気がしない。

「それより何でみんないないの?もしかして何かあったの?」

「ま、まあ色々とあったんだけれど多分何とかなるから咲は心配しなくてもいいよ。それより咲は午後からまた接客でしょ?だから今はゆっくり休みなよ。」

「分かったよ。それじゃあゆっくりしておくね。」

何があったのか気になるが今は気にしないことにした。私もかなり疲れたから早く休みたかった。

私は大きなお弁当箱を開けて昼ごはんを食べる。

「うわあ、やっぱり咲っちの料理は美味しそうだね。もう食べてもいい?」

「うん。いっぱい作ったからたくさん食べていいよ。」

唐揚げに卵焼きにハンバーグなど様々な料理をみんなで話しながら食べることにした。

こうやってみんなで食べるのは本当に久しぶりでなんだか感動すら覚える。

「やっぱり咲の料理はとても美味しいですね。それにしても浅野さんは何故一人で教室に?」

蜜柑は最初話すか戸惑っていたが私と鈴ちゃんが睨むと諦めたように話してくれる。

「色々と事件があって今はみんなで動いているんだよ。それで教室に誰もいないと危ないから私だけ残ったっんだ。」

「ちゃんと内容を教えてよ。やっぱり私達のクラスのことだから気になるよ。」

何があったのか気になって仕方がない。もし、大変なことなら私も力になりたい。何より私だけ仲間はずれなのは嫌だった。

「それもそっか、それなら一つずつ説明していくよ。まずは東が怪我をしちゃったんだ。床が濡れてたせいで滑っちゃって。」

「ええ、それって大丈夫なの?大きな怪我じゃないよね?」

いきなり衝撃的な内容でびっくりしてしまう。まさか東くんが怪我をするなんて。

「それが足を挫いたせいで劇に出るのは危険って言ってた。東もものすごく申し訳なさそうにしてたよ。」

「それじゃあ、劇はどうするの?東くんがいないんじゃ劇はできないんじゃ。」

「うーん、それについてはまだ考え中。代理を探すしかないんだけどもう時間がないからやってくれる人がいるか分からないんだよね。」

東くんはシンデレラの王子役で劇には必須の存在だ。

王子役がいないとなると普通のストーリーで進行するのは不可能だと思う。

「それなら私がやろう。私なら王子役くらい訳ないさ。」

「この学校の生徒じゃない人は劇に出れないよ。ひまりがいてくれたら良かったんだけどね。」

「それは残念だ。それにひまりはおそらく参加してくれないだろうな。

空ちゃんは悲しそうに呟く。確かに今から王子役をこなせる人なんてひまりくらいしかいないと思う。

「なるほど、かなりまずい状況なのは分かりました。それで他の事件と言うのは?」

「ああ、そのことなんだけどね。」

鈴ちゃんがそう尋ねるのと同時に扉が開いて一斉にみんなが入ってくる。特に安立さんがすごく焦ってるように思える。

「本当にごめん蜜柑。これくらいしか食材を貰えなかったよ。このままじゃ午後の部は無理かも。」

「うーん、やっぱりかあ。こうなったら午後は諦めるしかないよね。」

「えっと、何があったの?」

明らかな緊急事態に私は嫌な予感がする。何でいつも問題が起きるのだろうか。

「それが思った以上に人が来たから午後の部の食材がほとんどないの。このままじゃ午後の部は開くことが出来ないよ。」

「嘘でしょ?それじゃあ私達の文化祭はもう終わりってこと?」

私達は安立さんの話を聞いて絶望するしかなかった。

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