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はなかご  作者: 和音
別れの季節
97/104

西園寺さんの悩み事

「影山さんがいなくなったの?」

私達はとりあえず人のいないところに移動して西園寺さんの話を聞くことにした。

「ええ、文化祭が始まるギリギリのところで逃げ出してから今まで見つかっていないのです。どうにかして見つかればいいのですが。」

「そういえば西園寺さんのクラスの出し物って何なの?」

西園寺さんのクラスが何をするかはまだ聞いてなかった。ただ西園寺さんは顔を赤くしてるため、よほど恥ずかしいものなのかもしれない。

「こ、この服を見たら何か分かりますよ。」

西園寺さんの服をよく見ると何とも可愛らしい服を着ていた。ピンクのヒラヒラとしたアイドルの様な服だ。

「わあ、この服プリキュアの服じゃん!もしかしてコンカフェ的な?」

「その通りです。はあ、何故こうなったのか。正直影山さんがどこかに行くのも分かりますよ。」

「コンカフェって何?」

コンカフェの意味を知らない私は頭を傾げた。

「コンカフェとはコンセプトカフェの略。つまり何かのコンセプトに沿ってやるカフェのことですね。今回の場合はアニメ系のコンカフェといったところですかね。」

鈴ちゃんの説明のおかげである程度状況は分かった。それにしてもカフェなんて影山さんが一番嫌がりそうだ。逃げるのも確かに頷ける。

「私はアニメ大好きだから楽しみだよ!今すぐにでも行こうよ。」

はしゃぐなのちゃんの頭を空は軽く叩いた。

「なのはの気持ちは分かるがとりあえず今は人探しの方が先なんじゃないか?」

「ですね。ここは二手に分かれましょう。咲と私で回るのでなの達はあちらの方を頼みます。」

鈴ちゃんの指示のもと、二手に分かれて影山さんを探すことにした。それにしても鈴ちゃんのことだからなのちゃんと二人で探すとか言い出すと思っていたのに意外だ。それと鈴ちゃんと二人きりなのは少し怖くもある。

「オッケー、それなら見つかったらすぐに連絡するからね。」

「ええ、では私達もすぐに向かいましょう。行きますよ咲。」

「そ、そうだね。今すぐ行くよ。」

二手に分かれた私達はとりあえず影山さんの行きそうなところから探すことにした。

「それにしても文化祭は人が多いですね。これでは人を探すのも一苦労ですよ。とりあえず一通り探すしか方法はないと思いますが。」

「そうだね。とりあえずパソコン室とかから探してみるよ。」

「では向かいましょう。ああ、それと咲とは二人きりでお話ししたいと思っていたんでちょうど良かったです。今からいっぱいお話ししましょうね。」

そう言って微笑む鈴ちゃんに私は恐怖を覚えるしかなかった。






 

「影山さーん、いるなら返事して。」

私達は影山さんがいそうなところを回っているが一向に見つかる気配がなかった。なのちゃん達からの連絡も来ないしこのままでは時間だけがなくなってしまう。

「ふむ、このままではキリがないですね。そもそもすれ違いになっている可能性もありますから、このまま当てずっぽうに探し回るのは得策じゃないですね。」

「それじゃあ何か方法でもあるの?」

鈴ちゃんが何考えているか分からないが少なくとも何か策がある様に見えた。だって鈴ちゃんはいつも賢いから。

「私もよく一人になりたいことがありますから何となく影山さんが行きそうな所は分かります。それでは今すぐにでも向かいましょう。」

鈴ちゃんはそう言ってどこかへと向かうが行き先は教えてくれない。とりあえず私は黙って鈴ちゃんの後ろをついて行く。

「それにしてもさっきはなのと楽しそうに話してましたよね。あんなにくっついてイライラしますよ。」

「そ、それはなのちゃんの方から抱きついて来たからで。というか鈴ちゃんってどうしてそこまでなのちゃんのことを気にしてるの?」

睨みつけてくる鈴ちゃんに私は狼狽えることしかできない。それでも私は鈴ちゃんのことをもっと知りたかった。

「はあ、貴方は中学の頃からずっとそうですね。鈍感で人の気持ちに全くといっていいほどに気づかない。私達の気持ちにも気づかないなんて。だから私は昔から貴方のことが苦手なんですよ。」

「鈴ちゃんって私のこと苦手だったの?」

鈴ちゃんにそんなこと言われるなんてショックで仕方がない。

「咲は友達ですから当然大切に思っています。その上で貴方にはイラつくことがあるんですよ。」

「イラつくことって?不満があるなら直接言って欲しいよ。」

鈴ちゃんはいつも敬語で優しくて普段から不満とかあまり言わないタイプだった。だから私にだけでもちゃんと不満は言って欲しかった。友達だからこそ本音を聞きたい。

私が鈴ちゃんをじっと見つめると鈴ちゃんは諦めた様にため息を吐いて私の体に答えてくれる。

「それならこの際、貴方に私の気持ちを伝えましょうか。影山さんを見つけるまでの間だけですけどね。」

「分かった。それで私のことはどう思ってるの?」

私は息を呑みながら鈴ちゃんの言葉を待つ。もし、鈴ちゃんに嫌われたらどうしようかとか暗いことばかり考えてしまう。

「咲とは確か小学校で初めて出会いましたね。あの頃から貴方はみんなに人気がありましたね。」

「そんなことないよ。鈴ちゃんの方が人気でモテモテだったじゃん。」

小学生の頃の鈴ちゃんはすでにお嬢様らしくてとても凛々しかった。私はそんな鈴ちゃんがずっと憧れだった。

「確かに私の周りに人は多かったですね。ですがそれは私がお嬢様だからなのではと思ってしまうのですよ。だから咲の純粋さが羨ましいのです。」

「私だって鈴ちゃんがカッコこいなってずっと思ってたし、鈴ちゃんの凛々しさが羨ましかったよ。」

もちろん鈴ちゃんだけじゃなくて空ちゃんやなのちゃんにも憧れていたし、だからこそみんなの隣にいたいと思った。

「それでも私は私をお嬢様としてしか見てくれない周りの人間が嫌いで仕方ありませんでした。そんな中で初めて私を私をとして見てくれたのがなのだったんです。」

確か二人は家が隣で小さい頃からずっと一緒だった。中学でも二人はつね一緒に行動していた。

「だから私はなのが大好きでなののために全てを捧げています。ですがなのは咲にべったりじゃないですか。」

「そ、それはそうだね。なのちゃんはいつも私にくっていていたよ。だからってそんな怖い目で見なくても。」

やはり鈴ちゃんに睨まれと怖すぎる。だからなのちゃんが私にくっつくたびに睨んできたのか。

それに鈴ちゃんはなのちゃんのことを好きと言っていたがその好きはどういった好きなんだろうか?

でも少しずつ鈴ちゃんのことが分かってきた気がする。

「これがただの嫉妬だということはもちろん分かってはいますよ。咲にたまにキツく当たるのが八つ当たりだということも理解しています。ただそれはどうでもいいんですよ。」

鈴ちゃんがそんなこと思ってるなんて初めて知った。

ちゃんと心の内を教えてくれて嬉しい。

「私はなのの気持ちに気づかずに他の女とイチャイチャしている貴方が許せないんです。なのが頑張ってるのを見るたびに私は心が痛みます。」

「そっか、だから鈴ちゃんは私に当たりが強かったんだね。ようやく分かったよ。教えてくれてありがとう。」

鈴ちゃんが私に心の内を教えてくれたことが今はただ嬉しかった。それに鈴ちゃんが私を嫌っているわけではなくて安心する。

「ふふっ、ですのでもしまた貴方がなのの気持ちを無碍にした時は許しませんよ。私は貴方達三人の事が大事ですから。」

「私も全く同じ気持ちだよ。だから今日もみんなと会えて本当に幸せだから。」

高校でそれぞれ別れたけれどみんなのことが大事な気持ちはきっと誰も変わっていないと思う。

「はあ、咲のそう言ったところが私は苦手です。それともう一つだけ話しておきましょう。私はこう見えて人が嫌いで仕方がないんですよ?」

その言葉がやはりどうしても衝撃的に感じる。だって中学の頃の鈴ちゃんの周りにはいつも人がいて嫌そうには見えなかったから。無理をしていたというなら気づいてあげるべきだった。

「そうだったんだ。それでも鈴ちゃんは頑張っていたんだね。」

「なのがいなかったから無理でしたね。なのは私の心の支えですから。」

「鈴ちゃんは流石だね。私にはそんなこと思えないから。」

「私はよく一人になれる場所を探していました。辛い時はそこでよく休んでいました。」

そう言って鈴ちゃんは体育館の中へと入っていく。体育館は文化祭の後にステージをやるため準備している人が数人いた。

体育館全体が飾られていてとても綺麗だった。だからこんなところに影山さんがいるとは思わなかった。

「一人になれる場所はたくさんありますが絶対に見つからない様な場所が私は好きなんです。だから私はよくこういったところに隠れていました。」

鈴ちゃんは体育館の中の真っ暗な倉庫へと入る。そこはとても暗くて私には少し不安に感じた。しかし鈴ちゃんは迷いなく進んでいく。

「貴方達三人は眩しすぎてたまに暗いところに行きたくもなりますよ。貴方も私と同じなんでしょう?」

鈴ちゃんは暗い倉庫の中で迷いなく電気のスイッチを見つけて押した。

するとそこには私達の探していた影山さんの姿があった。

「ビンゴですね。」

「そこにいたんだね、影山さん。」

「ひ、日野さんがどうしてここに?」








「よ、よくここが分かりましたね。」

まさか本当に影山さんがいるなんて思いもしなかった。しかしどうやってここから影山さんを連れ出そうか?

「鈴ちゃんのおかげでね。それより影山さんは戻る気ないの?」

「ぼ、僕にはあんなに可愛い服を着て接客するなんて無理ですよ。西園寺さんや花園さんの様な人がやるべきだと思うんです。」

影山さんの気持ちも分かる。私だってメイド服を着るのは恥ずかしくて仕方がなかった。でもだからこそ少しでいいから影山さんには着て欲しかった。勇気を出して欲しかった。

「そんなことないよ。影山さんだって似合ってるし、少しでもいいから着てみたら?恥ずかしいなら私も一緒に着るから!」

「日野さんが?どうしてそこまでして僕を連れ出したいんですか?」

「影山さんが恥ずかしいのは分かるけれどだからこそ一度やって欲しいんだ。恥ずかしいなら私も一緒にやる。楽しさも恥ずかしさも一緒に共有しようよ!」

ひまりと話し合うために私は勇気を出した。その一歩で私は前に進めたと思う。だから影山さんにも味わって欲しい。

「で、でもみんなみたいにできる気がしません。もし今のみんなに、西園寺さんに嫌われたら僕はもう立てられません。」

「それでも一緒に進みたい。それに私も西園寺さんは絶対に嫌ったりしないから。だから一緒に戻ろう?」

私は影山さんに手を差し伸べる。

「ほ、本当に少しでいいならやります。僕も少しだけ頑張りたいと思います。」

きっと私達なら何だってできる。私にはたくさんの仲間がいるんだから。

「では、そろそろ行きましょうか。なのが教室で待っていますので。」

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