四人で
「日野さん、また新しいお客さん入ったから対応して。」
「分かった。今すぐ行くよ。」
あれから時間が経ち、割とお客さんが入って忙しくなっていた。休憩する暇もなく疲れるがなんだかんだいって楽しかった。
「お久しぶりですね咲。元気にしていましたか?」
「やっほー咲っち。メイド姿めっちゃ可愛いじゃん!」
そこには見覚えのある二人の姿があった。約束していた時間より早くてびっくりする。
「二人とももう来たの?思ったより早かったね?」
予定ではもう少し後に来るはずだった。
「そうなんですよ。もっとゆっくりしていくつもりだったのですがなのが早く行こうとうるさいので。」
「えー、ちょっとくらいいいじゃん。それに咲っちのメイド服を見れたんだから最高だよ。とりあえず何か食べようよ。」
「そうですね。咲が休憩入るまではここで待ちましょう。では私はオムライスを貰います。」
「私もオムライスにしようかな。もちろんケチャップマシマシでね。」
「了解。柳さん、オムライス二つね。」
「分かった。すぐ作るから待っててね。」
オムライスが来るまでの間、私は二人と会話して過ごしていた。やはり二人とも可愛いくて周りもざわついている。二人とも中学の頃からよくモテていたからね。
それにしても二人にメイド服を姿を見られるのは、かなり恥ずかしい。
「そう言えば空ちゃんは?二人だけで来たの?」
「空なら後で来ますよ。空は仕事があるため後で合流する予定だったんです。私達ももう少しゆっくりする予定だったのになのが早く行こうと言うので困ったものですよ。」
鈴ちゃんはそう言って大きなため息を吐く。なのちゃんはいつだって行動力の塊だからしょうがない。
「それくらいいいじゃん!それより咲っちのメイド服可愛いすぎだよ。」
なのちゃんはそう言って私にぎゅっと抱きついてくる。なのちゃんはスキンシップが多すぎて困る。
「コラー、ここの喫茶はお触り禁止だよ。咲にはくっつきすぎないでよ。」
なのちゃんが私に抱きついているとすごい速度で蜜柑がやってくる。これはものすごく嫌な予感がする。
「別に咲っちとは長い付き合いだしこれくらい普通だよ。」
「ずるい。それなら私もくっつくよ。」
そう言って何故か蜜柑までもが私にくっついてくる。
この二人はあまり合わせない方がいい気がするのだ。
「なの、咲が困っているので離れた方がいいですよ。咲もそう思いますよね?」
ものすごい目で見てくる鈴ちゃんに私は無言で頭を振る。鈴ちゃんはなのちゃんのことになると怖くて仕方がない。
「そ、それよりオムライスが出来たよ。早く食べないと冷めちゃうからね。それと蜜柑は持ち場に戻って。」
「分かったよ。後で一緒にいようね。」
蜜柑が持ち場に戻るのを見届けながら私達は三人でおしゃべりする。
蜜柑がいると色々と面倒くさくなるから困ったものだ。
「うわあ、すごく美味しそうだね。そうだ、萌え萌えきゅんってやつやってよ?」
「何、今それ流行ってるの?」
私はすごく大きなため息を吐いた。
「よーし、ご飯も食べたことだし空ちゃんに会いに行くぞー。」
「そうですね。どうやら空は外のベンチで待っているらしいのでそこへ向かいましょう。」
二人がご飯を食べ終わり、私もやっと休憩時間に入れたからとりあえず空ちゃんと合流することにした。
私達は教室を出て外へ目指すが廊下にはたくさんの人がおり、なかなか進まなかった。
「いやー、それにしても咲っちのメイド喫茶レベル高かったね。外装も内装も完成度高かったし料理も美味しい。なんと言っても咲っちのメイド姿がとっても可愛い!」
「ちょっと、なのちゃんってばそんなに触らないでよ。恥ずかしいよ。」
「よいではないかー。」
廊下は人が多いせいでものすごく恥ずかしい。それに私がなのちゃんに近くづくと鈴ちゃんに何されるか分からない。
「なのはもう少し周りを見てください。それと咲も一ついいですか?」
「いいけれどどうしたの?」
「なのにはあまり近づきすぎないように。私が私じゃ入れなくなるので。」
鈴ちゃんは耳元でこっそりと呟く。
「も、もちろんだよ。そこはちゃんとするから安心して。」
いつもよりワントーン低い声で呟く鈴ちゃんに私は震えることしかできなかった。
「ふふっ、それなら良かったです。私達は高校生なので節度は大事にしないとですからね。」
「むー、鈴っちってば硬すぎだよ。ほら、鈴ちゃんにもぎゅーっとしてあげるから。」
「ちょっと、恥ずかしいから抱き付かないでください。
そう言って抱きつくなのちゃんに慌てふためく鈴ちゃん。この風景も懐かしい。
「あれ?日野さんと篝さんじゃないですか。どうして二人が一緒に?」
私が歩いていると西園寺さんが話しかけてくる。何故西園寺さんが鈴ちゃんを知っているのだろうか?
「鈴ちゃんは私の友達なんだ。西園寺さんこそ鈴ちゃんと知り合いなの?」
「ええ、篝さんとは親同士の仲がいいので定期的に会っていますよ。」
「ふふっ、西園寺さんとはそれなりに交流がありますからね。」
柳さんといい西園寺さんといいやはりお嬢様同士は交流があるものなのか。
「お二人とも私のクラスの出し物にもぜひ来てください。まあ、今は忙しいので急ぎますが。」
西園寺さんはそう言って慌てた様子でどこかへ行ってしまった。西園寺さんがあそこまで慌てているということは何かあったのかもしれない。
とはいえ私達に出来ることもないし急いで空ちゃんの元へと向かう。
外へ出るとすでに空ちゃんがおりサングラスをかけて待っていた。空ちゃんは相変わらずカッコよくてスタイルがいい。
「やっほー、空っち久しぶりだねー。これでやっと四人揃ったよ。早速みんなで文化祭回ろうよ。」
「ははっ、相変わらずなのはは元気だね。私もみんなと文化祭を回れて嬉しいよ。」
私もこうやって四人で久しぶりに会うのが楽しみで仕方がなかった。高校になってからそれぞれが忙しくて出会うことも出来なかったから昔のように話せて嬉しい。
「私も嬉しいですよ。夏休みの時は空と私はいませんでしたからね。そのせいでなのにも会えなかったの本当に許しませんよ。」
「そ、それはそうだね。それにしても鈴蘭には感謝してるよ。この前は鈴蘭がいてくれたから上手く行ったんだよ。」
「私からもお礼を言うよ。鈴ちゃんは困った時いつも頼りになるからね。」
鈴ちゃんは普段こそ冷たいし私に対して当たりが強い時があるがいざという時は優しいしかっこいいから好きだ。
「友達のために動くのは当然です。困っていれば私はいつでも手を差し伸べますから。」
「さっすが鈴っち。やっぱり鈴っちは優しいね。」
「だから抱き付かないでください。恥ずかしいです。」
私と空ちゃんは二人を眺めながら軽く笑い合った。この何気ない時間がずっと続いて欲しかった。
「それじゃあ時間もないしそろそろ行こっか。」
「だねだね、早速文化祭を楽しむよー。」
「それで最初はどこに向かうつもりだい?」
「そうですね。ご飯も食べたことですし最初は射的とかですかね?」
私達はそれぞれのクラスの出し物を確認してどこに行くかを決める。とりあえず一階から順々に向かうことにした。
「ねえ、あの人たちめっちゃ可愛いくない?」
「ねー、モデルとかかなあ。」
それにしてもみんなが可愛いからかすごく注目されて恥ずかしい。私がここにいていいのか少し不安になる。
「それにしてもどこも完成度が高くて素晴らしいですね。」
「本当だよ!空っちにも咲っちのメイド姿みせたかったんだから。」
「ははっ、それはすごい見たかったな。後で見せてくれないか?」
「まあ、ちょっとでいいならいいけれど。それよりとりあえず射的から入ろうよ。」
私は誤魔化すように射的のやってる教室に入る。ここは確か三年一組だ。
「あらー、咲ちゃんじゃない。久しぶりね。」
教室内に入るとそこには美園先輩がいて、優しく手を振ってくれる。
「お久しぶりです。体育祭の時以来ですね。」
美園先輩には体育祭で足を怪我した時にお世話になった。相変わらずおっとりしてて優しい。
「それにしてもその子たちはお友達?みんな可愛いわね。」
「ありがとうございます。それでは射的を四人分でお願いします。」
「そうね、ルールは説明しなくても分かるかしら?とりあえずポイントが高いほどいい商品が貰えるから頑張ってね。」
私達はそれぞれ射的用の銃を貰い的に構える。
私は早速的に向かって撃つが、当たってもなかなか倒れない。
「先輩、ちゃんと当ててるはずですが倒れませんよ?」
「まあ、それはそれで面白いじゃない?すぐに倒れてもつまらないでしょ?」
さらっとやばいこと言ってない?悪徳店舗か?
「ふっふっふ、咲っちは甘々だね。射的ってのはこうやって撃つんだよ?」
なのはそう言って何度も球を連射し、的の際を狙った。すると的はするりと倒れるのであった。
「あらまあ!貴方すごいわねえ。」
「ふふっ、何と言ってもなのはゲームのプロですからね。」
何故かドヤ顔な鈴ちゃんはともかくなのちゃんは本当にすごい。さすがゲームマスターだ。
なのちゃんは昔からゲームが得意でそれこそ椿や影山さんレベルだと思う。
「まさか一番難しい的を撃ち抜かれるとはねえ。それじゃあ商品のぬいぐるみよ。」
「ありがとうございます。それではまた。」
私達はお辞儀をして三年一組の教室を出た。
なのちゃんは早速クマのぬいぐるみを抱いていてとても可愛かった。
「いやー、いきなり楽しかったよ。次はどこ行こっか?」
「そうですね。ってまた西園寺さんがいますね?」
そこには明らかに焦っている西園寺さんとまた出会う。
「西園寺、何があったの?困ったことでもあれば私達も手伝うけれど?」
西園寺さんは私に気がつくと目を光らせた。
「ちょうどいいところで会えましたね!実は今影山さんを探しているんです。一緒に探してもらえませんか?」
どうやら文化祭だろうとまた私は苦労することになるのだと心の中で諦めるのであった。




