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はなかご  作者: 和音
別れの季節
94/104

伝えたいこと

『キンコーン、カーンコン』

チャイムが鳴り学校が終わった。

私は急いでひまりに会うための方法を考える。やはり可能性として一番あり得るのはひまりの仕事仲間である鏡音空に会うことか。

しかしどうすれば鏡音空と会えるのだろうか。電話番号も知らなければ咲にも頼れない。

お嬢様である柳さんに頼めばもしかしたら会えるかもしれない。

そうなると一旦自分の部屋で準備をしてから柳さんの家に向かうのが1番だ。

「見つけましたよ。貴方が浅野さんですね。」

私が寮に戻る途中に呼ばれて振り返るとそこには長いスカートに大きな帽子を被ったお嬢様のような人に出会った。とてもスタイルがよく美人なためモデルか何かかもしれない。

それと明らかにこの学校のものではないし何故か私の名前を知っていた。一体何者だろうか?

「誰ですか?今私は急いでいるんですが。」

「そんなに警戒しないでください。別に私は不審者ではありませんよ?」

「不審者は大体そう言います。この学校には関係者以外入れないんですよ。」

こんな時に不審者の相手なんてついていない。不審者であるならば寮にだけは近づけない。咲は守る。

「ああ、垣根霞と言う方に入る許可は貰いましたよ。」

そう言って謎のお嬢様は入校許可証を見せる。許可証を持った上でわざわざ私に会いに来るなんて余計意味が分からない。

「警戒心が強すぎますね。私はただ貴方の助けになれたらと思っているだけです。貴方が南雲さんを探していることは知っていますので。」

「何でその話を?もしかしてひまりのマネージャーさん?」

この人はどこまで知っているのだろうか?私の名前を知っているしひまりと関係があるのは確かだと思う。

「私は篝鈴蘭と申します。今日きたのは貴方達の助けになるためです。とりあえずここは目立つので一度外に出ましょう。」

鈴蘭はそう言って車の中に入っていった。

このまま当てがないまま彷徨うよりはこの人を頼った方がいいかもしれない。

私は訳が分からないままついていくのだった。

「では少しずつ話していきますね。まず私は空と咲の幼馴染で今日は空に頼まれてここに来ました。」

車の中へ入ると車は動き出し何処かへと向かっていく。私はとりあえず大人しくこの人の話を聞くことにした。

「鏡音空に?もしかして私がひまりを探していることは分かっていたと言うこと?」

「ええ、貴方達の状況は柳さんと空からある程度聞いておりますので。今日は貴方を南雲さんに合わせるために来たのですよ。」

ある程度事情を知っているなら説明が省けるから助かる。それにしても柳さんとも関わりがあるなんてこの人は何者なんだろうか。

「何でここまで私達を助けてくれるの?」

今の話を聞いた感じこの人がいくら咲の幼馴染だとしてもここまで動く意味はない。何か目的でもあるのだろうか?

「理由はたくさんありますよ。一つは空と咲は幼馴染ですので二人の力になってあげたいからですね。それに空からお願いされたのです。空は忙しいですから。」

「なるほどね。それでわざわざ学園まで来たというの?」

「大変でしたよ。柳さんと垣根さんの力がないとここまで上手くはいかなかったでしょうから。」

「何で二人のことを知っているの?特に柳さんとはどういう関係なの。」

柳さんはこの前私達以外に友達がいなかったと言っていたし二人の関係性が分からない。お嬢様同士絡みでもあるのか。

「それが二つ目の理由になりますね。柳さんに懇願されたのでこれは動かない訳にはいかないなと思ったのです。柳さんとはそれなりに関わりもありますので。」

「そう、二人がどういう関係か分からないけどとりあえず大体の流れは分かったよ。でも貴方がここまでするメリットがないと思うけど?」

この人は何を考えてるか分からず不安になる。咲とも会おうとせずただ言われたことをこなす感じが怖い。

「メリットなら私にもありますよ。この話がうまくいけば私にも都合がいいんです。」

「まあ、よく分からないけど私としては助かるよ。それで今は何処に向かっているの?」

「今は南雲さんと空のいる事務所ですよ。もう少しで着くのでしばしお待ちを。」

結局この人の素性が分からないまま静かに目的地に着くのを待つしかなかった。







車から降りるとそこにはとても大きな建物があった。ここがひまりのいる事務所なのだろうか。

「ここが二人のいる事務所ですね。今はレッスン中とのことなのでそこへ向かいましょうか。」

中もとても広くたくさんの人とすれ違う。私達は軽く会話しながら二階の二人がいる部屋を目指した。

「そういえば咲には会わなくてよかったの?出発前に少しくらい話せばよかったのに。」

「今はその時ではないんですよ。どうせ近いうちに全員揃いますから。」

この人は本当に掴みどころがない。咲と仲直りしたらこの人のことについて色々聞きたい。

「そういえばなのはと夏休み会ったらしいですね。なのはが私に色々と夏休みの思い出を話すのでそこで貴方のことを知ったのですよ。あの時はイライラして仕方ありませんでした。」

「ああ、あの咲にくっついていた子か。やっぱりあの子は咲のことが好きなの?」

「まあ、おそらくそうでしょうね。本当にイライラしますよ。」

よく分からないがこの人がすごく怒っているのは分かった。もしかしてこの人も咲のことが好きなのだろうか。咲ってば本当によくモテるな。

「雑談はこの辺にしましょうか。とりあえず目的地には着きましたよ。この扉を開ければ南雲さんと会えるはずです。私はここで待っているので早く済ませてください。」

「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ。」

私はひまりと会うために大きな扉を開けた。するとそこにはひまりの姿があり、驚きながら私を見ていた。

「何で蜜柑ちゃんがここに?」

「急に来てごめん。今日はひまりと話したいことがあって。」

私はもう逃げない。ちゃんとひまりと向き合うんだ。

「もしかして咲ちゃんのこと?その話はもう聞きたくないよ。」

逃げようとするひまりを私は塞ぐように立つ。逃げていたら根本的な解決には至らない。

「待って、私の話を聞いてよ。どうしても文化祭には来て欲しいんだ。」

「無理だよ。もう、咲ちゃんとは会わないと決めたんだから。それに蜜柑ちゃんだって協力してくれたよね?」

確かにあの時は私もひまりに協力した。でもこのまま終わらせるのは絶対に後悔する。咲もひまりも私も。

「それでもやっぱり一度ちゃんと話し合うべきだよ。ひまりだってこのままじゃ辛くなるだけだよ。それに私はひまりに謝りたかったんだ。」

「蜜柑ちゃんがあたしに謝りたいこと?」

「もっと、私がひまりの気持ちに気づいていたらよかったなとか、もっといい対応があったんじゃないかと思ってね。だからひまりにはちゃんと謝りたかったんだ。」

ひまりを傷つけたのは私にも非があるんじゃないかと思ってしまう。だからひまりを一人にはできない。だって私達は小さい頃から一緒だったんだ。

「そんな、蜜柑ちゃんは悪くないよ。ただあたしが悪いだけであたしが全部我慢すればいいんだよ。」

「違う!それは違うから。ひまりだけが我慢すればいいなんて間違ってる。」

「蜜柑ちゃん?」

急に大声を出す私にひまりはビクッとする。私はただひまりに怒りを隠せなかった。

ただ我慢するだけでは自分が傷つくだけなのになぜ気づかないのか。何で自分をもっと大切にしてくれないのか。

「ひまりは昔からよく我慢してたよね。ひまりは優しくて人気者で私もそんなひまりが好きだよ。でもだからって自分が傷付けばいいなんて考えはやめてよ。私はひまりの力になりたいんだよ。」

「蜜柑ちゃんの気持ちは嬉しいけどもう遅いよ。今更この気持ちは咲ちゃんに伝えられないし、何よりあたしはもうすぐ転校しちゃうから。」

「遅くなんてないよ。ひまりはもっと正直になっていいい。もしそれで咲に何か言われても私が慰めてあげるから。だからもっと頼ってよ。」

私はひまりを優しく抱きしめた。中学からずっとひまりのことは知っている。だからせめて私の前ではもっとひまりらしく振る舞って欲しい。

「でもやっぱり怖いよ。それに結局転校することは逃れられないんだから。」

確かにそれはひまりの言う通りだ。ひまりが転校するのであれば結局ひまりは咲と離れてしまう。どうしたものか。

「それについては心配いりませんよ。私に考えがあるので。それよりとりあえずこれ以上はここにいれそうにありません。早く撤退しましょう。」

「考えってのは?ひまりが転校せずに済む方法なんてあるの?」

「ええ、その件については私と柳さんに任せてください。絶対に貴方達を離れ離れにはさせませんので。」

よく分からないが今はこの人の言ってることを信じるしかない。

とりあえずひまりに優しく微笑む。

「そういうことだから文化祭には来て欲しいな?みんなで楽しもうよ。」

「うん、蜜柑ちゃんがそこまで言うのなら考えてみるね。あたしのためにここまでしてくれてありがとう。」

「友達だから当たり前だよ。楽しみに待ってるから。」

そう言って笑うひまりに私まで笑ってしまう。だってひまりの笑顔を久々に見たのだ。

演技ではなくただ純粋に笑うひまりはとても可愛らしかった。

「それでは行きますよ。普通は事務所なんて一般人が入れる場所ではないんですから。」

「分かった、今すぐ行くから。それじゃあねひまり。」

「うん。本当にありがとう。」

私はひまりに手を振って事務所を出た。

とりあえず無事に終わって安心した。鈴蘭には感謝しないといけない。








「では私はここで。私も文化祭を楽しみにしていますのでそれではまた。」

鈴蘭はそう言って帰ろうとする。この人は最後までよく分からないままだったな。

「待って、本当に咲に会わなくていいの?多分寮にいると思うけど。」

「いいんですよ。どうせ文化祭で会えますから。そうだ、一つ伝言をいいですか?」

「いいよ、何でも伝えてあげるよ。」

この人のおかげで事が解決したんだ。何でも聞いてあげよう。

「あまり、なのはに近づくなと言っておいてください。ではまた。」

そう言って鈴蘭は車に乗って何処かに行ってしまった。

なるほど鈴蘭はそっちなのね。

とりあえず無事終わった事だし自分の部屋に戻ることにした。咲はまだ怒っているだろうか。私は少し緊張しながらドアを開けた。

「やっほー、帰ったよ。」

私はいつも通り自然に話しかけるがこれで素っ気ない態度だったら泣いてしまうかもしれない。

「やっと帰ってきたね。何処行ってたの?心配したよ。」

中に入ると咲はいつも通り私と話してくれる。もしかしてやっと私を許してくれたのだろうか。

「ごめん、ちょっとひまりとお話ししてて。文化祭には来てくれるって。」

私がそう伝えると咲は信じられないような顔で私を見つめる。

「本当に?もしかして蜜柑が説得してくれたの?」

「うん、咲のおかげで気づいたんだ。本当は私もひまりと別れたくなんてなかったから。」

「私こそごめん。蜜柑にあんなこと言っちゃって。蜜柑だって辛くない訳ないのに。」

泣きそうな顔の咲を私は優しく抱きしめる。

「大丈夫だよ。それよりもうすぐ文化祭だね。残りの時間みんなで準備頑張ろうね。」

「そうだね。私絶対にひまりと話し合うから。」

咲もいつものような表情に戻って安心する。何より咲があのままの態度だったから私はもう死ぬところだからいつもの咲に戻ってくれて本当に良かった。

「それと今日篝さんに会ったよ。咲に言いたい事があるって。」

「えっ、鈴ちゃんに会ったの?なんて言ってたの。」

嬉しそうに聞く咲にこのことを伝えるのは酷だがしょうがなかった。私は心を鬼にして口にする。

「なのはにはあまり近づくなだって。」

私がそう口にすると咲は何とも言えない表情になるのだった。

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