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はなかご  作者: 和音
別れの季節
93/104

文化祭まで

前半は咲、後半は椿視点です。

あれから数日が経ち、ついに明日が文化祭の本番だ。

私達は最後の準備で忙しくバタバタしていた。

とはいえ大きな準備はすでに終わっていて後は細かな作業をするだけだった。それもあってか切羽詰まった雰囲気はなくわいわいとした楽しい雰囲気がクラス中に広がっていた。

「日野さん、こっちの椅子はどこに置けばいい?」

「ああ、それは窓側の方に置いて欲しいかな。それと椅子があと三つ足りないかも。」

私はというと配置係で今はみんなにあれこれ指示を出していた。みんな私の言うことを聞いてくれて嬉しくなる。文化祭でここまでクラスメイトと馴染めるとは思っていなかった。

「咲ってばさっきからずっとやってない?一回休憩しない?」

私が作業していると綾乃が水を差し出してくれる。気がつけば確かにかなり時間が経っていた。

「それもそうだね。一回休もっか。」

私と綾乃は教室の片隅に座って一息つく。周りを見ると柳さんや蜜柑も忙しそうだった。

「それにしても咲、頑張りすぎじゃない?クラスのみんなもいるしもっと頼ってもいいのよ。」

綾乃の言う通り私は無理していると思う。

しかしひまりに喜んでもらう文化祭にしてもらうと私は心に決めたんだ。そのためなら何だってする。

「大丈夫だよ。私はまだ頑張れるんだから。」

「そう、でも困ったら私達に相談してよね?」

「そうだよ、私達だって楽しい文化祭にしたいと思う気持ちは変わらないから。」

私達休んでいると柳さんも隣にやってくる。綾乃も柳さんも優しくてほっとする。

「それもそっか。でも頑張れるとこまでは私もやりたいかな。」

「咲。配置のことなんだけど少しいいかな?」

「何、私は今休憩中なんだけど?安立さんあたりに聞いてよ。」

私達が休んでいると蜜柑がやってくるが私は適当にあしらった。あれから数日蜜柑とはまともな会話をしていない。一方的な喧嘩をしていた。

「そっか、ごめんね咲。それなら安立さんに聞いてくるよ。」

そう言って蜜柑と教室を出て行った。

「何?貴方達まだ喧嘩していたの?」

「だってしょうがないじゃん。色々とあるんだから。」

正直私は蜜柑にカッとなって怒ったが蜜柑が悪いとは思っていない。あの時は何もできない私が嫌で八つ当たりをしていた。

でもそれにしても蜜柑は薄情だと思うし、私から謝るのは恥ずかしいからいまだに変な空気になっている。いつ謝ろうかな?寮でも全く話してないからすごく気まずいのだ。

「二人とも大変だね。でも日野さんもそろそろ正直に謝った方がいいよ?浅野さんの気持ちも分かるから。」

「柳さんも蜜柑の肩を持つの?」

「私も動物園で南雲さんと会った時に分かったの。南雲さんは少しでも触れたら壊れそうで躊躇ってしまう。南雲さんはきっと私達じゃ分からないほど色々と不満を溜め込んでると思うの。浅野さんは南雲さんと幼馴染だから余計にね。」

それは私も理解してる。ひまりが悩んでることに気づいてあげられなかった私だって同類なんだから。

「それに日野さんは勘違いしてるよ?浅野さんは一度本人に会って会話をしているし、その後もマネージャーや鏡音さんを通して南雲さんの状況を把握していたから。」

「そうなの?初めて知ったんだけれど。というか柳さんが何でそれを?」

そんなの初めて聞いた。まさか蜜柑も裏で行動していたなんて。

「私も裏で行動してたの。動物園にいたのも南雲さんと二人きりで話したかったから。それと花園さんや鏡音さんも同様に南雲さんと接触していたよ?」

「嘘でしょ?じゃあ本当に何も知らなかったの私だけってこと?」

「おそらくそうだと思うよ。だから日野さんとはそろそろ仲直りした方がいいと思うよ。」

まさか私は何も知らないまま蜜柑にひどいことを言っていたのか。私は一気に自分が許せなくなった。

周りを見るが蜜柑はどこにもいなかった。私はすぐに蜜柑を探すことにした。

「ごめん、二人とも。私ちょっと行ってくるから。」

「気をつけなさいよ。」

「頑張って日野さん。」

二人に感謝しつつ、私は扉を開けて蜜柑を探しに行く。早く蜜柑に謝りたくて仕方ない。

「でも珍しいわね。柳さんが蜜柑のためにサポートしてあげるなんて。」

「たまたまだよ。それに二人が喧嘩したままというのは違うでしょ?」

「ふふっ、柳さんも優しいのね。それにしてもひまりは大丈夫かしら。」

「それは日野さん次第だけどきっと大丈夫だよ。何だか今の日野さんなら南雲さんを助けれそうだと思うの。」

「そうね。私達は外から見守りましょうか。」







ここの屋上は人が来ないし風当たりがいいからよく暇な時やサボりたい時はここに来る。

嫌なことを全て忘れることができる素晴らしい場所だった。だというのに。

「うう、早く咲と仲直りしたいよ。もう数日咲に抱きついてないんだよ?最悪だよ。」

「いや、最悪なのはこんなところで喧嘩話聞かされてるアタシの方なんだけど?何でアタシに泣きつくわけ?」

蜜柑はさっきからアタシに泣きついてウザかった。せっかく一人屋上で休んでいたというのに何故コイツの愚痴を聞かないといけないのか。

そもそも蜜柑はこうなることを分かった上での行動じゃなかったのか?

それにしても咲はやっぱりひまりを止めようとするのか。正直分かっていたし、アタシもひまりの考えには思うことがあったから咲には協力したい。

ひまりもひまりだよ。ひまりがもっと我慢なんてせずに誰かに話せていたら、もっと自分に正直になれてたらこうはならなかった。

「とりあえず私が出来ることはやったんだよ?今の所準備は順調だし後はひまりが文化祭に来てくれたらいいんだけど。」

「まあ、無理だろうね。あれからアタシ達さえ連絡がつかないんだから。」

ひまりはおそらくアタシ達とももう会わないつもりだ。ひまりにはもっとアタシ達を頼って欲しかった。

何でこうなったのだろうか?どこを間違ったと言うのか。

「うぅ、本当に方法はないの?咲もひまりもいない今椿しか頼れないよ。」

蜜柑はそう言ってアタシに抱きついてくる。鬱陶しいと思いながらも何とか策を考える。アタシもこのままひまりと離れるのは少しもどかしい。

頼れるとしたら後は鏡音空くらいしかいない。仕事の関係で一番近くにいるあの人であればひまりと会話することは出来るとは思うが。

「正直アタシ達にやれることはもうないと思う。後は二人の動きを見守るしかないんじゃない?」

「やっぱりそうなるのかな?でも辛いよ。だって私達ずっと一緒にいたんだよ。困ってる時は助けてあげたいと思うじゃん。」

ひまりがどれだけ辛い思いをしているかは痛いほど分かる。なのに力になれない自分に苛立ってくる。

「同じ人を好きになるって辛いね。こういう時どうすればいいか分からないよ。」

好きな人が被った時一番楽なのはその思いを隠すことだと思う。そうすれば自分が辛くなるだけで済むから。

特に咲と蜜柑を見てると自分は邪魔でしかなく蜜柑に思いを伝えれる訳なんてないなと思ってしまう。だからひまりの気持ちは痛いほど分かるし、結局自分もひまりと同じ道を歩みそうだなと思う。

「本当に恋愛って難しいよね。正解なんてある訳ないし一度崩れた関係は中々治せない。でもアタシはそれでもいいと思ってる。」

「どう言うこと?壊れたままなんて嫌だよ。」

「うん、すれ違いで壊れるなんて嫌でしょ?それならまだお互いに想いをぶつけてそれで壊れた方がいいでしょ?」

もうこんなドロドロな雰囲気は終わりにしたい。誰もこんなこと求めてないんだから。

アタシの青春は絶対に壊さない。

「だから蜜柑はひまりと話し合わなきゃダメ。それで説得して文化祭に連れてこなきゃ。アタシはここで待ってるから。」

アタシはそう言って軽く蜜柑の背中を押した。早くまたみんなで楽しく会話できるように。

そうしていつかアタシも蜜柑に気持ちを伝えれるように。

「ありがとう椿。そうだよね。私、今すぐにひまりと話してくる。」

蜜柑ってばすぐに行動に移す。やっぱり蜜柑のそういうところがアタシは好きだ。

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