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はなかご  作者: 和音
別れの季節
88/104

柳さんの家

「ねえ、二人共もう少し離れて歩いて欲しいんだけれど。」

どうしてだろうか。私達はただ柳さんの家に向かおうとしてるだけなのにさっきから蜜柑と柳さんがずっとくっついて離してくれない。それどころか空気感もあまりよくなかった。蜜柑はともかく柳さんがここまでくっついてくるのは珍しい。

「柳さんが離れなよ。私は咲と一緒にいるから。」

「浅野さんの方こそそんなにくっついたら日野さんに迷惑だと思うよ?」

何故この二人はこんなにも仲が悪いのか。そして私は二人の喧嘩を止められないでいた。

「はあ、二人とも咲が迷惑してるよ。それにそういうのは家でやりな。」

椿は気だるそうな表情で二人を見つめた。

「しょうがないなあ、椿が言うなら今は離してあげるよ。」

「それもそうだね。それじゃあ早く私の家に行こっか。もう少ししたら着くから。」

椿の掛け声で二人が離れて一気に歩きやすくなる。この場に椿がいてくれて良かった。椿なら二人がどれだけ険悪になっても止めてくれそうだ。

「うう、椿ありがとう。椿がいてくれて良かったよ。私一人じゃ無理だったもん。」

「ちょっ、やめて。アンタがくっついたらダメだって。」

私は感激のあまり椿にくっついていた。だって椿がいなければ私は終わっていただろうから。椿には感謝しても仕切れない。

「あっ、椿だけずるいよ。私もやっぱりくっつく。」

「ちょっとみんなくっつかないでよ。暑苦しいし邪魔なんだけど?」

私達はわちゃわちゃしながらも何とか柳さんの家に向かうのだった。








「嘘でしょ?これが柳さんの家なの?豪邸じゃん。」

椿はすごく驚いた表情で柳さんの家を見た。いや、これは驚いても仕方ない。こんなに大きな家は見たことがない。柳さんがお嬢様なことは知っていたが流石にここまでの豪邸は想像していなかった。今からこの家に入るとなると緊張してしまう。

「えへへ、私友達を自分の家に連れたことないから嬉しいな。どうぞゆっくりして行ってね。」

「ねえ、すごいよ柳さん。ほらあそことか大きい庭があるよ。あっちには大きな像もあるし。ほら、早く入ろうよ二人とも。」

明らかにテンションが高くなってる二人を見ながら私と椿はついて行く。 

「お帰りなさいませお嬢様。その人たちは?」

「私の友達だよ。私達は部屋で遊ぶからお菓子とお茶を用意しておいてね。」

「あのお嬢様がご友人を?なんてことだご主人様に連絡しなくては。」

家に入る時何人ものボディーガードが挨拶してくる。家にこんなに人がいたら私はゆっくりできる自信がない。それにあまりにも大きい豪邸で一生慣れそうにはない。隣を見ていると椿もすごく震えていた。

「ねえ、さっきから震えてるけど大丈夫?もしかして何かあったの?」

「いや、アタシ貧乏性だからこういうの見たら震えちゃうんだ。これは蜜柑の家以上だわ。」

蜜柑の家に行ったことがないから分からないが蜜柑の家も大きいのだろうか。

「そうだったんだね。とりあえず体貸すから柳さんの部屋に行こう?」

「ありがとう。すごく助かる。」

椿を支えながら部屋へと向かうが廊下も長くて移動が大変だ。あまりにも広すぎて私一人だったら迷子になってしまう。

「ここが私の部屋だよ。とりあえずどこかに座ってくれればいいから。お茶とお菓子もすぐにくるから待ってて。」

柳さんの言われるまま私はベットに座った。とってもふかふかなベットで今にも眠ってしまうそうだ。それにしても柳さんの部屋はクマやウサギのぬいぐるみがたくさん飾ってありとても女の子らしい部屋だった。ただ部屋が大きすぎるのと天蓋付きベットがあるだけで。

「うわー、すっごく可愛い部屋だね。ってこの猫さんのぬいぐるみ可愛いなあ。」

「ふふっ、浅野さんは猫が好きだったね。こっちの猫さんも可愛いよ?」

「わあ、本当だ。どれもふわふわしてて可愛い。」

最初は喧嘩しないか心配だったがなんだかんだ仲良さそうにしていて安心する。とりあえず私は緊張のあまり周りをキョロキョロすることしかできなかった。

「椿は調子よくなった?無理してない?」

「まあ、ある程度よくはなったよ。それにしても二人ともすごいね。こんな豪邸での生活アタシには無理だわ。」

「私も同じ意見だよ。お嬢様って本当にすごいんだね。」

「柳お嬢様、お茶とお菓子を持ってまいりました。ご友人方はぜひ楽しんでください。」

緑さんは部屋に入ってくるとそれだけ言ってすぐに部屋を出て言ってしまった。相変わらず緑さんはさっぱりしてるな。あとお菓子とお茶も明らかに高級そうなものでなかなか手を出しづらい。

「それじゃあ好きにお菓子を食べていいからね。」

「ありがとう。それよりもあの本棚見てもいい?」

「うん、好きなように見てもいいよ。」

「あっ、私も気になってたんだ。」

柳さんにそう言われた私と椿は本棚を覗く。そこにはたくさんの本があり私が好きそうな本もたくさんあった。ここは私にとって天国だ。

「ってLunaの本がたくさんあるじゃん。柳さんもLunaが好きなんだね。」

椿がそう言うと柳さんは目を光らせる。

「えっ、花園さんもLunaが好きなの?」

椿って本読むんだ。少し意外かも。

「うん、小さい頃に読んでからずっとファンだよ。お金がないからあんまり買えないけど図書館とかでよく読んでるかな。」

「私もLuna大好きだよ。私達趣味が合うみたいだね。」

蜜柑もお菓子を頬張りながら口にする。どうやらここにはLuna好きしかいないみたいだ。

「やっぱり冒険小説っていいよね。心を動かされるっていうか。」

「うん、私も冒険小説が一番好きなんだ。読んでる途中ワクワクするから。」

みんなで小説の話で盛り上がっている中私は本棚で気になる本があった。

「あれ?奇跡の旅路って5巻出てたんだ。4巻までしか見たことなかったけど。」

そこには私の大好きな小説の奇跡の旅路の最新刊があった。これは私の大好きな小説で続きが出ないかずっと待ってたけど最新刊が出たという情報は一度も見てない。私がそう口にすると柳さんは突然慌て出して顔が真っ赤になった。

「えっとそれは何というかこの前作者に出会った時にもらったやつだから。」

「えっ、柳さんLunaに会ったの?すごいどんな感じだった。」

とても興味深々に聞く蜜柑と突然慌てだす柳さん。何故柳さんが顔を真っ赤にしているのだろうか。

とりあえず私は続きが気になるから5巻を読むことにする。

「待って咲。私も気になるから一緒に見ていい?咲の速度で見ていいからさ。」

「もちろん。それなら一緒に見よっか。」

私と椿はくっついて奇跡の旅路を見ることにした。

「む、椿さっきから咲にくっつきすぎじゃない?」

「いいな、私も日野さんともっとお喋りしたいのに。」

小説に夢中になってる私達はすごい目で見てくる柳さんと蜜柑に気がつくことはなかった。










「はい上がりー。」

「嘘でしょ?蜜柑ババ抜き強くない?」

「そうでしょ。私昔からババ抜き強いんだ。」

私達はあれからいろんなことをして遊んでおり気がつけばもう夕方になっていた。

「それじゃあ、そろそろ帰らない?これ以上ここのいたら柳さんも迷惑だろうし。」

「椿の言う通りだね。暗くなる前に帰ろっか。」

私達は支度をして柳さんの家を出る。

「ふふっ、今日は本当に楽しかった。みんなが良かったらまた遊んでくれる?」

「もちろんだよ。柳さんは大事な友達だから。」

もじもじとこちらを見つめる柳さんに私ははっきりと答える。今度は綾乃達とみんなで遊ぶのも悪くない。

「えへへ、そっか大事な友達なんだね。ありがとうね日野さん。」

笑顔で笑う柳さんに手を振って私達はドアを開けて玄関を目指した。改めてここの屋敷を大きすぎる。玄関まで行くのにかなりの距離がある。

「日野さん、少しよろしいでしょうか?」

私達が玄関に向かう途中緑さんに話しかけられた。緑さんは相変わらず何を考えているか分からない。

「どうしたんですか?」

「いえ、いつも柳お嬢様といてくださりありがとうございます。お嬢様はよく学校で孤立しており笑うこともあまりなかったです。ですが日野さんと出会ってからのお嬢様は毎日が楽しそうでご主人様も喜んでいられました。なのでただ感謝を述べたいのです。どうかこれからもお嬢様の隣にいてあげてください。別れの時が来るまでは。」

「もちろんです。柳さんは大事な友達ですので。」

私は堂々と答える。しかし別れの時というのはどういうことだろうか?

「ふっ、そうですか。その言葉が聞けて安心しました。では貴方達の家まで私が送りますので車に乗ってください。」

初めて緑さんが笑っところを見た。緑さんも柳さんのことが心配なんだろうな。

「ありがとうございます。それじゃあ行こっか咲。」

私達は緑さんの車に乗せてもらい寮まで送ってもらった。緑さんはいつも寮まで送ってくれるから感謝しかない。私達は緑さんにお辞儀をして自分の部屋に入った。

「いやー、今日も楽しかったね。それじゃあ疲れたし一緒にお風呂入ろっか。」

「そうだね。それにしても蜜柑が尾行してるなんて気が付かなかったよ。大人しく我慢できなかったの?」

「だって咲が心配なんだもん。ほら、咲って自覚ないかもだけど警戒心薄いじゃん。今日だって私がいなかったら柳さんと二人で家に行ってたじゃん。」

「いや、それは別に良くない?」

友達の家に行くことは普通だと思うのだが。それに私ってそこまで警戒心ないこともないと思う。

「だーめ。咲は何も分かってないんだから。とりあえず今日は私とお風呂に入りましょうね。」

蜜柑はそれだけ言ってお風呂場に行った。まあ、色々あったが今日も一日を無事終えることができて良かった。文化祭も近いし今日も体を壊さないような早く眠ることにした。

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