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はなかご  作者: 和音
別れの季節
85/104

ファッション同好会

「それでここは一体どこなんですか?」

きらら先輩ときらり先輩に連れてこられた場所はたくさんの服が飾ってある部屋だった。可愛い服からカッコいい服まで男女問わずたくさんの種類服があり、まるで服屋さんだ。まさかこんな部屋があるなんて思いもしなかった。

「ここはあたし達ファッション同好会の部屋だよ。実はあたしときらりはバスケと同好会を掛け持ちしてるんだ。」

きらら先輩はともかくきらり先輩はあまりオシャレに興味なさそうだから意外だ。それにしても同好会の規模とは思えないほどに大きな教室に服のクオリティもものすごく高かった。

「事情は楓から聞いた。欲しい服があったらどれでも持っていっていいから。」

クールなきらり先輩と明るいきらら先輩。双子なのに性格が真逆でびっくりする。

「ありがとうございます。たくさんの服が必要だったので助かります。それにしてもこの服ってもしかして先輩達の手作りですか?」

「そうだよ、この同好会はこれでも何度か賞を取るくらいすごいんだから。咲ちゃんも気に入ったら入ってもいいからね?」

私はオシャレに興味はないがそれでもどれも丁寧に作られていてとてもいい服だということはわかる。明らかに同好会のレベルは超えているクオリティだった。まあ、同好会に入るつもりはないけど。ただでさえ部活と勉強の両立するのは大変なのにこれ以上やるとなると体が持たない。

「ねえ、このメイド服とか咲に似合いそうだよ!」

さっきから蜜柑がガサガサと何がしてるとは思っていたがまさかメイド服とは。私にメイド服は似合わないと思う。

「服は自由に試着していいからね。やっぱり服は可愛い子が着てこそ際立つから。このワンピースとか咲ちゃんに似合いそうだよ。」

「ん、咲はこっちの服の方が似合うと思う。」

「いやいや、こんな綺麗な服私には着れません。」

ここにある服はどれもおしゃれで私が着るには少し恥ずかしいものばかりだ。

「服は着るものなんだからぜひ着て欲しいな。咲ちゃんならどの服も似合うからさ。」

「きららの言うとおり服は着るためにある。だから二人にはぜひ着て欲しい。」 

「まあ、少しでいいなら着ますよ。」

二人の圧には勝てなくてとりあえず着ることにする。派手なやつでなければいいや。

「やった、それじゃあ早速着ようね。ということでこっちが試着室だよ。」

先輩に流されるまま私は試着室に入った。私が試着室に入ったと同時に何かの服が投げ込まれた。

「ほら、とりあえずこのメイド服から着てみようよ。絶対可愛いからさ。」

蜜柑に渡されたメイド服はあまり露出や派手な装飾はなくシンプルなメイド服だった。この程度のメイド服なら着てもいいかも。蜜柑のことだからもっと露出の高い服を渡すと思ってたから少し安心する。

「ど、どうかな、変じゃないよね?」

蜜柑に言われて着てみたがやっぱり恥ずかしい。とても可愛らしい服だが私には似合わない。むしろ蜜柑の方が似合うと思うのに。

「うわあ、めちゃくちゃ可愛いよ。ぎゅっとしちゃうね。」

そのまま蜜柑が私に抱きつき体制が一気に崩れた。先輩がいるというのに思いっきり抱きつくなんて。蜜柑は時々周りが見えなくなるから困る。

「もう、蜜柑ってば急に抱きつかないでよ。危ないじゃん。」

「あはは、怒ってる咲も可愛い。こんなに可愛いと抱きつきたくもなるよ。」 

「そんなに似合ってる?変じゃないよね?」

お構いなしに抱きつく蜜柑に悪い気はしない。だけどもうちょっと場所は弁えて欲しい。周りが気になって仕方がない。というか先輩達がガン見してる。

「ん、そういうのは二人の時にやって。」

「きらりってば恥ずかしがっちゃって。いいじゃん、これくらい普通だよ。何ならあたしも抱きついてあげよっか?」

「本当にやめて。これ以上近づかないで。」

きらりは心底嫌そうにきららを見つめる。この二人も仲がいいな。この二人が一緒にいないことを見たことがないし。それより私一人だけメイド服を着てるのはフェアじゃない気がしてきた。

「もう、私だけメイド服は恥ずかしいから蜜柑も着てよ。」

「おっけー、それなら私も着てあげるよ。私もメイド服を着てみたかったんだ。」

蜜柑は試着室へ入るとメイド服を着て出てくる。メイド服を着た蜜柑が可愛いすぎて何度も見てしまう。確かにメイド服も悪くないかもしれない。

「蜜柑もすごく似合ってるよ。可愛い。」

「本当ですか?今日はご主人様に何でもご奉仕しますよ?」

小声で囁く蜜柑にドキッとしてしまう。こんな可愛い声で言われると恥ずかしい。というか距離も近いし本当にこのままじゃ変な雰囲気になってしまう。

「な、何でもしてくれるの?」

「ご主人様のためなら何でもしますよ?ほら、キスとかでも。」

商談のつもりが気付けばキス寸前の距離までいた。蜜柑の瞳には私しか映ってない。でも今の私に拒むことはできなかった。だって蜜柑が可愛いくて愛おしいから。

「だから二人の世界に入らないで。メイド服なら貸すから寮でやって。」

きらり先輩は無理やり私と蜜柑の距離を離した。きらり先輩がいないとキスしてたからきらり先輩がいて良かった。もう少しで変な空気に飲まれるところだった。いや、もう飲み込まれてはいたけど。

「何ですか、別に咲とイチャイチャしてもいいじゃないですか。せっかくいいところだったのに。」

「そーだそーだ、別にイチャイチャしててもいいじゃん。きらりはシャイだなー。」

「きららは黙ってて。それと貴方達は男子の服と劇の衣装が欲しいんじゃなかったの?」

そうだ、すっかり目的を忘れていた。メイド服を着て楽しんでいた私が恥ずかしい。恥ずかしすきで顔が真っ赤になる。

「そ、そうですね。とりあえず男子の服と劇の服をください。」 

「ん、それじゃあ終わったら洗濯して返してくれればいいから。それと人がいないところでイチャついてね。」

私は顔を真っ赤にして服を受け取る。やはりここまで変な気持ちにさせるメイド服は危ない服だ。もう当分はメイド服は着ないと誓った。

「本当にすみませんでした。それでは私達は文化祭の準備に戻りたいと思います。」

「おっけー、いつでも来ていてからね。」

「来てもいいけどイチャつかないでね。」

私はたくさんの服を持ったまま蜜柑を連れてこの部屋を出た。今は恥ずかしくてまともに蜜柑の顔を見れないけど。

「えへへ、楽しかったね。また今度やろうご主人様。」

「ひうっ、急に耳元で囁かないでよ。恥ずかしいじゃん。」

「あはは、咲ってば本当に可愛いね。恥ずかしいがらないでいいんだよ?」

さっきからずっと距離が近くてドキドキしっぱなしだ。

「二人ともこんなところにいたんだね。探したよ。一体何処にいたの?」

私が恥ずかしくて悶えていると教室に帰る途中で東くんとばったり会った。東くんには何も言わずに出て行ったから少し申し訳なかった。

「ごめん、楓先輩と色々あって。でもそのおかげで服は手に入ったよ。」

「そっか、それなら良かったよ。服は僕が全部持つから貸して?それにしても日野さんの顔が赤いけどどうしたの?」

「私と咲で楽しいことしてただけだよ。今日の夜はもっと楽しいことをしようね?」

「楽しいことって?もしかして二人はそういう関係なのかい?」 

「違う、違うから!それより早く教室に戻るよ。」

明らかに誤解してる東くんと誤解を招く蜜柑に私はため息をつく。何で私だけこんなに恥ずかしい目に遭わないといけないのか?とりあえず目的は達成したし教室へ向かうことにした。もうこれ以上変なことがないことを祈る。








「すごい!これだけの服があれば喫茶店は余裕ね。」

改めて集まった服を眺めていたがこれは圧巻だ。これだけあればとりあえず衣装に困ることはないと思う。後ろで男子達も盛り上がっている。

「すげー、これなら俺たちも表に出れるな。」

「よーし、これで日野さんにかっこいい所を見せるぞ。」

それぞれがやる気に満ち溢れていい感じだ。しかし蜜柑がさっきからすごい目で見てくるしひまりはあれから一度も会わないしで私としては不安要素が多かった。せめて本番だけでも来て欲しいとずっと願っている。

「日野さん、ちょっといいかな?」

私が考え事をしている柳さんが声をかけてくる。いつもと違いエプロンをつけていた。そういえば柳さんは本番裏で料理をする係だった。お嬢様って家で料理とかするのかな?

「いいけどどうしたの?もしかして何かトラブルでも?」

「そ、それが料理があまりにも下手だから私に教え欲しいの。」

「えっと、料理できないのに料理係になったの?」

「だって人前に出たくなかったの。だから私に料理を教えて欲しいの。」

確かに柳さんはあまり外に出ないタイプだけど料理ができないのは相当まずいのでは?とりあえず私が教えれることを教えるしかないか。

「そういうことなら私が教えるよ。とりあえず一回料理を作ってみてよ。パンケーキなら不味く作る方が難しいと思うから。」

「うん、とりあえず作ってみる。」

それから少し待っているとフライパンを持った柳さんがやって来る。それに見た目は形が少し崩れているくらいでそこまで悪いようには見えない。

「作ってみたけどどうかな?」

「うん、とりあえず食べてみるよ?」

「あら、パンケーキじゃない。私も食べていい?」

「おや、パンケーキですか。美味しそうでいいですね。」

私がパンケーキを食べようとしているとちょうど近くにいた霞先生と城戸さんがパンケーキに興味を持っていた。

「ぜひ食べてください。今回はうまくできたと思うので。」

私達はそれぞれ席について柳さんの作ったパンケーキに手をつけた。しかしパンケーキを口にした瞬間全員の手が止まる。

「どうかな、美味しい?」

「あ、これは何というかその。」

「ま、まあ個性的というか。私は個性を大事にすべきだと思いますよ。」

私と霞先生は何とか言葉を選んで誤魔化す。まさかここまでパンケーキ不味く作れる人がいるなんて思わなかった。若干も味も匂いも全てが最悪だった。というかこのままじゃ本番には絶対に間に合わない。

「な、何なのよこれ。不味すぎるじゃない!」

せっかく私と霞先生がオブラートに包んでいたのに城戸さんが大声で叫ぶ。

「美味しくなかった?もしかしてこのままじゃやばかったりする?」

「この味はやばいわよ。私が教えるから早く来なさい。」

「ちょっと待って。そんなに引っ張らないで。」

「いいから早く。このままじゃ店に来た人みんな倒れるわよ。」

嘆く柳さんに怒りを露わにする城戸さん。どうやら私達の文化祭はまだまだ問題だらけのようだ。


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