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はなかご  作者: 和音
別れの季節
82/104

文化祭に向けて

「日野さんそれはこっちに運んで。」

「分かった、すぐ持っていくね。」

「ダンボールは後どのくらいあればいいかな?」

「うーん、まだ全然足りないなあ。」

あれから数日が経ち私達は文化祭の準備に取り掛かっていた。今は必要な物をみんなで集めているところだった。

「浅野さん、ダンボールは集まりそう?」

私はクラスの前ということで苗字で蜜柑に呼びかける。いつも下の名前で呼んでるから少し落ち着かない。

「みんなの家に余ってる物や先生が集めてきた物だけ足りなさそうなんだよね。それに紐やガムテープも足りないかも。」

「そっか、それなら他のクラスに余ってる物がないか見て来るよ。」

私は早速他の教室へ向かおうとするが蜜柑はみんなには見えないように私の裾を掴んだ。

「それなら私も行くよ。咲を一人にするわけには行かないし。」

蜜柑は私にしか聞こえない声で囁く。

「浅野さーん、ここのイラストはどこに配置する予定?」

蜜柑は飾りの配置係ということもありとても忙しそうだった。他のクラスに行くことくらい私でもできるし今回は一人で行くことにする。

「私は大丈夫だから蜜柑は蜜柑のやることをして。大変なことにはならないから。」

「そっか、くれぐれも危ないことがないようにね。」

蜜柑は残念そうに言うと他のクラスメイトの元へと向かっていった。教室を見てみると柳さんと涼くんは料理について考えてるし綾乃もお化け屋敷の内容で悩んでいてみんな大変そうだった。私も私のやるべきことをしよう。 

私は早速教室を出て一番近いクラスから順に向かうことにした。とりあえずダンボールが10個ほどは欲しいかも。後ガムテープや紐とかもあれば良いのだけど。それにしてもやはり予算がカツカツで仕方ない。ただでさえそんなに予算があるわけではないのに二つともやるとなれば節約できるところはするしかない。そのためお化け屋敷の塗装も喫茶の料理もどれだけ安くすませるかみんなで悩んでいた。特に料理と服をどうするかが問題だ。

「うーん、どこにもないなあ。どうしよう?」

あれから私は全ての教室を訪ねた。しかしどこも余っているものはなく、途方に暮れていた。

「あら?まさかここでお会いするとは。何か用事でも?」

私がどうしようか迷っていると西園寺さんとばったり遭遇する。西園寺さんは体操着を着ておりいつものロングウェーブではなく髪を後ろで結んでいた。動きやすいからだろうか?

「それが文化祭にダンボールが必要で探してたんだけどどこにもなくて困っていたんだ。」

「そうでしたか。それならちょうど良かったですね。私のクラスもダンボールが必要で今からスーパーへ向かおうとしてたのです。よろしければ一緒に行きませんか?」

ニコッと微笑む西園寺さんが今は天使のように思える。

「本当?それならすごく助かるよ。西園寺さんは頼りになるね。」

「ええ、ではすぐに向かいましょう。」

やはり西園寺さんはとても頼りになる。私は西園寺さんと共にスーパーへと向かった。








私達は歩いて近くのスーパーへと向かっていた。平日ということもあり人はほとんどおらず、私は西園寺とゆっくり話しながら進んでいた。

「なるほど、お化け屋敷とメイド喫茶のハイブリッドですか。」

「そうなんだ、そのせいで色々とカツカツで困ってて。」

「大変そうですが日野さん達ならきっとできますよ。それに困ったことがあればできるだけ私も力になりますので。それにしても私のクラスも仲良くして欲しいものです。」

しかし西園寺さんはどこか困ったような顔をしていた。明らかに顔に疲れが出ている。

「もしかして何かあったの?文化祭の準備がうまくいってなかったり?」

「そうなんですよ。喧嘩したりサボったりする人がいたりして中々上手くいってません。そのせいで私がサポートしないといけませんので。」

西園寺さんは確かに苦労人気質だから大変そうだ。それに比べると私達のクラスはみんな協力してくれるから楽に進んでいる。これもみんなをまとめてくれる蜜柑のおかげだ。

「西園寺さんは優しいね。西園寺さんのクラスは何するの?」

「私のクラスですか?私のクラスはまあそのなんというか恥ずかしいのでまだ言えません。」

私の質問に西園寺さんは顔を真っ赤にする。一体どんな出し物なのかすごく気になる。

「私は嫌だと言ったんですよ?だというのにみんな変に乗り気なせいで恥ずかしい目に。」

「そんなに恥ずかしいものなの?すごく気になるんだけど。」

西園寺さんならどんな出し物でも大丈夫だと思う。あのいつも凛としている西園寺がここまで嫌そうにすると私は行きたくて仕方がない。

「ふぇ、いくら日野さんと言えど流石に今回は恥ずかしくて無理と言うか。まあ、その少しだけであればいいですけれど。」

「本当に?それなら楽しみに待ってるね。もちろん私のクラスにも来てね。」

「はい、楽しみに待ってますね。ああ、それと日野さんにはお礼を言わないといけませんね。」

「あれ、何かお礼を言われるようなことあったっけ?」

私は西園寺に何かした覚えはなく首をキョトンと傾げる。

「ええ、この前影山さんが外に出た時日野さんが助けてくれたそうですね。影山さん一人では危ないので日野さんがいてくれて助かりました。」

そういえばそんなこともあった。西園寺さんはまるで自分のことのように頭を下げてお礼を言った。きっと影山さんのことが心配なんだろうな。

「私も影山さんが一人で外にいた時はびっくりしたよ。影山さんからプレゼントは。受け取った?」

「ええ、貰いましたよ。あの時は本当に嬉しくて泣きそうでした。」

とても幸せそうな西園寺を見るとこっちまでほっこりする。西園寺さんと影山さんはお互いに思いあっててとてもいいコンビだと感じる。

「それなら安心したよ。今度、二人でどこか出かけてみたら?」

「そうですね、私もそのつもりでいます。まあ、影山さんが外に出てくれるか分かりませんが。」

それはそうかもしれない。でも西園寺の影響か影山さんも少しずつ明るくなっているし今の影山さんならきっと外に出てくれると思う。そこで私は思い出す。この前外に出た時に影山さんが震えていたことを。このことを西園寺さんは知っているのだろうか?知らないとして言った方がいいのか悩ましい。西園寺さんならきっと影山さんの心の助けになってくれる。だけど勝手に言ったら影山さんが傷つくかもしれない。私はどうしたらいいか分からずその場で立ち止まる。

「悩み事ですか?スーパーに着いたので中に入りましょう。」

「ごめんちょっと考えごとしてて。それじゃあ入ろっか。」

結局私は考えるのをやめて、西園寺さんにあのことを話すのはやめた。話さなくてもそこまで大きな事態にはならなさそうだし影山さんの話したい時に話した方がいいと思った。

私は何も言わずにそのままスーパーの中へと向かった。








「ふふ、たくさん貰えましたね。それでは帰りましょうか。」

「そうだね。運ぶのが少し面倒だけど。」

私達は無事たくさんの段ボールを手に入れることができ、後は帰るだけだった。しかし帰る途中の公園に椿の姿があった。

「あれ?椿がなんでそんなところに?学校は?」

私が声をかけるとこちらに気づき手を振ってくれる。制服は着ているがどうしてこんなところで休んでいるのだろうか?

「ああ、少し休んでただけだよ。二人こそどうしてここに?」

椿は呑気に返事をするがその隣で西園寺さんは震えていた。そういえば二人は同じクラスだった。

「もう、花園さんってばサボらないでと言ってるじゃないですか!早く学校に帰ってみなさんの手伝いをしてください。」

「えー、アタシそういうの興味ないし。それに買い物はしたんだし少しくらいやすでもいいじゃん。」

椿はやる気がなさそうにベンチに座っていた。面倒くさそうにする椿とため息を吐く西園寺さん。確かにこの二人はあまり仲が良くなさそうだ。

「そう言う問題じゃありません。文化祭というものはみんなが力を合わせて成り立たせるものです。一人でも輪に入らない人がいれば成り立たないんですよ?」

「いや、サボってるやつ他にもいるじゃん。というかアタシらのクラスで同調なんて無理だよ。」

「た、確かに私達のクラスは中々個性的な人が多く難しいですがきっと協力すればいけますから。なので花園さんは自分のやるべきことをしてください。」

「はあ、しょうがないなあ。後ダンボールも少しは持ってあげるよ。それじゃあ戻るとするから咲もまた今度ね。」

椿はそれだけ言って帰っていってしまった。椿はいつも猫のように自由だ。

それにしても西園寺も大変そうだね。」

「本当ですよ。花園さんはやる気ないですし影山さんはずっと影に隠れていますし。その上でみんなバラバラに行動しますからね。そのせいで私が苦労するのですから。とりあえず早く帰りたいです。」

いや、本当に私のクラスはみんな協力的で助かった。西園寺さんの苦悩を知ったところで私は西園寺さんと学校に帰るのであった。

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