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はなかご  作者: 和音
別れの季節
81/105

立候補

「ほら、もう学校に着くから手を離すよ。」

「えー、もっと咲と一緒にいたいけどしょうがないかあ。それじゃあまた後でね。」

私は校舎前で蜜柑と別れ教室へと向かった。

今日はついに文化祭の出し物を決める日だ。この前はお化け屋敷かメイド喫茶かで悩んだが私はその両方をやればいいという結論に至った。私としてはみんなで協力して楽しめる文化祭にしたい。色々と課題はあるがとりあえず私のやれることは全力でするつもりだ。

「おはよう、柳さん。」

私はドアを開けて席に座り隣の柳さんに声をかける。

「おはよう。昨日は変なこと言ってごめんね。あの言葉は気にしなくてもいいから。」

私が声を掛けると柳さんは今日もいつもと変わらずに微笑んでくれる。

「ううん、柳さんのおかげで覚悟が決まったからむしろお礼を言いたいくらいだよ。それとこれから文化祭に向けて頑張っていこうね。」

「そうだね。私も日野さんの力になれるように頑張るから。」

私も柳さんの考えることは多分同じだ。ひまりが楽しめるような文化祭を作って見せる。

「何二人だけで話してるのよ。私達ももちろん頑張るわよ。」

「せやで、みんなでひまりちゃんが楽しめるようにするんや。」

どうやら私達の話を聞いていた二人も入って私達四人は覚悟を決める。きっと私達ならできるような気がする。

「それはそれとして文化祭の出し物どうするのよ。お化け屋敷かメイド喫茶か決めなきゃ。」

「えっとそのことなんだけど。」

私が綾乃達に説明しようとした時入口から霞先生がやって来た。いつもはチャイムが鳴ると同時にやって来るが今日は少し早い。

「皆さんそれでは文化祭の出し物を早く決めますよ。他のクラスはすでに決まっていますので残るは私達のクラスだけです。それでは浅野さんと日野さん司会をよろしくお願いします。」

霞先生はそれだけ言って私と蜜柑に丸投げする。まあ、先生も色々大変そうだからしょうがないけど。

「それでは文化祭の出し物について決めていきたいのですが私から一つ提案があります。」

私は早速自分の案を提案することにした。みんなが少しざわついている中蜜柑は温かい眼差しで私を見守っている。

「メイド喫茶とお化け屋敷で意見が割れていますが私は両方を合わせたらいいと思います。お互いに協力し合ってよりいい出し物に出来たらいいと思っています。」

私は緊張しながら周りの反応を伺った。しかしみんなあまり乗り気ではなかった。

「そうは言ってもどっちもやるってなったら準備が大変だしね。」

「そもそもお化け屋敷とメイド喫茶を合わせるのもよく分かんねえしな。」

私は挫けそうになるがそれでも諦めたくはなかった。

「それでも私は。」

私がそう言おうとした時城戸さんが手を挙げる。

「私はそれがいいと思うわ。今までになくて他とも被らなそうだし何より楽しそうじゃん。」

「わ、私もそれがいいと思う。確かに準備は難しいかもだけどみんなでやればきっとできると思う。」

城戸さんに続き柳さんも私の意見に賛同してくれる。二人の優しさにうるっとくる。

「確かにちょっと面白そうかも。」

「それな、お化け屋敷と合わせるならお化け風のメイド服とか可愛いかも。」

二人のおかげでさっきよりも少し賛同派が増えた。このまま押し切りたい。

「はいはい、いろんな意見が出たからこの三つの中から投票で決めようよ。それならみんな文句ないでしょ?」

蜜柑はもう結果は分かっているような顔で投票の紙をみんなに配る。蜜柑はこちらを見るとにこっと笑う。その顔は勝つことを信じてやまない顔だ。

私と蜜柑も投票して祈った。そして結果を見るとそれはもう圧倒的な結果であった。蜜柑らしくて可愛らしい。

「はい、それではこれで決定ですね。このクラスの出し物はお化け屋敷メイド喫茶です。」

ああ、なんとか上手くいった。クラスのみんなで絶対に楽しい文化祭にしてみせる。








「これで出し物は決まって良かったです。しかしまだ問題は山積みです。」

霞先生の言う通りだ。二つを混ぜる以上時間もよりかかるし喫茶店の料理や衣装、お化け屋敷の外装作りにたくさんのお金がかかってしまう。その上演劇も文化祭の予算から使わないといけないためなかなかに難しい状況といったところだ。

「とりあえず文化祭で使えそうなものは皆さんで調達して他のクラスにも協力してもらいましょう。明後日から文化祭の準備が始まりますので皆さん力を合わせましょう。」

「よっしゃーやってやるぜ。」

「私何着か可愛い服あるから持っていくよ。」

クラスのみんなも盛り上がっており今の雰囲気であれば大丈夫だとは思う。

「それでは次は演劇決めです。これも出来るだけ早く決まればいいのですが。」

霞先生はため息混じりの声で呟くが私は既にやる役を決めていた。ひまりに見てもらうにはこの役しかない。

「先生、私はシンデレラ役をやりたいです。」

その発言に周りはざわついた。そりゃあそうだ、普段あまり喋らない上に、クラスでも割と陰にいるんだからこんな目で見られるのも当然だ。

「日野さんがこういうのやるの意外だったけどいいんじゃない?」

「分かる。だって日野さんってものすごい美人だもんね。」

意外と温かい眼差しで見られてほっこりする。もっとボロクソに言われるものだと覚悟していた。

「先生、それなら僕は王子役に立候補します。」

王子様役に立候補したのはおそらくこのクラスで一番モテている大野東だった。大野くんが立候補した瞬間何人かの女子がきゃあと騒いでる。

蜜柑の方を見て見るとものすごい目で大野くんを睨んでいた。誰も気づいていないが大野くんどうか逃げて。

「すぐに決まって安心しました。それではここからは皆さんで話し合って決めていきましょう。それで私は職員室へと戻りますので。」

霞先生はそれだけ言って教室を出て行った。

問題は山積みだがここから頑張っていきたい。

「ねえ、日野さん。今日の日野さんなんだかカッコいいね?自分から案出したりシンデレラ役に立候補したりしてさ。」

「ねえ、私すごく可愛い服あるから日野さんに来て欲しいんだ。」

「俺も日野さんが一番シンデレラ役に合ってると思ってたんだ。」

クラスのみんなが集まってきて私は緊張する。だって普段こんなに人が来ることなんてないし。話しかけてくれるのは嬉しいけどどうしたらいいか分からずに混乱していた。

「みんな、日野さんは困ってるからもっとゆっくりと話してあげなよ。」

私が困っていると大野くんが助けに入ってくれる。改めて見ると金髪の高身長で爽やかな顔立ち。それはまさしく王子のようだった。

「ありがとう。それと演劇は一緒に頑張ろうね。」

「うん、僕も演劇なんてやったことないから二人で練習しよう。そして文化祭はここにいるみんなで絶対に成功させような。」

差し出してくる手を私も軽く握る。私は男性が苦手だが大野くんくらいならギリギリいける。

しかし強烈な視線を感じると思い周りを見て見ると柳さんと蜜柑がものすごい目で大野くんを見ていた。

蜜柑に加えて柳さんまで増えていて私は内心ヒヤヒヤしていたが私はクラスメイトと文化祭の話で盛り上がって今日の学校は無事終わることができた。

もうすぐ始まる文化祭に期待を膨らませて私は帰りの準備をするのだった。














「それじゃあまた明日だね。」

「そうね、文化祭が楽しみね。」

私は柳さん達に挨拶をして教室を出る。しかし柳さんが私の服をぎゅっと握りしめる。

「日野さん、男は獣なんだから絶対に気をつけてね。」

「いやいや大野くんはそんなんじゃないから。」

「ダメだよ。最初は優しくして後から襲う気だよ。日野さんは可愛いんだからちゃんと警戒してね。」

柳さんはじっと私の目を見ていた。それを言ったら柳さんの方が可愛いんだからもっと警戒して欲しい。

「まあ、ちゃんと気をつけるよ。それじゃあ文化祭頑張ろうね。」

「うん、それじゃあまた明日。」

柳さん達と別れて私は寮を目指した。今日はもう疲れて何もできない。早く帰って休みたかった。

「やっほー咲。早く寮に帰ってイチャイチャしようね?」

寮に帰る途中突然蜜柑が手をぎゅっと掴んだ。

「蜜柑?ここはまだ学校内だから人に見られるよ。」

「大丈夫、まだここら辺は人が少ないから。それに早く咲に触らないと私の気が気じゃなくなるから。」

そう言って人がいるかもしれないのにお構いなしに抱きついて来る。それに今の蜜柑は明らかに怒っていた。寮に帰ったら何が待っているというのか。

私はドアを開けて部屋の中へと入った。すると蜜柑は私に抱きついて離してくれない。

「咲がクラスのみんなと話してるとこ見ると私モヤモヤしちゃうからあんまり近づかないでね。特に男には。」

あまりにも思い感情に私は何も言えなくなる。しかし蜜柑のそんな思い感情も私は受け止めたいと思う。

「もちろんだよ。それでも文化祭のためには必要なことだから。」

「それは私も理解してる。だから私もやれることは全力でやるし咲がみんなといても我慢するよ。だからその分今日は一緒に寝よう?」

「そうだね。今日はもう疲れたし早めに寝ようね。」

文化祭に向けて私と蜜柑はゆっくりと眠りについた。

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