それでも私は
「やっと戻ってきたわね。南雲さんは見つかった?」
私と蜜柑が戻るとすでに城戸さんがいた。周りを見ると最初より人が増えておりみんな待ちくたびれた様子だった。やはりひまりの人気はすごい。さすが芸能人だ。
「なんとか見つけたよ。柳さんと何か話してみたいでとりあえず危ないことはなかったかな。」
結局二人が何を話していたか詳しいことは分からなかったがとりあえず変なことはなく無事ひまりを連れ戻すことができた。スタッフのみんなはものすごい心配していたがひまり本人が無事だと言うと安心していた。
「そう、なら良かった。もうすぐ南雲さんのライブが始まるわ。全力で応援するわよ。」
城戸さんはペンライトをもってひまりの応援の準備をしていた。それに何故か私達の分のペンライトまである。これがガチ勢と言うものなのか。城戸さんとはあれから何度か話して分かったが相当のひまり推しだ。グッズはもちろんのことひまりの情報はほとんど知っておりもはや怖いくらいだった。
「日野さんには感謝しないとね。日野さんはこんな私にも笑ってくれる。日野さんに酷いことしたのに私に優しくしてくれてありがとうね。」
城戸さんは私に微かに微笑む。まるであの時と同じ人とは思えないくらい優しく柔らかい表情だった。
「だって城戸さんとはもう友達だもん。それにこの前の文化祭決めの時も助けてくれたでしょ?だから城戸さんとはもっと仲良くしたいな。」
城戸さんには本当に感謝している。城戸さんが本当は優しい人だということは知ってる。確かに城戸さんとは色々あったけど今ではもう友達だ。
「それなら良かったわ。私はいつだって日野さんの助けになるから困った時は迷わず言ってね。」
「ありがとう。これからはお互いに助け合おうね。」
私は手を差し出し城戸さんもその手を握り返す。きっと城戸さんとはこれから仲良くなれると確信した。
「もう、そこ手を繋がないでよ。咲は私のなんだから。」
蜜柑はいつだって誰にだって嫉妬深い。少し握手したくらいで騒がれるとたまったもんじゃない。
「私はいつだって南雲さん推しだから心配しないで。それとそんな独占欲丸出しだといつかうざがられるわよ。」
「それはないよ。だって私と咲の仲だもん。城戸さんこそひまりのこと好きすぎてうざがられるんじゃない?」
「は?推し活は別でしょーが。」
「ちょっと待って。もうライブ始まるから一旦落ち着いてよ。」
そう言って睨み合ってる二人を止めようしてると会場が大きな音と共に光出した。
私達は人混みの中に混ざりひまりのライブを見る。ざわついてる中ステージからひまりが出てくる。いつもと違った衣装を着ててとても可愛らしい。
「みんな今日は来てくれてありがとう。今日はいっぱい楽しんでね。」
さっき会った時とは違い元気で明るくいつもテレビで見るひまりだった。今も無理をしていると考えると心苦しくなる。
ライブの途中でひまりと目があったがすぐに目を逸らされる。やはり今のひまりは私のことを避けていると感じてしまう。
「はあ、やっぱり南雲さんは可愛いわね。いつまでも推せるわ。」
城戸さんの言う通りひまりは笑顔で明るくてとてもかっこよくて可愛かった。本当にひまりはすごいと思う。学校を休んでる間もずっと頑張ってきたことがひしひしと感じてくる。
ひまりは歌ったりトークをしたりして気がつけばあっという間に時間が経っていた。
「それじゃあみんな今日はありがとう。これからも私を応援してね。」
ひまりはそれだけ言ってステージを降りていく。ひまりがライブを終わるとそこにはものすごい歓声だけが残った。
「ありがとう。今日は楽しかったわ。それじゃあ明日からは文化祭のために頑張りましょう。」
「城戸さんこそありがとう。また明日ね。」
城戸さんはそれだけ言ってすぐにどこかに消えてしまった。私達の気を使ってくれたのかもしれない。
「はあ、やっと二人きりになれたよ。私達が出かける時大体誰かに邪魔されるんだから。」
「分かったからそんなに怒らないで。きっとまた遊べるから。」
気がつけばもうすでにいい時間帯になっており今から動物園を回るのは無理だった。私もまだ蜜柑と一緒にいたかったがしょうがない。
「そうだね。それじゃあ動物園を出て家に帰ろっか。ただ今日は一緒にお風呂に入って一緒に寝るからね。」
そう言って怒る蜜柑はなんとも可愛いらしい。それにしても今日は疲れたし早く帰って眠りたい。というか最近ずっと疲れっぱなしだ。
私達は手を繋いだまま歩いて駅へと向かった。ちょうど日が沈んでおりとても綺麗な景色が空全体に映し出される。こんな何気ない景色を蜜柑と見れるだけ私は幸せだ。
「それにしてもまさか柳さんとひまりがいるとは思わなかったよ。蜜柑は何か知ってたの?」
「私は何も知らないよ。まあ、ある程度内容はわかる気がするけど。」
あの二人がなんであそこにいたかは明日柳さんに聞くとして今ひまりがどういう状況かが分からない。
それに蜜柑や椿はひまりに関わるなと言った。しかし柳さんはひまりを一人にしないでと言っていた。それゆえに私自身どうしたらいいのか分からなかったがそれでも私はひまりの力になりたいと思ってしまう。たとえそれが迷惑でもひまりは求めてなくてもひまりが困っているのであれば私は力になりたい。
柳さんは私のやるべきことをやれと言った。そして椿は近づかないでとしか言ってない。それなら私のやることは一つしかない。
「ねえ、蜜柑。私決めたことがあるんだ。蜜柑も協力してくれる?」
私は蜜柑に私のやりたいことを伝える。私はまたひまりと隣で笑いたい。
「あはは、やっぱり咲は面白いね。いいよ、それなら私も協力してあげるよ。」
私と蜜柑はひまりを一人にさせないために色々と計画を立てることにした。
私は私のやるべきことを全うしてみせる。
ライブが終わりあたしはマネージャーと合流するために駐車場へと向かう。しかしそこには何故が空ちゃんの姿があった。
「やあ、ひまり。さっきのライブ見てだけどとても良かったよ。」
「ありがとう空ちゃん。だけどなんで空ちゃんがここに?」
空ちゃんは別に仕事があるはずで本来ここにはいないはずだった。
「まあ、私として今のひまりは心配だからさ。それとライブの前に咲と話してたけどライブに影響ないか心配だったよ。」
どうやらそこまで見られていたらしい。それにしてもまさかここに咲ちゃんがいるとは思わなかった。咲ちゃんと会ってから心が痛くて仕方なかったがそれでもあたしは仕事を優先する。もう、咲ちゃんとは会わないと自分の中できめたから。
「心配しないで大丈夫だよ。あたしはもう仕事に集中するって決めたから。今あたし達の人気はどんどん上がってきてる。だから今は咲ちゃんとも会わないから。」
「そうか。しかし絶対に無理だけはしないでくれ。みんなひまりのことが心配なんだ。」
正直咲ちゃんと会いたいしすぐにでも話したい。でも今のあたしに咲ちゃんは毒でしかない。
「後もうすぐ文化祭だろう?ひまりは参加しないのか?咲が文化祭だけでもと言ってたが。」
「今のところ行くつもりはないよ。その日仕事があるし、今は咲ちゃんとは会いたくないから。」
「そうですよ。今はできるだけ仕事のことを考えてください。それが貴方の未来に繋がるのですから。」
扇さんの言う通り今のあたしはやることは決まっている。
咲ちゃんやみんながどれだけあたしを引き留めたとしてもあたしのやることは変わらない。




