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はなかご  作者: 和音
別れの季節
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友達だから

「あれ、なんだかざわついてるね。何かあったのかな?」

私達はひまりのライブを見に会場へと向かったが蜜柑の言う通りそこでは何やらざわついている人がたくさんいた。警備員の人も何やら慌ててる様子で何かあったのかもしれない。

「本当だわ、何かあったのかも。とりあえず見に行きましょう。」

私達は急いでスタッフの人に事情を聞くことにする。もしひまりに何かあったら大変だし。

「あの、この人混み何かあったんですか?みんなざわついているように見えますが。」

城戸さんが尋ねるとスタッフの人は慌てた様子で答えてくれる。」

「君たちも南雲さんのファンかな?実は南雲さんがどこにもいなくて困ってるんだ。もうすぐ時間だと言うのにいつまでも現れなくて。今はみんなで探しているんだが見つからなくて。誰かに攫われたりしてないか心配だよ。」

まさかそんなことになっていたなんて。確かにこの動物園の広さなら迷子もあり得る。

「とりあえず私達でもひまりを探そうよ。ひまりの身に何かあったらいけないから。」

「ええ、私達でも探すわ。南雲さんに何かあったらと思うと。」

「おっけー、それなら今すぐ向かおうよ。」

私達はひまりを探すためにステージを出て動物園の中へ向かっていく。それにしても柳さんだけでなくひまりまでいなくなるとは。

「とりあえずどこから探そうかな。城戸さんはひまりの行きそうな場所とは分からないの?」

私の質問に城戸さんは悩んでいた。今は動物園の中をひたすらまわっているが見つかる気配がない。道端の人に聞いても誰も知らないと言う。ひまりは目立つから分かりやすいと思ったんだけどな。

「それは難しいわ。南雲さんの行きそうな所と言われても思いつかないしこの大きさだと時間までには見つからなそうよ。日野さんこそ南雲さんの電話番号くらい持ってるんじゃないの?」

そう思ってさっきからずっとかけてるのだけど一切音沙汰がない。柳さんもひまりもスマホを見ないのかな?

「さっきから電話かけてるんだけだ出る気配がなくて。蜜柑は幼馴染だし何か分からない?」

「そうだね、ひまりは静かな場所の方が好きだけどこの動物園にも静かな場所はたくさんあるからなあ。ここは一旦二手に分かれる方がいいよ。」

それは蜜柑の言う通りかもしれない。三人で固まっていても意味がない。

「ということで私は咲と行動するから城戸さんは一人で行動してね。」

「二人でイチャイチャしたいだけな気もするけど分かったわ。もし何か分かったら情報共有ね。」

城戸さんはそれだけ言ってどこかに行ってしまった。やっぱり城戸さんはひまりのことが大事なんだな。

「やったー、これでまた二人になれたね。ほら、ぎゅーってしよう?」

城戸さんがいなくなった瞬間蜜柑は私に抱きついてくる。

「ちょっ、蜜柑ってばあまりくっつかないでよ。早くひまりを探さないとだし。」

「ええ、いいじゃん。私だって我慢してたんだもん。咲は城戸さんのこと許したかもだけど私はまだ許してないし。」

やっぱり蜜柑は時折怖い時がある。城戸さんをずっと怖い目で見てたし。今も蜜柑は少し怒ってるように見える。

「もしかして蜜柑怒ってたりする?」

私は恐る恐る蜜柑に尋ねる。

「そりゃあそうだよ。今日は私とのデートでここに来たはずなのに変なことに巻き込まれるんだもん。」

「それは謝るけど今はひまりを探すことの方が大事だよ。早くひまりを見つけて続きを回ろう?」

蜜柑には気の毒だけど今はひまりを探すことの方が大事だ。

「私だってひまりのことは大事だよ。だけどひまりにだって一人になりたい時はあるんじゃない?」

その言い方はまるでひまりの場所は分かっているような言い方だ。

「もしかして蜜柑はひまりのいる場所が分かったりする?」

「まあ、ある程度予想はついてるよ。だけど私は行かない方がいいと思うよ。これくらいの小さなイベントなら少しの遅刻くらい大丈夫だろうし。多分ちょったしたらひまりも戻ってくるだろうし今は一人きりにしてあげた方がいいよ?」

「蜜柑の言い分も分かるけど私はひまりと一度話がしたいな。ちゃんと話せてなかったから一度話してみたい。蜜柑はひまりに近づかないでと言うけどそれでも一度話したい。だからどうかひまりの場所を教えて。」

私は真剣な眼差しで蜜柑を見つめる。このままひまりを一人にさせたくはない。

その思いが届いたのか蜜柑は諦めたように大きなため息を吐く。

「はあ、咲ってば意外と強情だよね。そう言うことなら教えるよ。おそらく蜜柑はこの動物園の一番奥のエリアにいると思うよ。」

「ありがとう蜜柑。それじゃあ早速いこっか。」

「はいはい、すぐ終わらせて私とデートしようね。」

私は蜜柑と手を繋いで動物園の一番奥の公園へと向かうのだった。どうかひまりが無事でありますように。

今の私にはそう願うしかなかった。







「やっと見つけたよ南雲さん。」

動物園の奥にある人気のない場所で南雲さんは本を読んでいた。南雲さんならここにいると思った。

「あれ、どうして柳ちゃんがこんな所に?」

南雲さんは驚いた表情で私を見つめていた。

「最近学校で会えなかったから南雲さんと少し話したいと思って。南雲さんが今日ここにくることは前もって調べてたから。」

「そっか、それにしてもよくここが分かったね。」

「分かるよ。南雲さんは普段は明るく振る舞ってるけど意外と静かな方が好きだよね。だからここにいるんだろうと思って。」

南雲さんと私は少し似てる気がする。普段無理してるだけで本来はこっち側だと思う。

「あはは、柳さんはやっぱりすごいね。まるで探偵さんだよ。それで用事って?」

「そんな大事なことでもないよ。ただお話ししたいだけ。でもその前にライブに行かなくていいの?」

予定ではもうすぐイベントが始まるはず。本来南雲さんがここにいるのはおかしい。

「あたしももう疲れちゃってさ。今日くらいサボっちゃおうと思って。柳さんなら分かるんじゃない?大人の期待に応え続ける日々の苦しさが。」

私は静かに頷く。私も親や偉い人に期待の眼差しで見られて飽き飽きしていた。

「多分だけど今まで頑張れていたのって日野さんがいたからだよね?でも仕事が終わって日野さんと離れてしまう。だから今の南雲さんはこんなに暗いんだね。」

いつもの南雲さんの面影はなくただ絶望してるように見えた。

「そうだよ、よく見てるね。あたしにとって咲ちゃんは太陽で咲ちゃんがいるからあたしはお仕事を頑張れたのにもう咲ちゃんとはお別れなんだ。」

「やっぱりそうなんだね。私としてはまだ南雲さんにはこの学校にいて欲しい。南雲さんは友達だしこのままだと南雲さんが壊れそうで心配だよ。」

南雲さんはいつも明るく一緒にいて楽しかった。だから友達として見過ごすことはできない。

「柳さんがそう思ってるなんて嬉しいよ。だけどそれも無理なんだ。次はまた別の場所で撮影がある。だからみんなとはお別れしないといけない。元々そういう契約で私も分かっていたのに。」

だけど日野さんと会ってしまった。それが南雲さんの人生を大きく変えてしまった。

「私は南雲さんの本心が知れて良かったよ。私と南雲さんは日野さんのことが好きなライバルだけどその前に友達だから。今は何も言わないけど私は諦めないから。ずっと教室で待ってるから。」

「南雲さんは優しね。南雲さんはてっきりあたしのこと嫌ってるかと思ってたよ。ほら、蜜柑ちゃんのこといっつもすごい目で見てるでしょ?」

「それは否定出来ないけどそれでも友達だから。それに私は自分こ力で日野さんに振り向いてもらうから。」

私のイメージが悪い気がする。確かに浅野さんのことすごい目で見てるし否定は出来ないけど。

「そっか、私も柳ちゃんは大切な友達だよ。それは変わらない。だけどどうしても変わっちゃうものもあるんだよ。」

そう嘆く南雲さんの表情はとても悲しく私まで暗くなる。なんとか引き止める術ないか考えるが何も思いつかない。何を言っても南雲さんは戻ってこないような気がした。

「待って、それでも私は。」

「やっと見つけたよひまり。って柳さんがなんでここに。」

私が南雲さんを引き止めようとした時に何故かそこには本来いないはずの人物がいた。

「ひ、日野さん。どうしてここにいるの?」










「なんで二人がここに?」

私達が目的地に辿り着くとそこには柳さんとひまりの二人がいた。まさか二人でここにいたとは思わなかった。

「ただ二人でお話ししてただけだよ。咲ちゃんこそこんな所にいるなんてびっくりだよ。それじゃあ私はライブに行くからまたね。」

ひまりは慌てたようにそれだけ言ってどこかに行ってしまった。もっとお話ししたかったが今は止めることはできない。

「日野さんこそこんな所にいるなんて思わなかったよ。びっくりしちゃった。」

「それで二人は何をしていたの?」

「色々と聞きたいことがあったから話してただけだよ。このために動物園に来たから。」

そう言って笑う柳さんはなんとも可愛い。それにしてもかなり歩いたせいでもう疲れた。

「はあ、疲れたけどこれで咲とイチャイチャできるよ。それじゃあ私は咲とデートするから。」

「うん、それじゃあまた学校でね。」

蜜柑は柳さんを煽るように言うが柳さんは気にしていないようだった。

「うん、もっと話したいけどまた学校で。」

「それと一つだけいい?」

「いいけどどうしたの?」

私が頭を傾げると柳さんは私にだけ聞こえる声で話す。

「南雲さんを一人にはしないで。今の南雲さんを救えるとしたら日野さんしかいないから。」

その意味を私はまだ完全には分からなかったが柳さんの表情から真面目な話だと分かる。とりあえず私は柳に静かに頷く。

「それじゃあ私は帰るね。また明日。」

そう言って柳さんはどこかに行ってしまった。結局何が起こったか分からなかったがとりあえず二人とも無事そうで良かった。それにしてもひまりを救えるのが私だけとはどういうことだろうか?

「よく分からないけど問題は解決されたみたいだし早く帰ろうよ。ほらデートの続きだよ。」

今日は疲れたしもう考えごとはしないでおこう。私は蜜柑の手を繋いで城戸さんの元へ向かうのだった。

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