迷子のお嬢様
「柳さんがいなくなったんですか?」
「はい、お嬢様が今日どうしても動物園に行きたいと言うので連れてきたのですが何処か行ってしまいその後の行方が分からないのです。」
まさか柳さんも動物園に来ていたとは。それにこんなに焦ってる緑さんも初めて見た。
「分かりました。それなら私達も柳さんを探します。」
「助かります。動物園は広いので分かれて探しましょう。それにしてもお嬢様はいつも自由すぎます。」
柳さんはぶつぶつ言いながら柳さんを探しに行った。柳さんも大変そうだな。
「えー、私咲とデートしたいんですけど。柳さんはきっと一人で楽しんでるよ。」
蜜柑はやはり柳さんに対して少し冷たいところがある。しかし柳さんを一人にするのはまずい。柳さんはどこか抜けてるところがあるから心配だ。
「ダメだよ。今は柳さん探しを手伝って。」
「やーだ。ただでさえ時間ないのにもっとなくなるじゃん。私は咲とデートするの!」
「はいはい、とりあえずあっちのエリアから行くよ。柳さんを早く見つければいいんだから。」
いやそうな蜜柑の手を引っ張り私は早速柳さんを探しに向かう。まずは一番人気そうなところから探して行くことにする。それにしても柳さんが動物園に行くなんて珍しい。柳さんはあまり動物とかに興味はないと思っていた。
「はあ、咲がそう言うなら私も探すの手伝うけどその代わり私とちゃんとデートしてね。それとこの人混みの中で見つけるのは難しいよ。電話とかしてみたら。」
「それがさっきから返事がなくて。」
私もそう思ってさっきからメッセージを送っているのだが何も返ってこない。その上電話にも出ないからこの人混みの中から探すしかない。
私と蜜柑は諦めて柳さんの行きそうなエリアから探すことにした。
「ねえ見て、やっぱりパンダさんは可愛いよ。えへへ、パンダさんなんてテレビでしか見たことなかったよ。」
「いや、そんな楽しんでないで柳さんを探してよ。」
蜜柑は柳さんを探してる様子はなくただ純粋に動物を見て楽しんでいた。もちろんパンダは可愛いし私も見たいとは思ってたけど。
「だって動物園に来たからには動物を見なきゃじゃん。それにちゃんと柳さんも探してはいるから安心してよ。あっ、見てよ。パンダさんが笹を食べてる。」
蜜柑は本当に柳さんを探してるのか不安になる。二人は何故か仲が良くないが本当にどうしてなのか。
それにしても一番最初は人気な所に来たがそこに柳さんの姿はなかった。それどころか人が多すぎてこっちが迷いそうだった。
「パンダさん可愛かったなあ。じゃあ次のエリアに行こっか。ほら、迷わないように手を繋ごうね。」
蜜柑は私の手を掴んで次のエリアへと向かう。蜜柑のこういう優しさにドキッとする。それにしても柳さんは一体どこにいるのだろうか?
「うーん、どこにもいないね。そもそもすれ違ってる可能性もあるんだし諦めようよ。」
もう諦めムードの蜜柑は置いといて私は柳さん探しに集中していた。とはいえ蜜柑の言う通りすれ違いになっている可能性もある上に緑さんからの連絡も来ない。正直もう疲れていた。それと急に人の数が増えた気がする。
「諦めはしないけど一度休みたいかな。流石に疲れたよ。」
「それならあそこのカフェでなんか食べようよ。ほら、早く早く。」
蜜柑はいつも元気ですごいと思う。私は蜜柑と一緒にカフェの中へ入りコーヒーとサンドイッチを注文した。
「それにしてもなんか人多くない?このままじゃ柳さんは見つからないし、動物園を全部回れなくなっちゃうよ。」
「だからこそ柳さんが心配だよ。柳さんは絶対に一人にさせちゃいけないタイプだから。」
柳さんは箱入りのお嬢様で世間に疎いから一人にはさせてはいけない。もし危ない大人たちに絡まれていたらと思うと心配になる。とはいえこのまま探していても見つからないかもしれない。一体どうしたものか。
「まさかここでアンタ達に会うとはね。」
私達が悩んでいると城戸さんが話しかけてくる。まさかこんな所で会うとは思いもしなかった。
「柳さんがいなくなった?なるほど、それでどうしたらいいか分からないってことね。」
「そうなんだ。城戸さんは柳さんを見てない?」
私達は偶然カフェで会った城戸さんに色々と話を聞くことにする。城戸さんとは色々あったがあれからは関係は良好で学校でもたまに話したりする仲だ。まあ、蜜柑はずっと城戸さんのことを睨んでるけど。
「見てないわ。そもそもこの人混みで探すなんて無理でしょ。 迷子センターや電話で呼ぶしかないと思うわ。」
「そっか、それならしょうがないよね。それで城戸さんはどうしてここに?」
「あら、一人で動物園に来てたら悪いの?貴方達はラブラブで楽しそうだものね。」
「そうだよ。貴方と違って私と咲はラブラブだもんね。」
「いや蜜柑は話に絡まないで。余計にめんどくさくなるから。それと別に私は馬鹿にしてるわけじゃなくてただ気になっただけだから。」
私が慌ててると城戸さんはクスッと笑う。今の城戸さんはなんだか前より近づきやすい雰囲気だ。
「ふふっ、冗談だってば。そんなに慌てなくてもいいのに。それとここに来たのは動物を見るだけじゃなくてもう一つあるの。この後、この動物園に南雲さんが来るから。」
「えっ、ひまりが?」
そんなこと知らなかった私と蜜柑は同時に驚く。通りで人が多い訳だ。
「はあ、貴方は南雲さんと距離が近くて本当に羨ましいわ。そうよ、今日は南雲さんが来るからこんなに人が多いのよ。せっかくなら貴方達も来たら。もうすぐライブも始まるから出ましょう。」
本当は柳さんを探さないといけないけどひまりにも会いたかった。だからひまりのライブを少し見てから柳さんを探そう。もしかしたら柳さんもひまりのライブを見てるかもだし。
「咲、ひまりのライブを見るのはいいけど絶対に見つからないでね。」
「え、どうして?」
「うーん、説明はできないけどとりあえず見つからないでね。」
蜜柑の忠告を聞きながら私達はカフェを出てひまりのイベント会場まで向かうことにした。
「ここが動物園か。人が多いね。」
「まあ、祝日ですので当然ですね。それにしてもお嬢様がこんな人の多い所に来るとはどういう風の吹き回しです?」
緑がすごい目つきで私を見つめる。私だって普通はこんな人の多い所には来ない。休日であれば本来小説の読み書きに一日使っている。
ただ今日はここに来ないと行けない理由があった。もちろん動物を見ることではない。これは私にとって大事なことだ。
「私だってたまには外に出ようと思うよ。じゃあそう言うことだから私は一人で行くね。」
「ちょっと、一人で行かれては困ります。私もついて行きます。」
私は緑を無視して人混みの中に入って行く。私は一人で会いに行かなければいけない。
それにしても本当に人が多い。普段は外に出ないけど一度くらい日野さんを誘ってデートしてみたい。日野さんは優しくて太陽みたいな私の大切な人だ。だからその日野さんのためにも私のためにも今日ここに来た。
動物園は広くて本来なら迷子になりそうだが今日のために調べてきた。まずは一番奥のエリアへ向かおう。
目的地に向かう途中にたくさんの人に見られる。だから私は外に出るのが嫌いだった。幼い頃からさまざまな眼差しを向けられて嫌気がさす。親からの期待、一般人からの嫉妬、男からの不純な欲望。それが全て分かってしまうから私は極力人と関わりたくなかった。そのせいで友達らいないしクラスでも孤立していた。
しかし高校で日野さんに会ってから変わった。日野さん達といると心が温かくなる。日野さん達は私をお嬢様の私ではなくただの友達として見てくれる。だから私はあの空間がとてつもなく大好きだった。こんな私に優しくして居場所をくれた日野さんのことが大好きだ?
だからその空間を私が守るんだ。絶対にバラバラにはさせない。私は私のやれることを全力でする。
私は気合いを入れて階段を登る。おそらくこの先にいるはずだから。学校では会えないからここで話をつける。
「やっぱりここにいたんだね。予想通りだよ。」
目的地に着くと私の予想通りベンチに座って休憩していた。
「柳さん?なんでここに。」
「実は話があって来たの。少し時間をもらえるからな南雲さん?」




