久しぶりのお出かけ
今日は待ちに待った空ちゃんとのお出かけの日だ。私はいつもより気合いを入れた服装で集合場所へと向かった。蜜柑は最初は一緒に行きたがっていたがなんとか説得してお留守番してもらった。代わりに今度お出かけする約束だ。
「やっほー、早かったね。もしかして待たせちゃった?」
「いや、今来たところだよ。咲とのお出かけが楽しみだったから。」
目的地にはすでに空ちゃんがおり私を見つけると笑顔で手を振ってくる。空ちゃんは有名人のためマスクをつけて隠していたがそれでもやっぱりカッコいい。
「うん、私も空ちゃんとのお出かけ楽しみにしてたよ。それにしても空ちゃんは相変わらず綺麗だね。」
身長が高く顔も整っており相変わらずかっこよかった。
「そんなこと言って咲だって可愛いよ。その服もよく似合ってる。」
そう言って笑う空ちゃんは昔から変わってなくて安心する。テレビの空ちゃんはかっこいいが私の知ってる空ちゃんは笑顔で可愛いままなのだ。
「そうかな?変じゃなきゃいいんだけど。それで今日はどこに行くの?」
空ちゃんが行き先を決めるって言うから私は今日どこに行くのか知らなかった。
「今日は私のお気に入りのお店に向かうよ。それじゃあ車を用意してるから乗ろうか。」
すると黒塗りの車が現れた。明らかに高そうな車で緊張する。
「初めまして、私は愛染扇と申します。空さんと仲良くしていただき誠にありがとうございます。」
車に入ると金髪の女性が私に頭を下げる。無表情で何を考えてるか分からないようなひとだった。
「こちらは扇さんと言って私とひまりの担当でいつもお世話になっているんだ。」
「日野咲です、よろしくお願いします。」
私は扇さんに挨拶をしてシートベルトを閉める。高級車には何度も乗っているとはいえ緊張してしまう。
「ええ、それでは目的地へと向かいます。」
扇さんはそう言って車を運転する。どこへ向かっているか全くわからないがとてもワクワクする。ここら辺の景色は見たことがなくて楽しみだ。
「ふふっ、やっぱり咲は可愛いままだ。今日は本当に咲と遊べて嬉しいよ。」
「私も空ちゃんと遊べて嬉しいよ。こうやって空ちゃんといるとあの頃を思い出すから。」
「そうだな、鈴蘭となのはともまた会いたいよ。」
昔は四人でよく遊んでいたものだ。小さい頃から私達四人は幼馴染でずっと一緒だった。だから高校生になって離れた今またどこかで会いたいなと思う。
「そういえばなのちゃんとは帰省した時に会ったよ。いつも通り私にべったりで可愛かったんだ。」
「そ、そうか。ただそれは鈴蘭に見つかったらやばいんじゃないか?」
「ま、まあそれはそうだけど。」
確かに鈴ちゃんはよくなのちゃんと一緒にいるし、私がなのちゃんといるとすごい目で見ることがある。
「それにしても私は忙しいせいで帰省はできなかったったよ。鈴蘭も忙しくて帰れなかったらしいし四人揃うのはまだ先になりそうだな。」
「そっか、忙しいならしょうがないよ。」
「私は何度も帰りたいと言ったが扇さんにダメと言われて。」
「当然です。貴方とひまりさんは有名人な上、この時期はとても忙しいのですよ。それに一般人といるところが他の人に見つかったらどうするんですか?本当は今回の外出も危険なんですからね。」
扇さんの言う通り有名人は行動を気をつけないとならない。もしかしたら今回のお出かけもやめた方がよかったかもしれない。
「分かってるさ、今回くらいは許してくれないか?」
「はあ、貴方と言う人は。それと日野さんに言いたいことがあります。」
「はい、なんでしょうか?」
「貴方はひまりさんのことをどう思ってますか?」
突然の質問に私は無言になる。その質問の意味が分からなかったが私にとってひまりは大切な友達だ。
「ひまりは大事な友達ですよ。今は忙しい時期で中々会えませんがどこかでゆっくり話したいです。」
私の話を扇さんは無言で聞いている。やはり何を考えてるか分からない人だ。
「そうですか。それならできるだけひまりさんとは話さないでください。」
なんでですか?そう聞きたかったがその前に扇さんは鋭い目で私を見つめる。
「今ひまりさんは忙しい時期です。それに今のひまりさんにとって貴方は邪魔でしかない。」
心臓が痛い。もしかして私はひまりの邪魔だというのか。
「ちょっと、その言い方はないでしょう?別にひまりは咲のことを邪魔と思っているわけでもないし。」
空ちゃんは私のことを庇ってくれるが扇さんの言う通りかもしれない。今のひまりは頑張ってるんだからそっとするのが大事かも。
「すみません。ですがこれは大事なことだと思いまして。このままではいずれ大変な目に遭いそうだと思ったので。」
「だからその話はしなくていいでしょう?」
空ちゃんと扇さんの会話に私はついていけない。二人はひまりについて何か知っているのだろうか?
「私としたことがすみません。この先のことを考えて焦っていました。とりあえず目的地に着きましたよ。私はここで待っているので二人で楽しんでください。」
「すまないな咲。とりあえず私が案内するからついてきてくれ。」
「分かった。今すぐ行くよ。」
私は何も分からないまま空ちゃんと共にお店へ向かうのだった。さっきの会話が何か気になるがとりあえず今は空ちゃんとのお出かけを楽しもう。
「うわー、すごい綺麗だね。」
私達は植物館に来ておりいろんな種類の植物があってワクワクする。この町にこんなところがあるなんて知らなかった。
「喜んで貰えてよかったよ。昔から咲は植物とか好きだったよね。」
私の住んでいた場所は田舎だからよく植物を見て楽しんでいたっけ。なのちゃんとはよく山の中で遊んだりもしていたな。
「空ちゃんこそよくこんなところ知ってたね。私は行ったことなかったよ。」
「初めてこの町に来た時にひまりが教えてくれたんだ。それからずっと咲と二人で行きたいと思ってた。」
空ちゃんは私の好きなことを覚えてくれたのか。やっぱり空ちゃんは優しいままだな。空ちゃんは昔から面倒見が良くて優しい性格だった。
「そっか、私も空ちゃんとこうやって二人で見れて嬉しい。本当にあの頃を思い出すよ。」
「そうだね、あの頃は楽しかったよ。今は色々と忙しいからね。」
「やっぱりそうだよね。本当は今日ここにいるのもやばいんじゃ?」
私といたら迷惑かもしれないと思うと不安になる。空ちゃんともっと遊びたいけど私は一般人で空ちゃんは有名人だ。もっと適切な距離にいないといけないのかもしれない。ひまりだって仕事を頑張っているから学校に来れないのもしょうがないんだし。私が我儘を言ってはいけないと思う。
「そんな顔をしないでくれ。私は咲を迷惑だと思ったことはないよ。」
「でも今は忙しい時期って聞いたよ。ひまりだって学校に来れないくらいだし。」
「ひまりは少し違うよ。ひまりはどちらかと言うと。」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。それより早く行こう。この先に見せたいものがあるんだ。」
空ちゃんは何か言おうとしてやめた。そのことが私は気になったがそれでも今聞くのはやめておく。今はこの時を楽しみたいから。
私は差し出された手を握って奥の部屋に向かった。
「ここはもしかして。」
そこは一面に薔薇が咲いておりとても綺麗だ。
「ああ、懐かしいだろ。昔はよく薔薇園にみんなで行ってたからね。」
小さい頃はよくみんなで薔薇園に遊びに行って楽しんでた。薔薇を見てるとあの頃の思い出が流れ込んでくる。
私はそっと空ちゃんの手を握った。
「急にどうしたんだい?」
「いや、空ちゃんは優しいなと思って。今度四人でここに来ようね。」
「ああ、もちろんだよ。」
空ちゃんは優しく微笑んでくれる。この景色はあの頃を思い出す。本当に懐かしくなる。
「本当はもう少し咲といたかったんだが今日はこの辺で終わることにするよ。明日も仕事があるからね。」
「そっか、次はいつ会えるかな。」
ひまりといい芸能活動はやはり忙しいんだなと思う。それなら私も無理を言うわけにはいかない。
「そんな顔しなくてもすぐ会えるよ。咲の文化祭も必ず行くからさ。」
「そっか、なら楽しみに待ってるね。それとひまりも来てくれるかな。」
さっきまで笑っていた空ちゃんの顔が少しずつ暗くなる。どうしたのだろうか?
「それはもしかしたら難しいかもしれない。今のひまりは無理をしているというか。」
「無理ってどう言うこと?ひまりはそんなに忙しいの?」
あれからひまりとは少しも話していなかったから少しでも今どんな感じなのか知りたかった。」
「何というか自分から忙しくしてるんだ。理由は言えないがとりあえず今はそっとしてあげて欲しい。それがひまりのためになるから。」
本当は今にでもひまりと話したかった。しかし空ちゃんが言うなら従うしかなかった。
「分かった、それなら従うよ。でも私はひまりにも文化祭に出て欲しいよ。」
「気持ちは分かるよ。こちらからもひまりに聞いてみるね。」
本当にひまりは大丈夫なのか?そう言うことばかりが頭の中をよぎって不安になる。早く本人に会いたい。
「とりあえず今日は帰ろう。駅まで送るから。」
「うん、今日はありがとう。空ちゃんと少しでも話せて楽しかった。」
今日は気になることがたくさんあったが空ちゃんと会えて楽しかった。次会う時はもっとゆっくりしたいな。
私は再び空ちゃんの手を握り車の方へと向かっていくのだった。
「着いたよ。今日は本当に楽しかった。」
「私も楽しかった。また遊ぼうね。」
「ああ、咲に会えたおかげで午後の仕事も頑張れそうだよ。」
空ちゃんはそれだけ言って仕事現場へ戻っていった。私も早く家に戻ろう。
「って影山さん?どうしてここに。」
私が帰ろうとしてると駅に影山さんの姿が見える。明らかに挙動不審だがどうしたのだろうか?
「ひっ日野さん?いいところで出会いました。どうか僕のお買い物に着いてきてください!」
影山さんは私を見つけると涙目で私に訴えかけてくる。また何か面倒なことに巻き込まれそうだなと思いつつも影山さんの話をゆっくりと聞くのであった。




