山
「も、もう限界です。一度休憩しませんか?」
「しっかりしてください。さっき休憩したばかりですよ。」
私達は今、寮のみんなと山に来ていた。大はしゃぎな蜜柑と麻莉にいつも通り優雅な西園寺さん、すでに死にそうな影山さんとそれぞれが山を満喫していた。ちなみにひまりは仕事の関係上来ることができずにすごく悔しがっていた。霞先生は途中まで一緒に登る予定だったのだが途中で腰を痛め、山の麓で休むことになった。というか霞先生って何歳なの?そんな年には見えないんだけど。
「影山は本当に体力ねえな。もっと日頃から運動した方がいいぜ。」
私達は山を登っているのだが影山さんはすでに死にそうになってる。まだ山を登り始めそんなに経っていないが大量の汗を流し、息切れもしていた。
「影山さん大丈夫?一度休憩をした方がいいと思うけど。」
「いえ、もう少し頑張りたいと思います。皆さんに迷惑をかけるわけにはいきませんので。」
そうは言うが影山さんはあまりにも死にそうな雰囲気でこっちまで不安になる。
「それなら私達が荷物を持ってあげるよ。ほら、貸して。」
蜜柑はそう言って影山さんの荷物を少し持った。
「あら、それはいい案ですね。」
西園寺さんも続けて影山さんの荷物を担いだ。
「す、すみません。僕のせいで迷惑かけちゃって。」
「おう、心配いらないぜ。俺らは仲間だろ。」
申し訳なさそうにする影山さんに対して麻莉は豪快に微笑む。やっぱりこの寮のみんなは優しい人しかいない。私は影山さんがかけたりしないよう横を歩きながら周りの風景を見る。
「それにしても、やはり山はとても静かで心地よいですね。自然豊かですし、風情があります。」
確かに、この前の海も綺麗で良かったけど山も自然豊かでとてもいい。
「そうだね。山を登ってると懐かしい気持ちになるよ。」
「そういえば日野さんは田舎から来たんですよね。私はこういった自然が大好きなので羨ましいものです。」
やっぱり都会育ちの人達からしたら田舎って羨ましいものなのだろうか?
「ぼ、僕も田舎からこの町に来ましたよ。まあ、僕は都会の方が好きなんですけど。」
「あら、そうだったんですか?一度もそんな話はしてなかったので初めて知りました。」
私も西園寺さんも初めて聞く話に少しびっくりした。
確かに影山さんは寮に住んでるからどこか遠いところから来たんだろうと思っていたけど。
「はい、田舎は不便なので都会に来たんです。まあ、都会は人が多くて落ち着かないんですけどね。」
「そうでした。影山さんから話してくれて私嬉しいですよ。」
西園寺さんの笑顔に影山さんは少し顔を赤くする。
「そ、そうですか。それなら良かったです。それと、僕も西園寺さんの昔の話とか聞きたいです。」
「ふふっ、それなら今度二人で色々とお話ししましょう。」
「はい、よろしくお願いします。」
二人が仲良さそうで何よりだ。私達は引き続き頂上を目指して登り続けるのだった。
「いやー、私も割と限界だよ。咲、エネルギーチャージさせて。」
蜜柑はそう言って私に抱きつく。蜜柑はところ構わず抱きついてくるから困ったものだ。
「もう、山の中で抱き付かないでよ。落ちたら危ないじゃん。」
「でも咲に抱きつくと癒されるんだもん。咲はやっぱり可愛いな。」
蜜柑はみんなの前で抱きつくから私としては本当に恥ずかしい。あと、そんな近づかれるとドキドキしてしまう。
「二人とも仲が良くていいですね。僕はそこまで仲のいい友達はいたことないので羨ましいです。」
「そ、そうですか。でも私は影山さんのことを仲のいい友達と思ってますよ。」
悲しそうに話す影山さんに対して、西園寺さんは顔を真っ赤にして言った。すると、影山さんもみるみると顔を真っ赤にする。
「そうですか。もちろんぼくも園寺さんのことを大事に思ってますが僕なんかが西園寺さんの友達でいいのかななんて。」
「もう!影山さんは自己肯定感が低すぎますよ。影山さんはもっと自信を持っていいんですから。」
「はい。ありがとうございます。」
二人はとてもいい感じになっており、正直今二人に話かけてはいけないような雰囲気がある。
「ヒュー、二人とも熱いねー。」
「はあ、みんな青春してて熱いねえ。火傷しちまいそうだよ。」
蜜柑は二人を茶化しているし、麻莉は何やらぼやいている。
「と、とりあえず私も疲れましたし一旦休憩しましょう。ほら、近くに小屋がありますし。」
西園寺さんは誤魔化すようにして小屋に入って行った。焦ってる西園寺はとても新鮮で見てて、面白かった。とりあえず私達も西園寺さんに続いて小屋に入って行く。
「はあ、後少しで頂上ですのでこの小屋で少し休んだら頑張りましょう。」
小屋の中は案外広くて綺麗だった。私は椅子に座り深呼吸をした。この山は高さはそうでもないけど急だったり暑かったりしてものすごく地獄だった。とりあえず休憩してこの疲れを取ろう。
「私も疲れたしここならいいよね。」
蜜柑はそう言って私の膝に頭を乗せて私を枕にする。
「ひゃっ、もう蜜柑ったら何するの?」
突然膝枕をしてきて私は頭がパンクする。蜜柑ってば何でこんな恥ずかしいことをみんなの前でできるのだろうか?
「いいじゃん、少しくらいさ。それにしても蜜柑の太ももは柔らかいしとっても気持ちいよ。」
蜜柑はそう言って私の太ももをツンツンしてくる。なんか気持ち悪い。
「もう、浅野さんという人は。こういうのは人前でするものではありませんよ。」
「いいじゃん。咲が可愛いすぎるのがいけないんだしさ。」
「というか一ついいですか?お二人って付き合ってたりするんですか?」
「ふえっ、それはその。付き合ってはないかな。」
影山さんの質問に蜜柑だけでなく私まで動揺してしまう。
「付き合ってはないよ。そりゃあ咲のことはまあ、あれだけど。そのまだ色々とあるというか。」
蜜柑の顔を真っ赤で茹でタコみたいになってる。こんなに恥ずかしがってる蜜柑はなかなか見れない。
「あらあら、私のことを煽ってる割には浅野さんもそういう所があるんですね。」
さっきまで蜜柑がニヤニヤしていたのに立場が逆転してしまっていた。
「も、もうこの話はおしまい。あとちょっと休憩したら早く出て行くよ。」
顔を真っ赤にする蜜柑を見て私達はニヤニヤするのだった。
「うわあ、とっても綺麗だ。ほら、見てよ咲。」
やっと頂上へ着いた私達は山の景色を満喫していた。
ここから見る景色は素晴らしい。今まで頑張った甲斐があった。
「本当だ。全てが小さく見えてすごい綺麗だね。」
この山へ来るまでの道が全部見えてとても綺麗だ。何だか今までの道がちっぽけに見えて何だか不思議だ。まだ夏で暑いはずだけど今は何だか清々しく涼しいような気がする。
「いやー、本当に綺麗できた甲斐があったよ。」
「はい、みんなとこの景色が見れてとても嬉しいです。」
麻莉も影山さんもとても楽しそうだ。山も海も寮のみんなで遊べて本当に楽しかった。できることなら今後もこのみんなで遊びたい。
「ほら、山はとっても素晴らしいでしょう?」
楽しそうに山を眺める蜜柑に西園寺さんは笑顔で話しかける。
「そうだね、本当に今日は楽しい一日だったよ。でも海も楽しかったでしょ。」
蜜柑が笑いながらいうと西園寺も笑いながら返す。
「ええ、来年もこのみんなで来ましょう。」
西園寺さんのことがにここにいる誰もが頷いた。考えることは同じなんだなって。
本当にこのみんなと出会えて良かった。私はこれからもこの寮生活が楽しみで仕方ない。
私は最後に山の景色をもう一度見た。
ああ、これが青春の夏というやつか。




