一緒に
「いやー、それにしても暑すぎて動けないよ。早く帰ってアイスでも食べたいな。」
外はものすごい暑さで私達はもう限界に近かったが頑張って目的地へと向かうのだった。
「あと少しで着くからもう少しの辛抱だよ。」
私達は今、神社を目指して歩いていた。とても綺麗でこの町ではかなりの有名なスポットということもあり行くことにした。しかしバスが通っておらず徒歩で行く羽目になった。
「はあ、それにしても山を登るのは辛いよ。」
ただでさえ距離があってきつい上に山を登らないと行けないと言うこともあり、かなりの地獄だった。
「それにしても明日には帰るなんてなんだか寂しいな。本当はもうちょっといたかったなー。」
「そうだね。でもみんなと遊べたし私は満足かな。」
私達は帰省してからなのちゃんと遊んだり家族でスイカ割りしたりして楽しい夏休みを過ごしていた。そして明日には花坂町に帰らないといけなかった。
もっと行きたいところはあったし、なのちゃんやお母さん達ともっとお話しがしたかったけどそんなに長くいるわけにもいかないのでしょうがない。
「確かに名残惜しいけどだからこそ今はいっぱい楽しまないとだよね。それじゃあ今日はいっぱい遊ぶぞ。」
蜜柑はいつもの元気を取り戻すと私の手を引っ張って全力で坂を登っていく。この強引さが本当蜜柑らしい。
「はあ、やっと着いたよ。確かに綺麗だね。」
山を登った先にはとても神秘的な神社があった。私達は鳥居をくぐり中へと向かう。
「うわあ、懐かしいな。昔と何も変わってないや。」
「咲は行ったことあるんだ。」
一度だけ私はお母さんとここに来たことがある。本当に綺麗で感動した。
「あれ見て、すっごい大きい御神木だよ。」
蜜柑はとっても大きな御神木を見つけるとそこへ向かった。本当にこの神社は神秘的でいるだけで癒されるような気がする。
「本当に綺麗だね。こうやって咲と思い出を共有できるのが本当に幸せなんだ。」
蜜柑はそう言って私に抱きつく。暑いけどこの温もりが私は好きだ。
「うん、私ももっと蜜柑と一緒にいたい。」
私はこの夏休み蜜柑と一緒にいたからこそとても楽しかったし、ずっとワクワクしてた。この先もずっと蜜柑と一緒にいたい。
「わたしの親はね、いつも私に興味なんてなかったんだ。お父さんは冷たい人だしお母さんも私には一切の興味を持たなかった。だから本当に私の親なのかなってずっと思ってるんだ。」
「蜜柑。」
悲しそうに語る蜜柑にこっちまで悲しくなってしまう。
「でもね、咲やお母様、お父様が私に優しくしてくれてこれが家族なんだなって思ったんだ。」
「うん、お父さんもお母さんも蜜柑のことは家族のように思ってると思うよ。蜜柑と話してる時とっても楽しそうだもん。」
もちろん私も蜜柑のことは家族のように大事な存在だ。
「だからその温もりをくれた咲には本当に感謝してるんだよ。これからも私のそばを離れないでね。」
蜜柑は私の手を握った。とても暖かくてとっても落ち着く。
「えへへ、なんだか恥ずかしいこと言っちゃたね。それじゃあお参りだけして帰ろっか。」
蜜柑はそう言って顔を背ける。耳が真っ赤だし相当恥ずかしいんだろうな。私は少しニヤけながら蜜柑の跡をついて行った。
とりあえず私達はお祈りをすることにした。
私達はお賽銭を投げ入れて願い事をする。これからどんなことがあろうとみんなと一緒にいれますように。
私はそれだけ祈って目を開いた。
「ねえ、蜜柑はどんなことを願ったの?」
「えへへ、内緒だよ。こういうのは言わない方が叶うからね。」
確かにその通りかもしれない。
「それじゃあやることも終わったし近くの海でも行かない?」
私がそう言うと蜜柑は目を輝かせる。
「いいねえ、じゃあ早速海に行こうよ。」
蜜柑はそう言って先に行ってしまう。本当にみかんったら。
プルルル。
私も蜜柑を追いかけようとすると突然電話がかかってきたので私は急いででることにした。
「もしもし咲、今はお暇ですか?」
私が電話に出るととてもおとしやかな声が耳に響いた。
「鈴ちゃん、久しぶりだね。今日はどうしたの?」
このおとしやかな声は鈴ちゃんの声だ。鈴ちゃんとはこの夏話せないと思っていたからとても嬉しい。
「特に用事は無いのですが今年は帰れないので咲ともお話しがしたいと思いまして。」
いつも通りの優しそうな声に私は安心する。篝鈴蘭は私の小さい頃からの友達でよく四人で遊んでいたものだ。鈴ちゃんはいつもおとしやかで優しい。時々様子がおかしくなるが普段はいい子だ。
「私はとっても元気だよ。鈴ちゃんは?」
「ええ、私はとても元気ですよ。咲が元気そうで良かったです。」
鈴ちゃんはそう言って優しく微笑む。鈴ちゃんは中学の頃からもすごくモテてたなあ。
「そっか、それなら良かった。そういえば帰省中になのちゃんと遊んだけど相変わらずだったよ。」
私がそう言うと鈴ちゃんは声色を少し変える。
「やっぱりですか。羨ましいですね。」
「えっ、鈴ちゃん?」
少しずつ鈴ちゃんの声が暗くなるから私は怖くて仕方なかった。そういえば昔からなのちゃんのことに関しては少し変なとこがある。
「実は用事は特に無いと言いましたが一つだけあるんですよ。昨日なのはが電話で楽しそうに咲と遊んだことを話すのですから私はもう怒りを抑えるのが大変ですよ。」
「へ、変なことはしてないよ?ただ遊んだだけだよ。」
「私が帰省できずなのはに会えなきて悶えてますのにあなたときたら。」
「す、鈴ちゃん、様子が変だよ。」
鈴ちゃんの圧がすごく私は怖くて仕方なかった。
「あら、私とした事がつい。まあ、ですのであまりなのはには近づかないでくださいね。ハグとかも控えてください。」
鈴ちゃんはものすごい声色でそう言った。
「も、もちろんだよ。過度なスキンシップは気をつけるよ。」
「それならばいいのです。では残りの帰省を楽しんでくださいね。」
鈴ちゃんはそう言って電話を切った。しかし私は恐怖でここを動く事ができなかった。
「いやー、海は涼しくていいね。」
確かに潮風がとても心地よくて涼しい。私達は山を下り、近くの海で景色を眺めていた。こうやって久しぶりに都会から帰ってくると蜜柑の言ってことも分かるような気がする。自然豊かで自然を身近に感じられるし、何も無いからこそ落ち着く。都会は人が多く、いつも急かされるように感じてしまうことがあるからたまには田舎に帰るのもいいものだ。
「そうだね、田舎は心地よくて落ち着くよ。」
「そうでしょ、私はここで見たものを忘れることは絶対にないよ。」
蜜柑が楽しそうで本当に良かった。蜜柑の過去をよく知らないがそれでも今の楽しそうな蜜柑を見ると私まで嬉しくなる。
「私、もっと蜜柑のこと知りたいな。私、蜜柑のこと全然知らないような気がしてさ。」
私がそう言うと蜜柑は少しの間黙り込む。
「咲にはあまり知られたくないけど少しだけならいいよ。」
蜜柑はそう言って自分の過去を語り始める。
「実は私のお父さんは割と大きめな会社の社長なんだ。だから私の家はそれなりのお金持ちなんだよ。」
その話は聞いたことがなかったから少し驚く。確かに蜜柑って礼儀正しいとこあるし、言われてみれば納得する。
「それでね、お父さんはとっても厳しい人で私には常に完璧を求めたの。小さい頃は私もお父さんの期待に応えようと頑張ったんだけど中学生の頃から私はすでに限界だった。」
「そっか、蜜柑は小さい頃からずっと頑張ってたんだね。」
「うん、私はずっと頑張ってたんだよ。でも、お母さんが救いようのないクズで浮気ばっかで金使いも荒くて私なんていないように扱ってた。その上、お父さんも私に対してすごく冷たかったから本当に私の親なのかなってずっと考えてたんだ。」
だから、蜜柑はここに来た時からずっと楽しそうにしてたし、私の親ともとても楽しそうに会話をしていた。まるで家族を知らないような感じだとは思っていた。
「あの時の私は本当に荒れていたよ。もちろん学校では完璧でいたけどね。私はずっと心の中で囚われていたんだ。」
期待とは場合によっては呪いになってしまう。蜜柑は一人でずっと頑張ろうとして自分を苦しめていたのだろう。そう思うと私は蜜柑の親に怒りが込み上げてくる。
「あの時の私を支えてくれたのは椿と麻莉とひまりくらいかな。まあ、ひまりは途中で転校しちゃったし、椿とも一緒に荒れてたりしてあまりいい関係でもなかったけどさ。」
「でも蜜柑にとっては大切な思い出なんだよね。」
椿やひまりと話してる時の蜜柑はとても楽しそうだ。
「まあ、そうだね。だけどそれでも私は変わらなかった。それはこれからもずっと同じだと思ってた。」
「それから何かあったの?」
私の質問に蜜柑は静かに頷いた。
「うん、私の運命を変える一大イベントがね。」
「それってどんなことなの?」
「うーん、それは今はまだ教えれないかな。でもいつか教えてあげるよ。」
私は気になって仕方なかったが蜜柑からその話が出るまで待つことにした。どうせじっと一緒にいるんだし。
「それで私は変わった。一つのきっかけで私は今の自分になれた。そして、今こうやって咲と一緒に入れることが私にとっては幸せで仕方ないんだ。」
蜜柑はそう言ってニコッと笑う。とても間近で笑う蜜柑に私はドキッとしてしまう。
「そっか、今の蜜柑が幸せそうで私も嬉しいよ。」
私がそう言うと蜜柑は急に立ち上がり私の手を取って走り出す。
「恥ずかしい話はやめやめ。もっと今を楽しもうよ。」
私は蜜柑の手を掴んだまま一緒に走る。今後蜜柑が苦しんでも私がずっと隣にいて蜜柑を守る。私はそう決心した。
コンコン。
「はい、誰でしょうか?」
私と咲が同じ布団で眠っていると誰かが部屋の扉をノックする。咲はすでに眠っており、私が扉をあけた。
「やあやあ、浅野さん今大丈夫かい?」
私がドアを開けるとそこにはお父様がいた。こんな時間にどうしたのだろうか?
「いやあ、少し気になったことがあってね。この前僕はどこかで君を見たと言っただろう?それで少し考えてみたんだ。」
「ですから、それはお父様の勘違いなのでは?」
「いいや、僕は記憶力がいいから覚えているよ。あれは咲の病気が悪化した時だ、都会の病院に行った時に確かに君をみたよ。君と咲が仲良く話しているのも。」
しまった、まさかお父様が覚えているとは。そうだ、咲は覚えてないけど病院で私と咲は出会ってそこで私は変わったのだ。
「このことは咲には言わないでもらえますか?」
「いいけど、どうしてだい?」
咲が覚えてないのならそれでいい。私だけの思い出でいいのだから。
「とにかく言わないでもらえますか?」
私がそう言うとお父様は何かを感じ取ったのか静かに頷く。
「分かったよ、それなら僕からは何も言わないよ。ああ、それと咲と仲良くしてくれてありがとうね。あの子は優しすぎるから誰かが守ってあげないといけない。」
お父様はそう言って私に優しく微笑んだ。そうだ、咲は優しいから私が守らないといけない。
「それじゃあ、おやすみ。」
お父様はそう言って扉をしめた。
私も布団に戻り咲の額にキスをして眠りにつく。私の咲には絶対に傷つけさせない。




