一家団欒
「さあ、ここが私の実家だよ。」
私達はあれからゆっくりとお話しして私の実家に辿りついた。駅から私の実家は割と遠く、さらに炎天下ということもあり私達は汗だくであった。
「へえー、ここが咲の実家なんだね。ワクワクするな。」
それでも蜜柑はとてもはしゃいでおり、私の手を握って楽しそうな顔をしている。
ピンポーン
私はチャイムを鳴らし、親が出るのを待つ。私は緊張して仕方なかったが蜜柑は明らかに楽しそうにしていた。
「久しぶりね咲、元気にしてた?ちゃんとご飯は食べてるの?悪い男に誑かされてない?」
私がチャイムを鳴らすと中からお母さんが出てきた。お母さんは私を見るや否や私の心配ばかりする。特にお母さんは過去に男と何かあったのか恋愛ごとには厳しかった。
お父さんはこの時間帯は仕事に行っており、今はお母さん一人だろう。
とりあえず私心配ばかりするお母さんに今の暮らしの様子を伝えることにした。
「向こうでは楽しくやってるから大丈夫だよ。蜜柑や他の友達が助けてくれるし。それよりお母さんこそ元気なの?」
お母さんもなんだかんだいって年だし、私は親が元気かが心配で仕方なかった。
「私もお父さんも毎日元気に暮らしてるから大丈夫よ。」
お母さんが元気そうで私は安心する。寮生活してからはたまにしか会えないから不安で仕方ない。
「それにしても友達と一緒に帰省するなんて突然言うんだから私もお父さんもびっくりしたのよ。ちゃんとした友達なんだろうかとか騙されてないかとかお父さんと色々話したんだから。」
「うん。蜜柑はとっても優しくて大切な友達だから大丈夫だよ。」
「そう、ならいいんだけどね。まあ、とりあえず私はあなたの元気そうな顔が見れてよかったわ。」
私とお母さんの会話が一通り終えると今度は蜜柑がお母さんに挨拶をする。
「初めまして。私は浅野蜜柑です。咲とはいつも仲良くさせてもらってます。この度はこの家に泊まることを許可していただきありがとうございます。」
蜜柑はいつもの蜜柑らしからぬとても丁寧な喋りでお母さんに挨拶する。
「あらまあ、とっても可愛い子じゃない。こちらこそいつも咲と仲良くしてくれてありがとうね。ここにいる間は自分の家のようにくつろいでいいのよ。」
お母さんも蜜柑の可愛いさにメロメロなようだ。さすが蜜柑。
「ありがとうございます。こちらつまらないものですが。」
蜜柑はそう言うと鞄からお土産を取り出す。こういうところは抜け目がないのが蜜柑だ。
「まあ、わざわざいいのに。そうだ!ご飯まで大分時間があることだしこの町の案内をしてあげなさい。」
お母さんは私と蜜柑の思い荷物を全て部屋の中に入れてくれる。
もとよりそのつもりであった私は蜜柑と手を繋いでこの家を出ることにした。
「うん。それじゃあ今から蜜柑と出かけてくるね。」
「それじゃあ夜ご飯までには帰ってくるのよ。」
大きく手を振るお母さんに私は軽く振り返し蜜柑と出かけるのであった。
「それにしても咲のお母さんは優しい人だね。」
私と蜜柑はぶらぶら歩きながらおしゃべりをする。
「うん、私のお母さんは優しいよ。」
お母さんはよくガミガミ言ってくるけどそれも私のためってことが分かるし、本当に優しいと思う。
「お母さんが優しいっていいよね。私のお母さんはやばい人だから。」
「そんなにやばい人なの?」
蜜柑の親の話とか聞いたことがないからすごく気になって仕方がない。
「まあ、色々とね。それより今はどこに向かってるの?」
私はどこに行こうか迷ったがとりあえず最初は一番近くて一番綺麗な場所に行くことにした。
「ちょっと坂を登ることになるけどいい?」
「うん。私体力には自信あるから。」
今から行く場所は距離自体はそんなだけど坂が急だから少し疲れるかもしれない。私は蜜柑とおしゃべりしながら坂を登ることにした。
「やっぱり田舎って空気が美味しいね。周りが自然だらけだからかな?」
蜜柑はそう言いながら深呼吸する。
「確かに都会よりは空気が美味しいかも。」
試しに私も深呼吸をして見たが確かにこっちの方が空気が美味しい気がしないでもない。
「都会ってなんでもあって確かに便利かもしれないけど、その分人が多くて落ち着かないんだよね。でも田舎は人が少ないし自然豊かで落ち着くっていうか。」
「確かにそれは分かるかも。静かだと落ち着くよね。」
私もよく嫌なことがあったら一人で海にいって眺めてたりしてたな。
「でしょ?そういうところは田舎のいいところだと思うよ。都会だとそういった場所は限られるからね。」
私達がそんな話をしていると目的の場所についた。
「うわー、すごい景色だね。とっても綺麗だよ。」
私達が坂を登って頂上に辿り着くとそこはとても高く街を見下ろしており、とても綺麗だった。夕方で日が落ちる時間というのもありとても綺麗なオレンジ色でつい見惚れてしまう。
「そうだね。この景色を蜜柑と見れて嬉しいな。」
「えへへ、私こそ咲と一緒に見れて嬉しい。この気持ちを咲と共有できて幸せだよ。」
夕日のせいか照れてるのか蜜柑の方は少し赤くなっていた。私もずっとこうやって蜜柑と入れたらいいなと心から思ってしまう。
「それじゃあ、これ以上ここにいたらお母さんに怒られるしそろそろ帰ろっか。」
「うん。明日はまた二人でいろんな所に行こうね。」
気がつくとすでにかなりの時間が経っており今日はもう家に帰って休むことにした。
私達は手を繋ぎながらこの長い長い下り坂をゆっくりと下ってくのだった。
「君が咲の友達か。いつも咲と仲良くしてくれてありがとうね。」
「初めまして、浅野蜜柑と申します。咲にはよくお世話になっていますから。」
蜜柑はお父さんにも丁寧に挨拶をする。
「いやー、とってもいい子だね。お父さん、咲の友達が来るって聞いた時心配してたけどいい子でよかったよ。」
私達は家に帰り、今はみんなで食事をしていた。蜜柑のコミュ力の高さもあり、会話して少しですでに打ち解けていた。
「もう、あなたったら飲み過ぎですよ。明日も仕事あるんでしょう?」
お酒を飲んで酔っているお父さんに対してお母さんはため息を吐く。お母さんも大変そうだな。
「今日くらいいいじゃないか。咲が帰って来てくれたんだし二人からの向こうのことをいっぱい聞きたいし。」
「まあ、それはそうね。ちょうどご飯も出来た所だしみんなで食べましょう。」
今日はいつもより明らかに気合いが入っておりいつもより豪華な料理が並んでいた。
「いやー、それにしても華の料理は美味しいなあ。」
お母さんの料理は本当に美味しい。いくらでも食べれてしまう。
「二人とも本当に私の料理が好きね。蜜柑ちゃんはどう口にあう?」
「とても美味しくて満足です。咲の料理のおいしさはお母様からきてるんですね。」
蜜柑も次々にご飯を手に取って食べる。気に入ってくれてよかった。
「ええ、そうよ。咲が寮で暮らすって言うもんだから私が料理を教えてあげたのよ。」
私が寮に行くって言った時にお母さんは家事全般を教えてくれた。お母さんには本当に感謝している。
「それで学校生活はどんな感じなんだい?」
「楽しくやってるよ。勉強も順調だしこの前のテストも3位だったよ。」
この前の期末テストは学年で3位だった。ちなみに2位は西園寺さんで一位は柳さんだ。西園寺さんはともかく柳さんにテストで勝てる気がしない。
「さすがねえ、咲は勉強はずっと頑張ってたものね。それで寮で蜜柑ちゃんとは仲良くしてる?」
お母さんの質問に蜜柑が答える。
「咲はとっても優しくていつも一緒にいます。私が困った時はいつも助けてくれて感謝しきれません。」
「あら、蜜柑ちゃんは本当にいい子ね。」
蜜柑に改めてそう言われると少し照れてしまう。
「ちょっと、そんなこと言われると恥ずかしいよ。」
「だって事実だもん。」
「はっはっは、二人は本当に仲良しなんだな。お父さん本当に心配だったんだからな。咲は他にも友達はいるか?」
「うん。友達はたくさんいるけどみんな優しくしてくれるよ。」
ひまりに柳さんに椿など私の周りの友達はみんな優しくしてくれる。
「それで咲は彼氏とかいないの?好きな人は出来た?」
お母さんの発言にお父さんは過剰に反応する?
「まさか、付き合ってる人がいるのか?お父さんは認めないぞ。」
お父さん普段はこんなこと言わないんだけどこれは大分酔ってるな。
「そんな、まだ彼氏とかはいないよ。なんなら好きな男子もいないから。だから安心して。」
「そっか、もし咲に彼氏ができたりしたら泣いちゃうからな。」
私がそう言うとお父さんは安心してくれる。まあ、好きな女の子ならいるんですけどね。
「そういえば蜜柑ちゃんは実家に帰らなくていいの?親御さんは心配してるんじゃないの?」
「いえ、親は私に無関心なので。今みたいに家族で食事することもほぼありませんでしたし。」
「それは大変ね。それならここを第二の実家と思ってくれて構わないわ。」
「はい、ありがとうございます。」
蜜柑はそう言ってお礼を言う。今の蜜柑は笑っていてとても楽しそうだった。
「それにしても二人が並ぶととてもいい感じだね。いや、待てよもしかして。」
「何かあったの?」
「お父さんは急に私達を見て、ぶつぶつ言い出す。
「いや、蜜柑ちゃんとどこかで会ったような気がして。」
お父さん本当に酔ってるな。蜜柑とお父さんが会う場所なんてあるわけない。
「お父さん酔いすぎですよ。寝室まで連れて行きますから早く寝てください。」
お母さんはそう言ってお父さんを寝室に運びにいった。本当にお母さんは大変だな。
「それじゃあ私達も部屋に戻ろっか。」
ご飯を食べ終えたし、私達も自分の部屋に戻ることにする。
「へー、ここが咲の部屋か。とっても可愛らしいね。」
私達はご飯を食べ終おえた後、二人でお風呂に入った。お風呂から上がると私達は昔の私の部屋に入る。
「少し狭いかもだけどゆっくりしていってね。」
二人だと少し狭いけど蜜柑と近くにいれるから私としてはむしろ嬉しい。
「いや、むしろ近くにいれるから大歓迎だよ。」
私はもう疲れて限界だったのでベットで休むことにする。もうすぐにでも眠りたい。それにしても久しぶりに自分の部屋に入ったけど埃ひとつなくピカピカだった。多分お母さんが掃除してくれたのだろう。
「それにしても今日は疲れたね。」
蜜柑も疲れてるようですごく眠たそうな顔をしていた。
「うん。今日は朝から忙しいかったしもう寝ようかな。」
私がそう言って布団に入ると蜜柑も私と同じ布団に入ってくる。
「え?蜜柑の布団はそこに。」
蜜柑の布団は別に用意されていたが蜜柑は気にせず私の布団に入った。
「いいじゃん。今日くらい一緒に寝ようよ。」
少し恥ずかしいが私も蜜柑と眠りたい。
「うん、そうだね。じゃあ電気消すよ。」
私はドキドキしながらも蜜柑と一緒に眠りにつくのだった。




