夏祭り
「着替えたけどどうかな。似合ってる?」
私達は今、今日の祭りのために準備をしていた。私達はこの後みんなと集合して祭りに行って花火を楽しむ予定だ。そのために、私は着慣れない浴衣を着て変なところがないから蜜柑に見てもらっていた。
「うわー、浴衣姿の咲は天使みたいで最高だよ。今すぐにぎゅっとしたいもん!それにしても今日は楽しみだね。たくさんご飯食べてみんなで花火見るんだー。」
浴衣を見せると蜜柑はとても褒めてくれる。
「うん。早くみんなと会って祭りに行きたいよ。」
私達は夜の祭りが楽しみで仕方なかった。何と言ってもこの街の花火はとても大規模で大きな花火を見たことのない私からすると楽しみで仕方なかった。
「えへへ、これ変じゃないかな?」
今度は蜜柑が浴衣を姿を見せてくれる。金魚柄の浴衣が蜜柑とマッチしており、とても可愛いかった。
「うん。とっても可愛いくて似合ってるよ。」
「えへへ、そうかなあ。それにしてもみんなと集まるまでの間ちょっと暇だねー。」
確かにみんなと集まるまで少しの時間があった。浴衣を着るのはもう少し後でもよかったかもしれない。
私達が話していると玄関からチャイムの音がする。
約束の時間よりかなり早いがひまりだろうか?
「あ、誰か来たよ。咲 ちょっと見て来てよ。」
蜜柑にそう言われ、私がドアを開けるとそこには西園寺さんがいた。
「まあ、その浴衣とっても似合ってて可愛いですよ。」
西園寺さんは私の浴衣を見て真っ先に褒めてくれる。
「ありがとう。それにしても今日はどうしたのですか?」
「実は最近、こっそりゲームを練習してるんですが一人では難しくて二人に教えてもらおうと。もしかして忙しかったですか?」
「大丈夫だよ。祭りに行くまで時間があるからそれまでの間は大丈夫だから。」
私はそう言って西園寺さんを家の中に入れた。
「それではお邪魔します。」
「西園寺さん、ここはこうやった方がコンボダメージが伸びるよ。」
「なるほど、参考になります。」
私達は三人で格闘ゲームをしながらお話しする事にした。ゲームが苦手だった西園寺さんだがあれからかなり上達しており、今では私くらいの強さはあった。
「そういえばゲームが上手くなりたいのなら影山さんに教えて貰えばいいんじゃない?」
「いえ、私は影山さんに勝つためにこっそり練習してるのです。私はよく影山さんとゲームをするのですが本気を出してない彼女にすら勝てないんです。」
「えっ、影山さんってそんなに強いの?」
今の西園寺さんのプレイを見るに、結構強いと思うのだけどそれでも勝てないとなると影山さんは相当やりこんでるんだろうな。
「ええ、それはもう強いなんてものではありません。常に的確かつ精密な操作でじわじわ追い込んで来るんです。」
「なるほどねー。それは私もちょっと対戦して見たいかも。」
蜜柑もゲームが上手いから二人の対決はいつか見たいかも知れない。
「それで、私は負けず嫌いですのでこのまま負けっぱなしは嫌なのです。」
「なるほど、西園寺さんはそんなに影山さんのことが好きなんだね。」
私がそう言うと西園寺さんは顔を真っ赤にする。
「ぶふっ、急に何を言うんですか!びっくりしちゃうじゃないですか。」
「おやおやー。その反応は影山さんのこと好きなんじゃないのー?」
蜜柑が西園寺さんのことをからかうと西園寺さんは余計に顔が真っ赤になる。ここまで焦っている西園寺さんはかなりレアだ。
「もちろん好きですよ、友達としてですけどね。私は恋したことがないですし。」
そう言った瞬間、西園寺さんは何とも言えない表情になる。
「そっか、からかってごめんね。」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりそろそろ時間になりますからお暇しますね。」
西園寺さんはそう言って自分の部屋へ帰ろうとする。私は西園寺さんが帰るまえに聞きたいことがあった。
「そういえば西園寺さんは祭りに行かないの?影山さんを誘ったりしてさ。」
「いえ、影山さんは人混みが多さなところは嫌だと思うので祭りは行かない事にします。」
西園寺さんは悲しそうな顔で言った。本当は二人で祭りに行きたいような表情だった。
「それでも一度誘ってみたら?案外影山さんも二人で花火みたいとか思ってるかも知れないし。」
「それでも断られたら私。」
「そうかもだけど言わずに後悔するのが一番悲しいよ。」
蜜柑の言葉に西園寺さんは目を見開く。
「確かにその通りかもですね。一度影山さんも誘ってみます。」
「頑張って。私達も応援してるから。」
私達は西園寺にそう言って手を振る。
「ええ、今日は本当にありがとうございました。
西園寺さんはそれだけ言うと自分の部屋に戻って行った。
「それじゃあ私達も早く祭りに行こっか。」
時計を見るとちょうどいい時間だった。蜜柑は私の手を掴むとそのままドアを開けて外に出るのだった。
「やっほー。もうみんな来てたんだね。」
私達が集合した場所に着くとそこにはすでにたくさんの人がいた。私の知ってる祭りとは比にならないほどの人がおり、私は困惑してしまう。すでにひまり達は目的地に集まっていた。
「まあ、二人とも可愛いじゃない。」
「日野さんその浴衣とっても似合ってて可愛いよ。」
私達の浴衣を見てすぐに綾乃と柳さんが褒めてくれる。
「ありがとう。みんなも気合い入ってるね。
みんな浴衣姿でとても似合っていた。ただ周りの視線がとても痛い。
「みんな揃ったんだし、早く屋台を回ろうよー。」
ひまりはそう言ってすぐに屋台の方へ向かっていく。私達はひまりについていきながら屋台に向かうのだった。
「うーん、このたこ焼き美味しいよ。咲も食べる?ほら、あーん。」
蜜柑にそう言われ食べてみる。
「本当だ、とっても美味しい。次は甘いものが食べたいかな。」
確かに生地がもちもちしておりとても美味しかった。
「確かにどの屋台もおいしいねー。ついつい全部食べちゃうよ。」
ひまりはそう言ってたくさんのご飯を食べながら歩いていた。ひまりは華奢な割にたくさん食べるからなー。
「それにしても人が多すぎて全然進まないね。花火までに戻れるかな。」
蜜柑は歩きながら口をこぼす。
私達は花火を見るまでの間一度別行動をする事になった。というのも綾乃と涼は二人で回りたいらしく二人で先に言ってしまった。柳さんもたくさんの屋台を回りたいと一人でどこかに行ってしまった。柳さんは前の桜祭りの影響で祭りにハマったらしい。という事で一旦私達は三人で祭りを回る事になった。花火を見るときは橋の上に集合という事になってる。
「まあ、なんだかんだ言って花火までには間に合うと思うよ。それより次は焼きそばを買いに行くよ。」
ひまりはそう言って焼きそば屋さんの方に向かう。ひまりもこうやってみんなと花火に行くのは初めてらしくとてもテンションが高かった。
「それにしても祭りでもサングラスつけなきゃなんて大変だね。」
ひまりは夜かつ祭りの中でサングラスをつけてるため、少し変質者に見えなくもない。
「だって、これがないと大変な事になるんだもん。少し邪魔だけどしょうがないよ。」
まあ、ひまりは人気すぎて厄介な事に巻き込まれて可能性があるし確かに仕方ないのかも知れない。
「それにしても祭って本当にすごいね。これだけの人がいると事件とかも起きそうで怖いよ。」
その言葉に私は若干顔を青くする。それでこの前一度怖い目見たから、今回は何もないことを祈っている。そのせいか蜜柑はずっと私の手を掴んで周りを警戒してるし。
「こら、ひまり。咲は一度祭で嫌な思いしてるんだから思い出させないで。」
「えっ。そうなの?」
「まあ、前回は本当酷い目にあったよ。」
「そっか、それならあたしも咲ちゃんを守るね。」
ひまりはそう言って私の空いてる方の手を握った。これで私の手を両方塞がってしまった。
外が暗くなるにつれて人が増え、動きづらくなっていく。やっぱりみんな花火が見たいんだろうな。
「あそこに射的があるよ!ちょっとやってこうよ。」
蜜柑は射的屋を見つけるとそのままそこに向かって行った。
「射的したいんですけどいいですか?」
蜜柑がそう尋ねると屋台から一人の女の子が出てくる。とても小さく中学生くらいだろうか?
「いらっしゃいませー。っておや、日野さん達ではありませんか。」
その女の子は何故か私達を知っており、よく見ると私達の学校の制服を着ていた。まさかの高校生という事に気づき私はびっくりする。でも学年集会とかでこの子を見たことはないような。
「あたし達を知ってるの?」
「ええ、そりゃあもう。なんせ貴方達は学校の有名人ですよ。私のクラスでも狙っている人をちらほら見ますからね。特に日野さんはチョロそうだから簡単にいけんじゃねという会話を耳にしますね。」
彼女のその言葉に蜜柑が反応する。
「その話詳しく聞かせてくれない?そいつをぶっ潰しに行くから。」
「ええ、お金を払ってさえくれれば私の知ってる情報は全て教えますよ。」
蜜柑は明らかに目が怖いし別の商売が始まろうとしてるし私は話を戻す事にした。
「それで貴方の名前は?どうしてその年で屋台を?」
私が尋ねると快く名前を教えてくれる。
「私の名前は橘黒花と申します。今は親の屋台を手伝っているんですよ。貴方達とつるむと私にも利益が出そうなので今後ともご贔屓を。」
黒花ちゃんはそう言って丁寧にお辞儀する。
「それでは早速、射的を初めましょうか。三人分ご用意しますね。」
黒花ちゃんはそう言うとすぐに三人分の射的を用意した。
「それで、景品はどんなのがあるのー?あたし射的した事ないから楽しみだよー。」
「今回はすごい商品を用意してますよ。なんとこの日野さんのプロマイドセットです。」
そのプロマイドを見た瞬間私は頭が真っ白になる。私が飲み物を飲んでるところや欠伸をしているところなどいろんな瞬間が撮られていた。
「ちょっと待って、なんでそんなもの持ってるの?」
「くふふ、日野さんの写真は確実に儲かると思い、こっそり盗撮していたんですよ。」
黒花ちゃんは悪魔のように笑う。私からしたら笑いごとではない。蜜柑達や他の人に取られる前に私が撮らないといけない。
「その写真絶対に私が撮るよ!」
「あたしも咲ちゃんのプロマイド欲しいなー。」
あまりにも本気を相手に私は勝てるのだろうか。しかし私も負けてはいられなかった。
「はあ、はあ、もう無理。」
「ねえ、黒花ちゃん、この的全然倒れないんだけど。」
あれから、二人は何度も射的をやっているが一切取れる気がしない。絶対にぼったくられてる。
「おやおや、二人とももうおしまいですか?しょうがないですね。今日はたくさん遊んでくれたサービスとしてこの写真は二人にあげましょう。」
黒花ちゃんはそう言うと二人に写真を渡したした。
「ありがとう、黒花ちゃん。とっても優しいね。」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。それではお気ををつけて。」
いや、優しいも何もあの的絶対倒れないようになってると思うし、そもそもあの写真自体お金かかってないしで絶対に二人がぼったくられてるだけだと思う。
「まあ、咲の可愛い写真が手に入ったんだしなんでもいいよ。それじゃあそろそろ花火も近いし帰ろっか。」
蜜柑はそう言って大事そうに私の写真をしまった。結局、損したのは私だけでは?
「ちょっと、これ私だけ損してない?」
「まあまあ、深いことは考えない方がいいですよ。それではこの後の花火を楽しんでくださいね。」
黒花ちゃんは笑顔で手を振ってくる。悪徳商人め。
何はともあれ私達は、もうすぐ花火ということもあり私達はみんなの元へ帰ろうとしていた。
「それにしても人が多すぎて迷いそうだよ。」
私達は迷わないように手を繋ぎながらゆっくりと進んでいく。この時間帯になると人が多くて動きづらく全然進まなかった。
「君たちとっても可愛いねえ。俺と一緒に遊びに行かねえ?」
私達が歩いていると突然一人の男が私達に話しかけてくる。しかし蜜柑はものすごい目つきで男を睨む。
「はあ、いいから俺についてこいよ。」
「男はそう言ってひまりの手を掴もうとするがひまりは男の手を振り払うとそのまま男を睨みつける。
「あたし、無理やりな男は大嫌いだよ。」
「チッ、うるせーな。黙って俺についてこりゃあいいんだよ!」
男はそう言ってひまりのサングラスを弾いた。ひまりは慌てて目を隠すが周りに人がたくさんおり、すでに手遅れだった。
「ねえ、あれ南雲ひまりじゃね?」
「嘘?もしかして本物?」
このままでは大変な事になってしまう。私はひまりの手を掴むとできるだけ人がいない方向へ走る事にした。
「待って二人とも。って人が。」
蜜柑も私達と逃げようとしたが人が多くて逃げることができず私とひまりの二人で逃げる事になった。
「はあはあ、なんとか逃げられた。ここまで来たら大丈かな。」
最初のうちは追いかけてくる人もいたがなんとか人がいない場所にたどり着くことができた。しかし蜜柑と別れてしまったし、花火まで時間がないしで早く戻らないといけなかった。
「ごめんね。あたしのせいでみんなに迷惑かけて。」
ひまりはとても落ち込んでいたが私は肩を優しく叩いて、慰める。
「ひまりのせいなんかじゃないよ。それより早くみんなの元に戻ろう。」
「そうだね。急げば間に合うかもだしね。」
私達は手を繋いでみんなが待っている方向へ向かった。
「いつもありがとうね、咲ちゃん。あたし、咲ちゃんと一緒で嬉しいよ。」
私達が歩いていると突然ひまりは感謝を述べる。
「ううん。私なんか何もしてないよ。」
「そんなことないよ。咲ちゃんは本当に優しくて大好きだよ。」
ひまりはこの前も私に大好きと言ってくれたが私は一つ気になることがあった。
「この前のひまりが私にキスしたけどあれってどんな意味なの?」
私の質問にひまりは顔を真っ赤にして、答えてくれない。
「もしかしたら、あれはドッキリなんじゃないかって思っちゃて。ひまりがキスしてから、ちょっとよそよそしくなってる気がするし、このまま関係が拗れたくないなっと思って。」
私がそう言うとひまりは私の肩を掴んで私の目を真剣に見つめる。
「ドッキリなんかじゃないよ!確かにあの後、少し咲ちゃんのこと避けてたけどそれでもあたしは咲ちゃんの友達だよ。」
「そっか、それならよかった。」
ひまりの言葉に私は安心する。私とひまりとはずっと友達でいたいから。
「お願い咲ちゃん、これだけは聞いて欲しいんだ。」
ひまりは真剣な眼差しで私を見る。
「あたしは咲ちゃんのこと、恋愛感情として好きだから。」
ひまりが何かを口にした時夜空からドーンと大きな音がして、ひまりの言葉が遮られる。
「ごめん、花火の音がうるさくて聞こえなかった。もう一度言ってくれるかな。」
「ううん、やっぱ大したことじゃないからいいよ。それより花火も始まっちゃったし早く行こっ。」
ひまりは私の手を掴んでみんなの元へ向かう。しかしひまりは顔を見せてくれないし私はモヤモヤして仕方なかった。もし今のが本当は大事なことだとしたらひまりはまた一人で何か抱えこんでしまうかもしれない。私はモヤモヤしながらもみんなの元へ向かうのだった。
「ごめん。遅くなっちゃった。」
私達が戻るとすでに花火は始まっており、私達はなんとも言えない表情になる。
「もう、遅っかったじゃない。まあ、蜜柑から事情は聞いたけど。」
「それより、二人とも大丈だった?怪我とかしてない?」
みんな私達の心配をしてくれて心が温かくなる。私達は橋の上で花火を見るのだった。
大きな花火はとても綺麗で風情を感じてしまう。やはり都会の花火は規模が大きくてびっくりしてしまう。
いろんな色やいろんな形の花火があり夢中になって見てしまう。
気がつくと花火はもう終わっており、すでにたくさんの人が帰る準備をしていた。
「それじゃあ、私達も帰りますかー。」
私達も花火を見終わってやる事無くなったし帰る事にした。
「それにしても花火はとても綺麗だったし屋台はどれも美味しかったし来年もみんなで行きたいな。」
柳さんの発言に誰もが頷く。誰一人かける事なく来年もこの綺麗な景色を共有したい。
この綺麗な風景をまたこのみんなで見れたらいいなと、私は心の中で思いはぜるのであった。




