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はなかご  作者: 和音
第二章 みんなと一緒なら
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捜索

「影山さーん。いるなら返事をしてください。」

私達は海を離れ、影山さんを探していた。しかし、私達は影山さんの居場所がわからずに途方に暮れていた。

「はあ、どこに行るのか検討もつきません。」

西園寺さんは大きなため息を吐く。

「影山さんとの電話繋がらないの?」

そういえば西園寺さんは影山さんと同じ部屋なんだから電話番号を知っているのでは? 

私の質問に西園寺さんは目を逸らす。

「いえ、それがまだ交換とかしてなくて。」

「同じ部屋にいるのに?」

「だって、連絡先交換しましょうとか中々言いづらいですもの。」

西園寺さんはそう言ってしょんぼりとする。

「うーん、それなら頑張って探すしかないかー。影山さんの行きそうな所とか分かったりする?」

私の発言に西園寺さんは深く考えていた。

「そうですね、影山さんは人混みの多い所は避けると思うので、人気の少ない所にいると思います。」

とはいえ人気の少ない所は多いしこのままでは、ものすごい時間がかかってしまう。

とりあえず私達は人が少ないところを順に巡ることにした。

私達は最初にいた海からかなり遠くの岩場までやってきた。しかし周りを見渡しても人の気配は一切なかった。

「本当にどこにもいませんね。もし悪い人に連れて行かれてしまっていたらどうしましょう。」

二人は同じ部屋に住むパートナーということもあり、今の西園寺さんはいつものような優雅さはなく、とても焦っていた。

「気持ちはわかるけど信じよう。とりあえず次の場所に行こう。」

私は西園寺さんの腕を掴み、次の場所へと向かった。

それからも私達は一生懸命探すが影山さんの姿は見つからず時間だけがすぎていく。

「どうしよう、本当にどこにもいないよ。蜜柑達も全然見つからないって言ってるし。」

あれから蜜柑や霞先生までも探すのを手伝ってくれたが一切見つからない。

「どうしましょう。このまま彼女を見つけることが出来なかったら。」

大きな不安が頭によぎるがそれでも私は諦めるにはいかなかった。それと私は一つ小さな疑問があった。

「そういえば私達が影山さんを探してる時、西園寺さんが案内してくれたけど、西園寺さんってこの場所に来たことがあるの?」

「ええ、何度かありますよ。小さい頃はよくお母様と一緒に海を眺めたものです。あそこの灯台の奥にある小さな岩場にいると、嫌なこと全て忘れることができるんですよ。」

西園寺さんはそう言った後何やら考え事をしていた。

「そうです。一つ探していないとっておきのスポットがありました。今すぐ向かいますよ。」

西園寺さんは私の手を掴むと全速力で向かった。











「はあー、僕って何やってもダメだな。」

僕は綺麗な海を見ながら大きなため息を吐いた。

コミュ障でまともに話すこともできない。せっかく西園寺さんや日野さんが話しかけてくれてるのに僕はうまく返すことができない。きっと僕といても誰も楽しくないと思う。

もうこんな時間だしみんな心配してるかもしれないけど、今はまだこの場所にいたい気分だった。

だけどこんな時は海の音を聞いて落ち着くに限る。小さい頃に一度会った女の子。その子とはたまにこの場所で一生に海を見て楽しんだものだ。

「僕もみんなとなくなれたらいいのに。」

僕は小さく呟いた。しかし、誰もいないこの空間じゃ、僕の願いは誰にも届かない。

「なれますよ影山さんなら!」

大きな声がすると思い振り返るとそこには汗だくで息切れしている西園寺さんと日野さんがいた。

「どうしてここが分かったんですか?」

ここはかなりの穴場、初見で見つけるのは難しいはず。

「はあはあ、私も小さい頃嫌なことがあった時はここに来て海を眺めていたものです。だから分かりますよ。影山さんも悩みがあるんですよね?」

西園寺さんはいつも私の考えを見透かしている気がする。

「はい。僕はみんなのように明るくないし、みんなのようにはできないんです。どうせ誰も僕といても楽しくないですよ。」

僕はいつもそうだった。暗い性格のせいでどこにいても息苦しくて、いつもマイナス思考に至ってしまう。本当は西園寺さんも私といて楽しくないと思ってるのかもしれない。

「それは貴方がそう思ってるだけかもしれませんよ。」

「え?」

西園寺さんはそう言って僕を抱きしめる。突然の出来事に顔を真っ赤にするしかなかった。

「ちょ、西園寺さん?急にどうしたんですか?」

「性格は人それぞれ、暗い人明るい人もいます。だから落ち込むことはありません。影山さんは影山さんのままでいればいいのです。」

西園寺さんにそう言われると少し心が落ち着く。

「それに私は影山さんといて楽しくないと思ったことはありません。中々口にする機会がありませんけど私は影山さんに感謝してるのですよ。」

「僕は感謝されるようなことはしてないと思います。」

「いいえ、家事もしてくれますし私にゲームを教えてくださったりしてますよ?私はその都度影山さんに感謝してるのです。」

そう言って微笑む西園寺さんはまるで天使のようだった。

「ありがとうございます。そんな風に思ってくれて。」

「ええ、それではみんなの元へ戻りましょうか。」

西園寺さんは僕の手を掴み、みんなの元へと向かう。

「あと、心配かけてすいませんでした。」

「そうですよ。みんな心配してたんですから。次からは声くらいかけてくださいね。」

「みんなですか?」

「はい。みんな影山さんのことを心配してるんですよ。少なくともこの寮には影山さんが嫌なことをするような人はいないと思いますよ。」

西園寺さんは本当に優しい。こんな僕にも優しくしてくれる。僕もいつかは西園寺さんのようなカッコいい人になりたい。











「あっ、咲ちゃん達帰って来たよー。」

私達が帰ってくるとみんなが待っていた。

「みんなに迷惑かけて本当に申し訳ありません。」

「いやー、本当に心配しましたよ。とりあえず無事だったのでよかったですけど。」

「えっと、怒ったりはしないんですか?みんなに迷惑かけてしまったのに。」

「色々言いたいことはありますがとりあえず影山さんが無事なのでよかったです。」

「そうだよ。影山ちゃんに何かあったらどうしようって心配だったんだよ。」

「困ったことがあったら俺らに相談していいからな。」

霞先生は心から安心したように微笑む。この場に誰一人として影山を怒るものはいなかった。

「だからいったでしょう?みんな貴方のことを心配していたんですよ。」

「はい、みなさんありがとうございます。」

影山さんがみんなと仲良くなれそうでよかった。私が影山さんを見てると後ろから蜜柑が抱きついてくる。

「むー、咲は今日も私と全然遊んでくれなかった。」

ただし蜜柑がいつものようにめんどくさい感じになっていた。

「ごめんってば。影山さんを探したりして時間取れなかったから。」

私は不機嫌な蜜柑を何度か慰めようとする。

「それはそうだけど、もっと咲と一緒にいたかったもん。」

蜜柑はしょんぼりとしている。

「まあ、まだ少しは時間あるから。私と遊ぼうよ。」

「そうだね。それなら二人で散歩しようよ。」

私がそう言うと蜜柑は一気に顔を明るくして、私の手を掴むとそのままどこかに向かって行った。





「いやー、風が気持ちいいねー。」

私達は海の景色がよく見える道を歩く。風が強かったり夕方だというのもありとても涼しかった。

「そうだね。海を見てると故郷を思い出すよ。」

私の家の近くには海があり、よく遊びに行ったものだ。

「へー、咲の家の近くって海があるんだねー。楽しみだなー。」

咲はすでに私の実家に着いていく気満々だった。

「いや、蜜柑が帰れるかはまだわからないからね?」

蜜柑を実家に連れて来ていいかは怖くて親に許可は取ってない。お父さんなら笑顔で承諾してくれるだろうけどお母さんが何というか。

「私を一人にしないでよ。私、先がいないと生きていけないよ。」

蜜柑はうるうるとした瞳で私を見つめてくる。確かに、私がいないと蜜柑はだらしなくなるし一緒にいた方がいい気もするけど。このまま私といたら依存してしまう恐れがある。

「咲と会うまでの私なら一人でも平気だったんだけどなー。もう咲がいない時なんて耐えられないよ。」

蜜柑はそうぼやきながら海を見つめる。その顔は、悲しそうで嬉しそうな、なんとも言えない表情であった。

本当は聞かないでそっとしたほうがいいのかもしれないけど、この場を逃したらもう聴くことが出来ないかもしれないから私は蜜柑の過去について聞いてみることにした。

「そういえば昔の蜜柑って今とは違ったの?」

私がそう聞くと蜜柑は少し黙った。あまり答えたくなさそうな顔をする。

「ひまりか椿に何か聞いた?」

蜜柑の問いに私はビクッとなる。まずい。このことは言わない方が良かったか。

「まあ、椿に少しだけ。」

私は椿に聞いたことを正直に話した。椿、本当にごめん。

蜜柑はため息を吐き、少し時間が経った後に口にする。

「そうだね。昔の私はこんなに明るくなかったよ。一人の方が好きだし外にもあまり出てなかったかな。」

蜜柑、本人が言ってもいまだに信じられない。蜜柑にとっての私はなんなのだろうか?

「それで私と会って変わったっていうの?でも寮で初めて会った時から蜜柑は明るかったよ?」

私の純粋な疑問に蜜柑は再びため息を吐いた。

「はあ、やっぱり咲は覚えてないんだね。実は私は昔咲と会ったことがあるんだよ。」

蜜柑にそう言われて私は思考がとまる。私は蜜柑と過去に会った記憶は一切ない。そもそも蜜柑と私は生まれが違うし私はこの町に来たこともほとんどないから蜜柑とあっていたら覚えているはず。

「私は会った覚えないけど。人違いとかじゃないの?」

「ううん。忘れるはずないよ。私は初めて会った時から、今までずっと咲のことが好きだから。」

蜜柑の好きと言う言葉に私はドキッとしてしまう。だけど蜜柑と私の好きは意味が違う。だからまだ私から好きとは言えない。

「どこで会ったかは教えてくれないの?」

「うーん、また今度教えるね。もう暗くなるし早く戻ろっか。」

蜜柑と私は急ぎ足でみんなの元へと向かった。蜜柑は誤魔化すのがうまい。多分だけど蜜柑はこのことをこれ以上話すつもりはないのだろう。

それにしても蜜柑と私が過去に会っていたなんて不思議だ。椿なら何か知ってるかもしれないし今度会いに行こう。




私達が戻った頃にはもうすでに真っ暗でみんな待ちくたびれていた。

「もう、一体どこに行っていたのですか?もう帰るところだと言うのに。」

私達が戻ると西園さん達はとっくに着替えており、すでに帰りの準備を終えていた。

「まあまあ、そんな怒らないでよ。それと海はやっぱり楽しいでしょ?」

蜜柑はそう言って西園寺さんに微笑む。そう言えば二人は山と海で戦ってたっけ。

「ええ、今日はとても楽しい一日でしたよ。ですから次は私が貴方達に山の素晴らしさを教えましょう。」

蜜柑と西園寺さんは共に笑い会う。

「えっ?ひまりさんってゲームするんですか?」

「うん。私ゲームは大好きだよ。今度二人で遊ぼうよ。」

周りを見るとみんなが楽しそうに話している。少しずつ寮の中で絆が芽生えている気がする。

私はここのみんなもっと仲良くて仕方なかった。

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