お出かけ
「ねーそう言えば咲が持ってきた荷物ってこれだけ?少なくない?」
蜜柑はトースターを頬張りながらそんなことを口にした。 蜜柑は朝に弱く、10時ごろに起きて来た。髪もぼさぼさですごいことになってる。学校が始まったら毎日私が起こさないといけなさそうだ。そんなことを考えながら蜜柑の質問に答えた。
「うん。本当に大事な物だけ持ってきたんだ。他に必要な物はショッピングモールで買いに行こうかなって思って。」
田舎から出る時には最低限のものしか持ってこなかったから、これからちょっとずつ買いに行こうと思っていた。学校が始まるまでの間に揃えたくて今日はこのあとお店に行こうと思っていた。
「なるほど。それなら私も一緒にいっていいかな?私はこの街に慣れてるから道案内もできるし。」
確かに蜜柑はこの街にずっと住んでたのか。でも案内の為だけに蜜柑についてってもらうのは少し気が引ける。
「いやいや、蜜柑にそこまでしてもらうの申し訳ないし。一人でいけるよ。」
私が遠慮がちに言うと蜜柑はぶんぶんと顔を横に振った。」
「違うの!私は咲と一緒に買い物したいの!だから一緒に行こう?」
まあ確かに一人でこの都会を歩くのは怖いし、二人の方が楽しいから一緒に行くことにした。
「そう言うことなら一緒に行こう。ありがとうね蜜柑。」
「やったー。咲と一緒にお出かけ出来る。えへへー。」
蜜柑はそう言うととても興奮した様子で支度をし始めた。さて私も準備しますか。
それから10分ほどして支度を終えた私達は校門の外へ出た。やっぱりたくさんの人がいて、少し緊張する。すれ違う度に、いろんな人から見られるため、私は少し怖かった。もしかして私が田舎者ってことバレてるのかな。
「やっぱり咲は可愛いから、みんなの注目を集めるよね。」
「えっそうなの?」
「そうだよ。気づいてなかった?さっきからみんな私達の方を見てくるでしょ特に男の人とか。」
「よかった。私が田舎者だから見られてたわけじゃないんだ。」
私はとても安心したが蜜柑は大きくため息をついた。
「そんなわけないよ。咲がとっても可愛いからだよ。だから男の人には気をつけてよね。」
なるほど。それでずっと見られてたのか。というか私ではなくて、蜜柑を見てたのでは?蜜柑の方が私よりずっと可愛い。
「それにしても人多くない?こんな多いと緊張しちゃうよ。」
「うーん。これでも今日は少ない方だと思うよ?もっと多い日だってあるから気をつけないと。」
嘘でしょ?これで少ないほうなの?私は都会の恐ろしさにゾッとした。
「それにしてもこの程度で震えてるなら、ショッピングモールの中入ったら失神しちゃうんじゃない?」
蜜柑は笑いながら言ったがそんなことあるわけない。
ショッピングモールに行ったことはないが流石に大丈夫なはず。だってただのお店でしょ。たかが知れてる
私は呑気にショッピングモールへと向かった。
正直舐めていた。いや本当に舐めていた。まさかショッピングモールと言うものがここまで大きいとは思わなかった。 いやこんなでかいことある?もはや遊園地じゃん!人も多いし、蜜柑がいないと危なかったかもしれない。一方蜜柑はと言うと、凄い慣れた様子で道案内をしてくれる。 都会だとこれが普通なんだろうか?
「蜜柑はよく行くの?」
「まあねー。ここにいけば大抵のものは揃うし。咲は友達とかと遊びに行ったりしないの?」
「うん。友達はたくさんいたけど、友達とこういう所に来るのは初めてかな。」
「えー本当!じゃあこれが初デートってこと?私が咲の初めて奪っちゃった?」
「…なんかきもい。」
咲の変な言い回しに私は引いた。
「うそうそ冗談だってばそれだけ嬉しいってこと!それじゃあまずは服を買いに行こう!」
蜜柑は誤魔化すように言うと、そのまま服屋の方に向かって行った。まあいいか。
「服屋に着いたよ!咲は何着買うつもり?」
「うーんとりあえず三着ずつあればいいかな?」
「ねえねえ私も咲の服選んでいいかな?」
「うん!全然いいよ。」
「よーし。咲にぴったりの服を選んであげるよ!」
そう言うと蜜柑は服を選びにどこかに行ってしまった。
とりあえず露出が少なく地味めの服を選ぼう。
そうこう三十分くらい選んでると、突然見知らぬ2人の男性に話しかけられた。
「ねえ君可愛いね。一人?これから暇なら一緒に行かない?その服も買ってあげるからさー。」
もしかしてこれがナンパというやつだろうか?お母さんや田舎の友達にも咲は可愛いんだからナンパに気を付けろとは言われてたがまさかいきなり話しかけられるとは思ってなかった。私は怖くて今にも逃げ出したかったが、なんとか勇気を振り絞って断ろうとした。
「いえ、大丈夫です。あと友達もいるので。」
「まあまあ、そんなこと言わずにお兄さんといいことしようぜ〜。」
怖くて逃げようとしたがもう一人の男に退路を防がれた。どうしよう怖い。誰かたすけて。そう思ってると急に男が腕を掴んできた。
「いやっ!」
「さあもう逃げられないよー。」
もう終わった。そう思った瞬間女の人が話しかけてきた。
「あのーさーせん。さっきからずっと見てたんすけど女の子にそんなことして恥ずかしくないんすか?」
赤髪でボサボサな髪の女の子が男の手を払いながら言った。
「あん?なんだてめー。お前も俺に犯されてえのか?」
「はあ、マジできもい。こんなやつがあたしと同じ空気吸ってるってだけでやなんだけど。つか、今時こんなとこでナンパとかやっば。最悪なんだけど、お前らみたいな周りに迷惑しかかけれない奴が1番嫌いなんだよね。」
「どうやら本当に殺されてーらしいな俺は女にも容赦しねーぞ!」
「てかそんなこと言っていいのあたしずっと動画取ってんだけどこれ警察に見せたらどうなるかな?」
彼女はスマホを向けてそう言った。
「ちっ。テメー卑怯だぞ。覚えとけよ。」
そう言って男は去って行った。
「あのー大丈夫?立てそう?」
赤髪の女の子はそう言って私の手を握って引っ張ってくれる。
「はい。本当にありがとうございました。
「いいってことよ。あいつらにムカついたからだし、まあ、なにあれ無事でよかったよ。じゃ。」
「せめてお礼を。」
「そうゆーのいーから。気持ちだけで十分。」
彼女はニコッと笑うとそのままどこかにいってしまった。とてもかっこよかったな。イケメンで爽やかな女の子だった。
「あーやっと見つけた。咲に合う服持っ…」
私は蜜柑を見つけると泣きながら抱きついて言った。
「うー蜜柑遅いよ。怖かったよ。」