ゲーム
「お願いって?私に何か用があるの?」
影山さんは困ったような表情で私を見つめる。その目で見られると私も困ってしまう。とりあえず影山さんの話を聞くことにした。
「はい。ちょっと相談したいことがあって、とりあえず僕の部屋に入って下さいませんか?」
「分かった。蜜柑は呼ばなくて大丈夫?」
私がそう聞くと、影山さんは慌てる。
「えっと、浅野さんはちょっと苦手で。今日は二人で話したくて。」
どうやら影山さんはグイグイくる蜜柑のことが苦手らしい。実際この前はそれで少し揉めていたし今回は私一人で行こう。
「そっか。それならとりあえず影山さんの部屋に行こっか。」
とりあえず私は影山さんの部屋に行くことにした。影山さんの家は二度目だがこの前より部屋が片付いていた。
「おじゃまします。そう言えば、西園寺さんは?」
よく考えたら二人は同じ部屋だから、二人で話してるところを西園寺に聞かれるのでは?
「それに関しては大丈夫です。西園寺さんはいつも学校の後、二時間ほど図書館で勉強してるらしいので。」
毎日図書館で二時間も勉強してるなんて流石西園寺さん。私も、もっと勉強頑張らないと。
「そっか。それならよかった。」
「じゃあ本題に入りますね。あ、その前に一つ謝りたいことがあって、この前はごめんなさい。急に追い出して。」
「ううん。あれは、私たちも悪かったから謝らないで。」
あれに関しては蜜柑がグイグイいきすぎたような気もする。ただあのせいで影山さんとはもう仲良くなれないと思っていたからそんなに気にしてはいないようで良かった。
「でも、折角色々と提案してくれたのに、いきなり追い出しちゃって。」
「まあ、それならお互い様ってことで水に流そうよ。私はただ影山さんと仲良くしたいだけだから。」
「ありがとうございます。それなら本題に入りますね。僕も本当は西園寺さんと仲良くしたいんですけど、僕には恐れ多くて全然話せないんです。折角、西園寺さんが話しかけてくれるのに緊張しちゃって話せなくて。それで日野さんが西園寺さんと話していたのを見たので何かアドバイスをもらえたらなって。」
なるほど、影山さんも本当は西園寺さんと話したかったんだ。それなら二人は仲良くできると思う。要は影山さんがもっと自信を持てばいいのだ。
「そうだね。とりあえず西園寺さんと何か軽く喋ってみたら?」
私が尋ねて見ると、影山さんはため息をついた。
「それはそうなんですけど、何を話したらいいか分からなくて。」
なるほど話す話題がないのか。確かに、話題が無いと話しにくいかも。
「それなら最初は日常会話から始めたらいいんじゃないかな?」
「確かにそれはアリですね。でも日常会話だとすぐ話が途切れそうで。僕みたいな陰キャは会話を少しするのが限界なんですよ。」
「そっか。それならゲームとか誘ってみたら?ゲームの話題ならずっと話せるのでは?」
この前はそれで私達とちゃんと話せていた。最初はそう言った趣味の会話から入るのがいい。
「でもそれだと引かれませんかね。それに西園寺さんはゲームしなさそうですし。」
「別に引かれたりはしないと思うよ?西園寺さんならどんな話でも真剣に聞いてくれるから。」
「でもオタクとかキモいって思われそうで。」
「オタクってキモいの?」
えっ、オタクってキモいものなの?別に趣味に熱心なこはいいと思うけどなー。
「いえ、何でも無いです。日野さんってすごい綺麗ですね。」
「とりあえず誘ってみなよ。悪い結果にはならないと思うよ。」
「わ、分かりました。西園寺が帰ってきたら早速ゲームに誘ってみます。」
「どうせなら西園寺さんが帰ってくるまで私とゲームしない?」
私がそう言うと影山さんは目を輝かせた。私も西園寺と影山さんが上手くいくか気になるし、それまで暇だからゲームでもしたかった。
「そうすっね。やりましょう!」
私と影山さんは西園寺さんが来るまで、二人で格闘ゲームをやることにした。
私も普段から蜜柑とゲームをするけど、それでも影山さんには全然勝てる気がしなかった。私と影山さんの間には圧倒的な実力差がある。
蜜柑もかなり強いけどそれ以上に強かった。まるで全てを読まれているみたいで最後の方なんて何も出来なかった。それでもできるだけ頑張って相手をする。
しかし結果は惨敗だった。
「影山さん強いね。正直勝てる気がしないよ。」
「日野さんこそ強いっすよ。普段ネット対戦しかいないのでこうやって対戦できるのはとっても楽しいです。」
「確かに友達とするゲームは楽しいね。」
私はニカっと笑ってみせる。
「僕たちって友達ですか?」
「もしかして嫌だった?」
私が聞くと影山さんは慌てて否定する。
「いや、そうじゃなくて僕が友達とか恐れ多くて。」
「そんなことないよ。影山さんも私の大事な友達だよ。」
「友達ですか。とても嬉しいです。」
そう言って影山さんは笑った。影山さんがここまで笑ったのは初めてだった。その笑顔をぜひ西園寺にも見せてあげて欲しい。
私と影山さんが二時間ほどゲームで遊んでいると西園寺さんが帰ってきた。
「ただいま、帰りましたってあれ?誰か来ているのですか?」
「あっ、お邪魔してます。」
やっと西園寺さんが帰ってきたので私は挨拶をした。
「あれ日野さん、今日はどうされましたか?」
「いやー、ちょっと影山さんとお話ししてて。そのついでに二人でゲームしてたんです。」
「なるほどそういうことですか。お二人はいつの間に仲が良くなったんですか?」
私と西園寺さんが話している間に影山さんがもじもじしている。私は今なら行けるよと合図した。
「そう言えば影山さんが西園寺に話したいことがあるそうですよ。」
影山さんは勇気を振り絞って声を出した。私はただ上手くいくことを心の中で祈ることしかできない。
「どうされました?」
「えっと、その。西園寺さんも一緒にゲームしませんか?その、もちろん嫌だったらしなくていいんです。ただ西園寺さんと一緒にゲームをしたいなと思いまして。」
影山さんの声は小さかったけど、それでも西園寺さんには聞こえてたようで、西園寺さんは笑顔で答えた。
「ええ、私もやりたいです。でもやり方が分からないので教えていただけますか?」
「はい。それは僕が教えます。」
影山さんも笑って西園寺にコントローラーを渡す。とりあえず仲良くなれそうでよかった。
それから三人でゲームをした。西園寺さんもやり方を覚え、三人で楽しんだ。最初の不安は何だったのかというくらい最後は二人とも楽しそうに笑っていた。
あっという間に時間は過ぎて日が暮れているので今日は終わることにした。
「ふふっ。ゲームというのはとても面白いものなのですね。今までやったことなかったのですが、とても楽しかったです。」
そう言って西園寺さんはゲームを片付ける。
「えっと。西園寺さんが良ければ今度またやりませんか?」
「ええ、今度はもっと雑談を絡めながらやりましょう。私はもっと影山さんのことが知りたいので。」
西園寺さんが笑顔で言うと影山さんは目を輝かせた。
「はい。よろしくお願いします。僕も西園寺のことが知りたいので。」
これで二人は仲良くなれたと思う。もしかしたら私がいなくても二人はきっかけさえあれば仲良くできたのかもしれない。とりあえずこれで二人の悩みが消えてよかった。
「日野さんもありがとうございました。よかったら今度また来てください。歓迎してますよ。」
「ありがとうございます。それじゃあ。」
私は挨拶をして帰ることにした。
「ああ、それと今日は蜜柑さんと一緒ではないのですね。」
西園寺さんの言葉で私は思い出した。そう言えば蜜柑と連絡してなかった。私は慌ててスマホを見るとそこには夥しい量のメールが送られていた。
「まずい。蜜柑のこと完全に忘れてた。それじゃあ、お邪魔しました。」
「あらら、それは大変ですね。それではお気をつけて。」
「今日はありがとうございました。また僕と遊んで下さい。」
「うん!それじゃあまた明日。」
二人に見送られ私は急いで自分の部屋に向かった。
部屋の中に入ると蜜柑が泣きながら私に抱きついてくる。
「ふええ。よかったあ、ちゃんと帰ってきてくれて。今までどこ行ってたのさ。私寂しかったんだよ?」
「ごめん。影山さんたちの所にいてゲームとかしてた。」
「もう!もしかしたらまた変な人に捕まったんじゃないかって心配してたよ。LINE送っても返事してくれないし。」
「本当にごめん。ちょっと集中してて、気づかなかったから。」
「もう、今度はちゃんと私に言ってよ。」
蜜柑はそう言って睨みつけてくる。ものすごく怖かったがそもそも私の自業自得なため何もいい返せなかった。ただもうちょっと離れてくれてもいいんじゃない?
「ところで蜜柑はあの後何の用事があったの?」
「あー、まあ、咲には関係ないことだよ。」
蜜柑がそう言って誤魔化すので今度は私が問い詰めた。
「私には細かく何してたか聞いてくるのに自分は言わないんだ。」
「そんな拗ねないでよ。これは本当言えないやつなの。次からはちゃんと言うからさ。」
「まあ、それならいいけどさ。」
少し話を逸らされた気がするけど、とりあえずこの話は終えた。
「そう言えば明日、学校の後バスケ部に行ってもいい?」
「いいけどまた体験入部に行くの?」
「いや、正式に入部しようと思って。」
私はあの後色々考えて、バスケ部に入部することにした。やっぱり部活はしていた方がいいと思ったし、蜜柑や麻莉と一緒に部活できたら絶対楽しい気がする。それ私も何かに熱中したいなと思った。
「そっか。咲も入るんだね。そんなら絶対楽しいよ。辛いことがあった時は私に言ってね。」
蜜柑はそう言うと、私のことを強く抱きしめる。
「ちょっと蜜柑近くない?」
今日はやけに近づいてくる気がする。
「今日ずっと私を一人にした罰だよ。今日はずっとくっつくからね!」
そう言って蜜柑は私から離れない。少し暑苦しかったが嫌な気はしなかった。




