蜜柑ちゃん
「あの、すいませんどなたでしょうか?」
ここに居るということは多分ここの先生だろうけど私はこの怪しい人と会った思い出がない。この先生の見た目はと言うと、皮の厚いコートに帽子を被って髪の毛も金髪で顎髭が生えていて顔も胡散臭い、お世辞にも先生には見えないような見た目をしてる。本当に会ったことあるかな?この見た目なら絶対忘れないと思うけど…
「あれ〜僕のこと覚えてない?まあ無理もないか。あの頃、咲ちゃんは小さかったし、僕もイメチェンしたしねー」
「小さいことに会ったことあるんですか?」
「そうだよ。僕は君のお母さんの弟でいわゆる従兄弟ってやつだ。小さい頃はよく遊んでたんだよ」
「そうなんですね。お世話になってたのに忘れるなんて申し訳ございません。」
「いや、大丈夫ずっと前のことだし、それよりもずっと立ち話するのもあれだしそろそろ寮に入らない?あ、自己紹介を忘れてたね。僕は垣根霞。寮の管理係をしているよ。」
なるほど、だからずっと寮の前で立っていたのか。
「もしかしてわざわざ私の為に待っててくれたんですか。」
「うん、そうだよ君のお母さんにも面倒見てやってくれって言われてるし、咲ちゃん可愛いから悪い男とかに引っかからないから心配だし。」
「わざわざすみません。本当にありがとうございました。」
「いえいえ、じゃあそろそろ部屋に入りなよ。二人一
部屋だけどもう一人の子も元気で優しそうな子だったよ。仲良くなれるといいね。」
「そうですね。寮の子たちとうまくやってけるか心配で。」
「うーん、咲ちゃんいい子だし大体の子とは仲良くなれると思うよ。」
「そうだといいです。じゃあそろそろ部屋に行きます。」
「いってらしゃい。ああ、あとみんなの前では霞先生と呼ぶように。二人きりの時は霞おじさんって呼んでもいいよ。」
「遠慮しておきます。」
最後までよくわからない人だったな。まあとりあえず部屋に行くか。
105ここが私の部屋か。ものすごくドキドキしながらドアを開けた。もうすでにもう一人の女の子は居
て、ベットの上でくつろいでいた。
「失礼します。今日からこの部屋でお世話になり…」
私が挨拶を言い終わる前に彼女は凄い勢いでこちらに向かってきて、話しかけてきた。
「わー。貴方がもう一人の女の子か〜。可愛い〜。どこから来たの?名前は?何か趣味とかある?」
茶髪のショートヘアでぱっちりお目々の可愛い女の子だった。
彼女は食い気味に聞いてきた。あと距離が近い。
「一個ずつ聞いてくれないかな?」
そう言うと彼女ははっとした顔で
「ごめん気になることが多すぎて興奮のあまりちょっと暴走しちゃってた。じゃあ最初は自己紹介からしよっか。私は浅野蜜柑。気軽に蜜柑でいいよ。私はずっとこの街に住んでるんだけど訳あって寮に住むことになったんだ〜。じゃあ次はあなたの番!」
蜜柑ははしゃいで言った。本当に元気な子だ。
「私は日野咲。咲でいいよ。私は元々小さい村に住んでて、村からは遠いから寮で住むことにしたの。」
「そうなんだ。そんな遠くから一人で来たの?すごいねー。」
蜜柑は興味津々にいろんなことを聞いてきた。
蜜柑と話していると、チャイムの音が聞こえた。
「はーい。どなたでしょうか。」
蜜柑がドアを開けた。
「私ですよ。」
そう言ってニコニコで霞先生が入って来た。
「ああ。霞先生ですかー。」
「私と分かった瞬間急に落胆しないでくださいよ。」
「何のようですか?今私は咲といっぱいお話ししてたのに。」
そういって蜜柑は顔を膨らませている。
「なるほど、私が来るまでもなかったですか。とりあえず二人の仲が良さそうで安心しました。」
霞先生はニヤッと笑うと帰って言った。
「いくら寮の先生とはいえ女子の部屋に入っていいの?」
「まあ、私たちの様子を見るだけならいいのでは?」
「いやでもあの先生、少し怪しいし咲も気をつけてよね。」
「うん。まあ、気をつけるようにするよ。」
「よーし。それじゃあ今日は朝まで語り合おうよ!」
気づけばもう朝になっていた。話して分かったけど蜜柑はとても明るくて優しい。とりあえずルームメイトが優しい人で安心した。蜜柑とはこれからも仲良くいていきたい。