モヤモヤ
私は今日もいつものように朝早く起きて、窓を開けた。今日も暖かい日差しが眩しい。私はご飯を作って、席についた。今日もいつものようにトーストにかぶりついて、テレビをつけた。
今ニュースでは、特に不安なニュースはなく、暖かい話題で溢れていた。
あの日から数日たったが、不審者の被害はほとんどなくなったらしい。それでも油断はできないがとりあえずは一安心だ。
ご飯を食べ終わると私はいつものように支度をして、その後に蜜柑を起こしに行った。ここまでが朝の日課だ。
「おーい。蜜柑ってば早く起きてー。遅刻しちゃうよ。」
私が蜜柑の布団を剥がすが、それでも蜜柑は起きる気配がない。
「うーん、むにゃむにゃ。あと5分だけ寝させてー。」
蜜柑はそう言って布団の中にうずくまる。
蜜柑の寝顔を見ると心が温かくなる。何故か最近、蜜柑を見てると胸がドキドキする。
それでも私は気にせず、蜜柑を起こし続けた。
しかし起きることはなく、結局いつものように遅刻ギリギリで学校に着いた。そろそろ何か対策を考えないといけない。
「はあー、今日も何とか間に合ったよー。」
「もう、蜜柑がもっと早く起きてればゆっくり行けたのに。」
私は頬を膨らます。蜜柑は呑気だからその裏で苦労している人がいることを知って欲しい。
「まあまあ、そんなに怒んないでよ。次から気をつけるからさー。」
何度同じことを言ったことか。蜜柑はそんなに反省してるようには見えない。一緒に寝たら蜜柑は起きてくれるだろうか?
「まあいいや。それより次の授業って。」
教室で私が蜜柑に話しかけようとした時、クラスのみんなが蜜柑を囲んだ。私はあっという間に蜜柑から遠ざかってしまった。蜜柑は人気だから、クラスではなかなか話せない。これは、学校が始まった頃からずっとそうだったが最近はずっとモヤモヤする。もしかしたら蜜柑がいなくて寂しいのだろうか。まあ、柳さんがいるからぼっちではないのだけれど。
蜜柑と話せなかった私はそのまま席に着いた。隣には柳さんがいて、いつものように微笑んで挨拶をする。
「ふふっ、おはよう。昨日はとても楽しかったよ。」
昨日は色々あったがとっても楽しかった。そういえば椿とみゆちゃんはあの後無事だったのだろうか?椿のお母さんに何か変なことをされてないといいけれど。
「うん、こちらこそ。わざわざ車で寮まで送ってもらったし、本当にありがとう。」
「大丈夫だよ。最近は不審者の危険性もあるし、二人に危険が及ぶと行けないから。」
「うん、ありがとう。柳さんは優しいね。」
私が笑顔でお礼を言うと、柳さんはもじもじしていた。
「ふふっ、ありがとう。日野さんは私の大事な友達だからね。」
「昨日は本当に楽しかったから、柳さんが良かったらまた今度遊びに行かない?」
私が誘ってみると、柳さんは目を光らせる。
「えっ!また日野さんと遊んでいいの?」
「うん。日野さんといると楽しいし、もっと仲良くなりたいから。」
「ふふっ、嬉しい。言質はとったからね。それじゃあ次は本当に二人で遊ぼうね。」
柳さんが笑顔で笑う。もしかして昨日蜜柑がこっそりついてきたことを根に持っているのかもしれない。
私が柳さんと話していると霞先生が入ってくる。
後ろではまだ蜜柑がクラスメイトと話している。私も早く蜜柑とお話ししたい。
「ではみなさん席についてください。」
霞先生が呼ぶと、みんながぞろぞろと席につきはじめる。霞先生はかっこよくて面白いため男女問わずに人気があった。そのためまだそんなに時間もたっていないがみんな霞先生の言うことは聞くようになっていた。
「それでは今日も一日頑張ってください。」
霞先生の朝礼を聞きながらいつもの学校生活が始まる。
朝礼が終わるとすぐに授業が始まる。私は柳さんと話しながら授業が始まるのを待っていた。
後ろでは、いつもいろんな人が騒いでいる。
私と柳さんは騒がしいのが苦手だから普段は二人で勉強したり、小説の感想を語り合ったりしている。
蜜柑と話せないのは少しムズムズするけど柳さんがいるから学校生活自体ははとても楽しいのだ。
それでも蜜柑が楽しそうにクラスメイトの人と話しているのをつい見てしまう。
「日野さん?どうしたの。」
「い、いや。別に何でもないよ。」
「もしかして浅野さんと話せなくて寂しいの?」
「何で分かったの?」
柳さんにはバレてるようだった。もしかして蜜柑にも私が見てたのバレてたかな?
「だって、日野さんずっとちらちら後ろの方を見るから。」
「柳さんはよく見てるね。」
「別に私が日野さんのことずっと見てるとかではないからね。」
柳さんはものすごく焦せりながら言った。
「それより、浅野さんが気になるなら話しかけに言ったら?」
「うーん。それも考えたけど、あの中に入るのは難易度高いかなーって。」
蜜柑の周りにはたくさんの人が言ってそこに入るのは私には無理だった。
「あー。それはそうかも。それなら浅野さんの周りに人がいなくなったタイミングで話しかけたら?」
「そんなタイミングあると思う?」
「・・・」
私が聞くと柳さんは黙る。そう、蜜柑は人気者すぎて、いつも隣には誰かいるから、話すのは至難の業だった。
「うーん。でもまあ、学校が終わったら二人きりになれるんだからいいじゃない。 ・・・羨ましいな。」
柳さんの言ってることは正論だった。最後にボソボソと何か言っていたがそれは私には聞こえなかったけど。
「学校が終わったら一緒なのはそうなんだけど、どっちかというと蜜柑が他の人と話してると、なんか変な気持ちになるんだ。」
私が真剣に相談しているのに、柳さんは呆れたようにため息を吐いた。
「はあ、ただの惚気だね。もしかして、日野さんって浅野さんのこと好きなの?」
私はその質問にポカンとした。確かに蜜柑のことは大切な友達だけど好きかはわからない。そもそも私は人を好きになったことがない。
「好きかはわからないよ。ただ最近蜜柑を見てると少しモヤモヤするだけで。」
私もこのモヤモヤがよく分からないけど、蜜柑が大事だから、こんな気持ちになっているんだと思った。
「はあ、日野さんって本当鈍感だよね。・・・私の想いにも気づかないし。」
またもや、最後の言葉がよく聞こえなかった。
「え?私って鈍感なの?」
私がそう言うと、柳さんはまたため息をつく。
今日もいつも通り学校が終わり、下校時間になった。
「はい、それでは今日もお疲れ様でした。下校の際は気をつけてください。」
霞先生が挨拶を終えると同時に、みんながクラスからぞろぞろと帰っていく。
「それじゃあ、私はお迎えが来るからこの辺で。不審者には気をつけて。」
「うん。またね。」
柳さんと挨拶をして別れた。それにしても学校までボディーガードが来るなんて流石すぎる。まあ、私は学校内に寮があるから不審者に会う可能性はほとんどないから安心だ。
一人になった私は蜜柑の方に向かった。蜜柑の周りに人がいないか心配だったが、ちょうど蜜柑は教室に一人でいた。蜜柑もこっちに気づいて軽く手を振ってくれる。
「ねえ、咲。一緒に帰ろう。」
「うん、私も蜜柑と帰りたい。」
私がそう言って蜜柑の手を握ろうとした時後ろからクラスメイトが押してきて私はそのまま床に倒れた。
「ねえ、浅野さんこの後暇だったりする。暇だったらアタシと遊ばない?」
そのクラスメイトは私に謝らずそのまま、蜜柑に話しかけた。まるで私はここに居ないかのように扱われて私は悲しい気持ちになったが、何やら蜜柑の様子がおかしかった。
「ごめん、咲。今日はちょっと用事ができたから、一人で帰っていいよ。」
「う、うん。わかった。今日は一人で帰るね。」
「ありがとう。それじゃあまた後で。」
それだけ言って蜜柑はさっき話しかけてきた女の子と話し始めた。
もしかして、用事ってあの子と何かあるのだろうか?蜜柑とあの子はどんな関係なのか?そんなことを考えてると、私は悲しい気持ちになる。この気持ちはなんだろう?ただ私は虚しく、一人で帰るのだった。
本当は咲と一緒に帰りたかったが今日は咲を一人で帰らせた。咲が教室から出るのを確認すると、私はさっきの女の子に向き合った。
「ねえ、今咲を転ばしたよね?」
「咲?ああ、日野さんね。別に日野さんくらいいいじゃん。」
私はその言葉に苛立ちが沸いてきた。この女にとって咲はどうでもいい存在なんだろうな。でも咲は私の大事な人だ。傷つけるなんて許さない。
「いいから謝って。明日すぐに。」
私がそう言うと、女の子は狼狽えた。多分今の私は普段じゃありえない表情だと思う。
「え?別に良くない。だって日野さんと咲さんって何の関係もないでしょ。だって一回も話してないじゃん。それに日野さんなんて地味なんだからどうでもいいじゃん。」
「関係ないから謝って。私にとって咲が一番大事なの。私はあなたの方がどうでもいいから。」
私がそう言うと、女の子は慌てて出て行った。これでいい。咲だけは私が守る。
私だって本当は学校でも咲といちゃいちゃしたかった。だけど私の周りにはたくさんの人がいて、周りの人が確実に無害とは言えなかった。咲は人と関わるのが苦手だし、女の子に妬まれたり、男に変な目で見られる可能性があるから、できるだけ会わないようにしていた。
それでもさっきみたいなことがあれば私は正気を保てなくなる。
柳さんはまだ信用してるから、咲を預けれるけど、それでもやっぱり嫉妬してしまう。
私だって周りのクラスメイトが鬱陶しいけど咲を守るためならなんだってする。
誰もに咲には近づかせない。
結局一人で帰ることになった私は、とぼとぼと寮まで戻った。自分の部屋まで戻ると、ドアの前に影山さんがいた。影山さんとはあの時から一切会話はしてなくてどう仲良くなろうか迷っていた。まさか影山さんの方からやってくるとは思わなかった。
「あれ?どうしたの。」
「あっ。日野さん、丁度いいところに。お願いがあるんです!」
そう言って影山さんは私の手を握る。これはまた何かありそうだなと嫌な気配を感じるのだった。




