迷子
私はみゆちゃんのお母さんを見つけるために、とりあえず一階から探すことにした。急いで飛び出してしまったため、柳さんとはぐれてしまった。その上、スマホも充電するのを忘れてたから柳さんに連絡ができない。はっきり言ってまずい状況だった。
「お母さん見つかるかなあ。」
みゆちゃんが泣きそうな目で私を見つめる。こんな広い場所で見つけることができるのか不安だったが、それでもとりあえず二人で探すことにした。きっとお母さんの方もみゆちゃんを探しているだろうからどこかで会うはずだ。
「うん。きっと見つかるよ。私と一緒に探そう。」
私はみゆちゃんを慰めるために頭をなでなでした。私が頭を撫でるとみゆちゃんは喜んでくれる。子供ってどうしてこんなに可愛いのだろうか?
「うん!咲お姉ちゃん大好き。」
こうなったらからには絶対にみゆちゃんのお母さんを見つけてみせる。まあ一階から順に回れば会えるはず。私はみゆちゃんの手を握って、歩き始めた。
「そういえばお母さんの特徴とか分かったりする?」
まだ、みゆちゃんのお母さんについて何も聞いてなかった私は、お母さんの情報について聞くことにした。
「特徴?」
「うん。みゆちゃんのお母さんだって一発で分かるようなとことか。」
「えっと、赤髪でちょっと気が強い感じ。」
「お母さんは髪染めてるんだ。」
「ううん。お母さんは地毛っていってた。お姉ちゃんも赤髪だし。」
「へー。お姉さんいるんだね。」
「うん!お姉ちゃんは優しから大好き。いつもお姉ちゃんが面倒見てくれるの。」
お姉さんについて語るみゆちゃんはすごい笑顔だった。
「優しいお姉さんなんだね。」
「うん。私はお姉ちゃんが一番好き。」
「それでお母さんはどんな人なの?」
私が質問するとみゆちゃんは黙った。もしかしてまずいことを聞いてしまっただろうか?
「えっと、お母さんは少し怖いの。優しい時もあるけど急に怒ったりして怖いの。」
なるほど、少し闇がある。聞かない方が良かったかもしれない。
「でも、今日はお母さんと二人で来たんだよね?」
「うん。本当はお姉ちゃんも来る予定だったんだけど、突然お友達と遊ぶことになったって言ってた。」
「なるほど、それでお母さんと二人できたんだね。それでお母さんとどこで離れたか分かる?」
「えっと、お母さんがトイレに行ってる時に、近くでクマさんがいたから、そこで遊んでたらいつのまにか居なくなっちゃって。」
くまさんというのはさっきまでやってたぬいぐるみショーのことだろう。それでショーが終わって戻ってきたらお母さんが居なくなってたという感じかな。ぬいぐるみショーはさっき終わったところだからもしかしたらそんなに遠くまでは行ってないかもしれない。
「そうだね。じゃあお母さんがトイレに行った後、次どこ行く予定だったか分かる?」
「えっと確か、ご飯を食べるって言ってた。」
なるほどじゃあ、ご飯屋さんを回れば何処かで会えるかも?
「よし、それならご飯屋さんを回ってみよっか。私の手を離さないでね。」
私はみゆちゃんの手をぎゅっと握った。
「うん。咲お姉ちゃん大好き!」
「ねえ、蜜柑ちょっと待って。」
「うん、どうしたの?」
「ちょっと用事ができたから、先に蜜柑のとこ行っておいて、ご飯も一人で食べといて、アタシは後で行くからさ。」
アタシはそれだけ言って、お母さんの方に向かった。
「ちょっ、急にどうしたの?」
困惑する蜜柑を無視して、アタシはお母さんを追いかける。みゆがいないということはまた放置したということだ。だからアタシはお母さんが大嫌いなんだ。
「ねえ、お母さん。みゆはどうしたの?」
ご飯を食べるためにお店に入ろうとしていたお母さんを止め、アタシはみゆがどこにいるか聞く。お母さんは困惑した様子でアタシを見つめるがそんなことどうでもよかった。
「何でアンタがここに?」
「それは今どうでもいいでしょ。みゆがどこにいるか聞いてるの。」
「あの子なら私がトイレに行ってる間にどっか行ったわよ。本当あの子は。」
そう言って、お母さんはため息を吐く。一切娘の心配をしない、お母さんにアタシは苛立ちを隠せない。みゆはまだちっちゃくて危ないというのに。
「いや、何で探しに行かないのさ。」
「はあ何でって、あの子が勝手にどっか行ったのに、何で私が探さないといけないの?そんなに心配ならアンタが探しに行けば?」
「はあ、もういいや。」
アタシはお母さんのクズっぷりに落胆しながら、みゆを探しに飛び出した。
みゆが行きそうな所、とりあえず2階から回ってみるか。いや、確か一回でぬいぐるみショーをやっていたはず。そこに行けば会えるかも。
それにしても、こんな人混みの中で小学二年生を一人にしてるなんて終わってる。アタシは急いでみゆを探した。
「あれ、あなたは?」
アタシがみゆを探していると、柳さんが話しかけて来た。
「あれ?柳さんだっけ?咲はどうしたの。」
柳さんは咲と居るはずだが何故か一人でいた。それにアタシと同様にすごく焦っていた。
「それが、急に居なくなって、もしかしたら変な人に連れて行かれたのかも。」
柳さんはものすごく慌てている。
「まあ、一旦落ち着こうよ。どうせ今頃蜜柑もアタシを探し回ってるだろうし蜜柑が見つけてくれるかも。それにそっちにもボディーガードもいるでしょ?」
「うん、そうだね。えっと花園さんは何で一人なの。蜜柑さんは?」
「それが、アタシの妹がここに居るらしくて、探してるの。」
「その子の見た目を教えて?私のボディーガードに探させるから。」
「えっいいの?」
「うん、大丈夫だよ。困ってる人は見過ごせないし、花園さんは日野さんの友達だからね。」
柳さんは笑顔で言うが、そんな簡単に人員って動かせるものなんだろうか?金持ちは怖くて仕方がない。
「ねえ、柳さんって何者?」
「ふふっ。他の人には内緒だよ。私のお父さんはね・・・」
「まじか。」
この人バケモンだよ。私はその事実を知って驚愕するのだった。
やばい思った以上に大きい。このペースだとなかなか見つからない。そもそもすれ違ってる可能性すらあるから、本当に見つかるか分からない。それとさっきから、みゆちゃんがずっと近づいて動きづらい。
「えっと、みゆちゃん。ちょっと近いかな。」
「やだ。咲お姉ちゃん大好きだから離れたくないもん。」
みゆちゃんにものすごく懐かれてしまった。可愛いからいいけど、この姿をみゆちゃんのお母さんに見られたら、不審者と間違われないかな?
私はとりあえず椅子に座って休むことにした。
「はあ、疲れたね。」
「私このまま一人なのかな?」
みゆちゃんは泣きそうな顔で私を見てくる。その姿を見ると私は悲しくなる。小さい子供を一人にしてるなんてかなり親として終わってる気がする。そもそも親はちゃんとみゆちゃんを探しているのだろうか?
私がイライラしていると、誰かが話しかけて来た。目があったと思ったらすごい目で私を睨んでいた。
「こんなとこにいたのね。その人は誰?」
「えっと、どなたでしょうか?」
「私はこの子の母親なんだけど?あなたこそ誰よ?もしかして不審者?」
やっと会えたみゆちゃんのお母さんに私はイライラしていた。みゆちゃんはこの間ずっと寂しい思いをしていたのに。
「貴方こそ、みゆちゃんを放っておいてさっきまで何してたんですか?みゆちゃんはずっと一人だったんですよ。」
「まるで私が悪いような言い方だけどこの子が勝手にどこかに行ったのよ。私は何も悪くない。悪いのはこの子だわ。」
この人はもうだめだ。人として終わっている。子供を守るのが親の役目ではないのだろうか。
「みゆちゃんはまだ小さいんですよ。もっと親がちゃんとしないといけないと思います。」
「何よアンタ。不審者のくせに私に文句つけて。何様のつもりよ。警察に言いつけるわよ。」
もう、この人に何を言っても無駄だ。みゆちゃんはさっきからずっと震えている。私はどうすればいいか分からなくなってしまう。
「待って、お母さん。私が悪いの。咲お姉ちゃんは悪くないから。」
「アンタは黙っててよ。」
そう言ってお母さんはみゆちゃんを蹴り飛ばした。
その時私の堪忍袋の緒が切れた。
私は手を掴んで言った。
「自分の子供になんて事するんですか?ちゃんと親としての責任を持ってください。」
私はみゆちゃんを守るように立つ。
「はあ?本当にうざいわね。」
そう言って私に手を振り上げる。私は身構えたがその手が振り下ろされることはなかった。
「その辺にしときなよ。椿のお母さん。」
「はあ、アンタら誰よ。」
「今警察を呼びましたので、大人しくしてください。」
そう言って、緑は掴んだ手を離した。
「チッ何よ。次から次に?」
みゆちゃんのお母さんはそう言って勝手に逃げてしまった。
「咲、大丈夫?怪我は無かった?みゆちゃんも。」
蜜柑は疲れてフラフラになった私を支えてくれる。あれ?何で蜜柑がみゆちゃんを知っているんだろう。まあとりあえず二人が来たことで私は安堵した。
「うん。怪我は無いけど、二人が何で一緒に?」
「それはね、椿がどっか行くから一人で探していたら、ちょうど緑さんと会ったから一緒に行動していたんだ。」
「それで椿は?」
それに答えたのは緑だった。
「ああ、それなら柳お嬢様と一緒にいるらしいですよ。さっきお嬢様から連絡があったので。」
「なるほどそれと何で蜜柑がみゆちゃんを知ってるの?」
「それはみゆちゃんが椿の妹だからだよ。昔から何度か遊んでたんだ。」
「うん!私蜜柑お姉ちゃんも大好き。」
その言葉に私は目を丸くした。そんな奇跡みたいな事あるんだ。
「えー。嘘でしょ!」
にみゆちゃんのお母さんを見た時椿に似てるなとは思ったけどそんなことあるんだ。
「まあとりあえず二人が無事で良かったよ。もし何かあったら椿のお母さんとはいえキレてたよ。いや、すでに椿のお母さんは大嫌い何だけどね。」
蜜柑は笑顔で言うから怖い。
ん?よく考えると何で蜜柑がいるの?ついてこないって言ったはずなのに。まあ今日は蜜柑のおかげで助かったからとやかくは言わないでおこう。
私達がゆっくりしていると後から椿と柳さんが急いでやって来た。
「みゆが無事でよかった。」
そう言って椿はみゆを抱っこした。
「ごめんない、お姉ちゃん。」
「みゆは悪くないから。」
二人が話してる間に蜜柑は私に抱きつく。
「今日はこの辺にして帰らない?もう咲も疲れたでしょ?」
「そうだね、私も同意見だよ。それはいいとして、貴方だけずるい!」
そう言って柳さんも私にくっつく。いや助けて欲しいんだけど。
「はあ二人とも、咲のこと好きすぎ。まあいいや、アタシはみゆと帰るから。あと咲、本当にありがとう。」
そう言って椿は笑った。
今日はこの辺で終わることにした。
今日はものすごく疲れたけど楽しかったし、とりあえず、大変なことにならず済んでよかった。
私達は柳さんの高級車で、寮まで送ってもらった。
蜜柑もやっぱり高級車に驚いていた。やっぱり普通は驚くよね。
私達は部屋に入ると、すぐにベットに飛び込んだ。
もう今日は疲れたから早く寝ることにした。




