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はなかご  作者: 和音
別れの季節
109/110

全てが終わって

「ハアハア、もう限界だよ。一旦休憩にしない?」

「ダメですよ。まだ片付けないといけないところはたくさんあるんですから。この調子では夕方までこのままですよ。」

西園寺さんはそう言ってテントの片付けに専念していた。

「うへえ、これ以上は熱中症になるよ。それになんで私達がこの量の片付けをしないといけないの?」

「そうですよ。僕たちだけでこの量は骨が折れてしまいます。」

蜜柑と影山さんの苦痛の叫びも虚しくグランドに響くだけだ。

「もう、二人ともだらしないですね。とりあえず気合いを入れていきましょう。」

「いやあ、それにしても確かにものすごく暑いしこれは疲れるな。まあ、水分はちゃんと取らねえとな。」

麻莉の言う通り季節は既に秋だと言うのにまだジリジリとした日差しで私達は既にヘトヘトだった。

というのも昨日で文化祭も無事に終わり今日は休日だったがグランドや体育館の片付けを寮の私達がやることになっていた。せっかくの休みが無くなった為、西園寺さん以外のみんなは既にやる気が全くなかった。

「とりあえずこのままではキリがないので体育館とグランドの二手に分かれましょう。」

文化祭で片付けないといけない所はたくさんあるが私達の担当はグランドのテントと体育館間の飾りの片付けの二箇所だった。

「ぼ、僕は西園寺さんと組みたいです。それとできれば人が少ないところの方が。」

「なら俺と影山と西園寺で体育館の方をやるから咲達はグランドの方を頼むわ。」

麻莉は私の顔を見るとニヤリと笑った。

「ええ、それでは向井さんの言った通りにしましょうか。お互いに作業が終わったら連絡を取り合いましょう。」

「うん、それじゃあお互いに頑張ろうね。」

麻莉達はそれだけ言って向こうのほうの片付けに向かって行った。私達も麻莉達に手を振ってグランドの片付けに取り掛かることにした。

それにしても麻莉は私達のことを察して気を使ってくれたのかもしれない。ひまりとはまだ色々と話したいことがあったから丁度いい機会だった。

「えへへ、疲れたし咲を抱きしめてもいいよね?」

「それならアタシも咲ちゃんをぎゅっとしたいよ。」

西園寺さん達がいなくなると同時に蜜柑とひまりが抱きついてくる。周りにはたくさんの人がいて恥ずかしい。

「ちょっと二人とも抱きついてないで作業に集中してよ?」

二人とも距離感が近すぎて困ってしまう。この調子では本当に夕方までかかってしまいそうだ。

「だってこの前まで咲ちゃんと全然会えなかったんだもん。だから今日くらいはいいよね?」

可愛く甘えてくるひまりに私は断れずにいた。それにひまりとはキスしたこともあり若干に気まずくもあった。

「分かったよ。とりあえず早く作業を終わらせようね。」

「そうだね。とりあえずテントを剥がそっか。」

やらないといけない所はたくさんあったがとりあえず私達はテントから片付けることにした。グランドには私達以外の寮の人や部活の人も片付けをしており、かなり賑わっていた。

「それにしても、こうやって片付けをしているとなんだか寂しい気分になるね。私達の文化祭も終わったんだなって感じるよ。」

蜜柑の言う通り文化祭まで毎日頑張って準備していたからか寂しいという気持ちはあった。それでも今は文化祭が無事終わった達成感の方が何倍もあった。

「確かに文化祭は終わったけど思い出とかいっぱいできたから寂しくはないよ。ひまりだって戻って来てくれたし。」

「二人とも心配かけてごめんね。あたしだけの考えでいなくなろうとしちゃって。」

ひまりが無事戻って来たことが私としては何より嬉しかった。ちゃんと私の劇が伝わったようで良かった。

「本当にあの時は心配したんだからね?それで無事に学校に通えることにはなったの?」

蜜柑の問いにひまりは簡単に答えた。

「とりあえずは今の学校に通ってもいいってマネージャーから連絡があったよ。ただ今まで以上に学校を休むことにはなるって言われたかな。」

「まあ、そうなるよね。でもひまりがいるならこれでいいか。」

「うん、これからは咲ちゃんと蜜柑ちゃんとも学校で会えるんだから。」

色々とあったがひまりといれるだけで文化祭を頑張った甲斐があるというものだ。

「よーし、それじゃあ早速残りのテントを全部片付けてみんなで遊ぼうよ。」

「いいねそれ。あたしも早くみんなと遊びたいよ。ほら、咲ちゃんも早くいくよ。」

「ちょっと、二人とも早いってば。もう少し落ち着いて!」

私達はお互いに笑いながらテントの片付けをすることにした。










「いやー、それにしても文化祭かあ。みんな青春してるねえ。私にもそんな青い時代があったてもんだよ。」

そう言って校長先生はお酒をラッパ飲みして豪快に笑っていた。私達はその姿を何とも言えない顔で見ていた。

「お母様ってば学校ではお酒を飲まないでと言っているでしょう!お母様はものすごくお酒に弱いのですから。」

「だってこんな眩しい青春を見せられたらお酒を飲まずにはいられないんだもん。それに文化祭が終わった祝いとして偶にはいいだろう?」

お酒を飲んでありえないほどにやってる校長とそれに怒っている西園寺さんを見ながら私達は唖然としていた。

「皆さんすみません。まさかこんなことになるなんて。ほら、早く水を飲んでください。」

「やっぱりメリアはいい子だねえ。私が頑張って育てただけあるよ。」

「もう、みんなが見てるのですから頭を撫でないでください!」

まさかあの美人な校長先生がここまでお酒に弱いとは思っていなかった。それに西園寺さんもいつもの余裕がある感じではなくなっていた。

そもそもなぜこうなったかと言うと文化祭の片付けが終わった後、偶々校長先生と出会いお茶をすることになったからだ。それなのに途中から校長先生がお酒を飲みだして大変なことになってしまった。そもそもどうして学校にお酒があるのだろうか?

「それにしても文化祭は全クラス回ったけどどこも素晴らしかったよ。メリアのクラスのカフェも可愛かったけど流石にあの服は恥ずかしくないのか?」

「私だってあれは反対しましたよ!でも多数決で勝ってしまったから仕方ないんです。」

さっきから二人で騒いでいるだけだが仲が良さそうで何よりだ。校長はもっと硬い人だと思っていたから少し意外に感じている。

「それにしても君たち一年二組の劇も拝見させて貰ったよ。あれは本当にすごかったね。それぞれの連携がちゃんとしていてクラス全体の仲がいいことが伝わってきたよ。」

「ありがどうございます。あの時はクラス一丸となって頑張りましたから喜んでもらえて嬉しいです。」

私は劇を褒めてくれる校長先生に深くお辞儀をした。

校長先生は忙しくて生徒のことをあまり見ていないと思っていたが意外としっかり見ていてびっくりした。

「ハハっ、それはいいことだ。それと南雲さんはこの学校に通い続けるらしいじゃないか?大変じゃないのか?」

「そうなんですか?初耳なんですが。」

校長先生は当たり前のようにひまりのことを知っており。そのことを聞いた西園寺はびっくりしていた。

「大変になるのは分かっています。それでもあたしはこの学校の生徒として頑張りたいと思っています。」

堂々としているひまりを校長先生は至近距離でじっと見つめていた。

「なるほど、その意気込みがあればきっと卒業までいけるだろうな。ただ芸能活動をしながらの卒業はかなり難しいだろう。私が南雲さんの転校に説得に一役買ったんだから頑張ってくれよ?」

校長先生は私達を見つめて豪快に笑っていた。私もひまりや蜜柑とは卒業までずっと一緒にいたい。

「お母様、そろそろ時間ですよ。もうお酒はやめてください。」

「おや、もうそんな時間か。本当はもっと話していたかったがしょうがない。それでは帰るぞメリア。」

「はあ、それでは皆さんもお気をつけて。」

西園寺さんは校長先生は担ぎながら私達に軽く手を振ってくれた。私達も西園寺に軽く手を振ってこの場を後にすることにした。





「うわあ、もう真っ暗だよ。結局今日一日潰れちゃったじゃん。」

蜜柑の言う通り気付けば外は真っ暗だった。空を見上げると星が綺麗で見惚れてしまう。

「それでも今日は二人と一緒にいれてよかったよ。明日から仕事で当分みんなと会えなくなると思うから。」

「そっか、それじゃあまた少し寂しくなるね。」

私が寂しそうにするとひまりが優しく手を握ってくれる。

「寂しくなるけどもうあたしは一人じゃないって分かったから大丈夫だよ。だからみんなの為に私は頑張るんだ。」

今までのひまりと違って迷いが一切ない笑顔に安心してしまう。今のひまりとならどんな困難でも乗り越えると信じていた。

「それじゃあ、帰ろっか。ほら手を繋ごう?」

「むぅ、蜜柑ちゃんだけずるいよ。あたしも咲ちゃんと手を繋ぐね。」

「もう、だから急にくっつかないってば!」

ただこの調子だと私の体が持たないかもしれない。

ここまで見ていただきありがとうございます。

これにて第三章は終わりです。

次からは単話が多くなるかもしれないです。

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