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はなかご  作者: 和音
別れの季節
106/108

この気持ちを

「いやー、咲っちの演技とってもよかったよ。」

「ええ、まさか咲がここまで演技が上手いとは思いませんでした。これなら優勝も夢ではありませんね。」

私達のクラスの劇が終わり舞台裏に戻るとみんな揃っており鈴ちゃん達までいた。

鈴ちゃん達も私の劇をベタ褒めしてくれる。

「上手くいってよかったよ。みんなも協力してくれてありがとう。」

劇は観客からもかなりウケていてよかった。自分でもかなり上手く出来たと思う。練習は何度もしたがここまで出来たのは今回が初めてだった。

問題はひまりがこの劇を見てくれているかどうかだ。一応柳さん達がひまりのところに向かっているがどうなっているかまでは知らなかった。

「とりあえずお疲れ様。咲ってば本当にすごいよ。」

蜜柑は私と目が合った瞬間に抱きついてくる。

「むっ、それなら私も咲っちをぎゅっとしたいよ。」

「ちょっと?二人共そんなにくっつかれても困るよ。」

劇が終わってクタクタだというのに蜜柑となのちゃんに抱きつかれて困ってしまう。安立さん達が見ているから余計に恥ずかしくて仕方がない。

「コラ、日野さんは疲れてるんだから休ませてあげなよ。」

「そうですよ。咲はこの後もやらないといけないことがあるのですから。」

安立さんと鈴ちゃんはそう言って二人を引き離した。鈴ちゃんに関してはものすごい怒りを感じる。

疲れて限界だった私は椅子に座り大きなため息を吐いた。大事なのはこの後だ。

そもそもひまりがちゃんと来てくれるかも分からない。会えたとして私と話してくれるのだろうか?この前みたいに逃げられる可能性もある。

「咲、そんなに暗い顔をしないでくれ。ひまりなら多分大丈夫だから。」

私が一人で悩んでいると隣に空ちゃんが座ってポンと肩を叩いてくる。きっと空ちゃんは私の悩みを分かっていた。

「それでも私は心配だよ。ひまりは私の演技を見てくれたのかな?」

ひまりが悩んでいるなら私が力になってあげたい。今までずっとひまりに避けられていたから今日こそちゃんとひまりと会話がしたい。

「大丈夫、きっと咲の演技を見てるだろうしちゃんとひまりの心にも響いていると思うよ。」

空ちゃんはそう言って私の頭を撫でてくれる。空ちゃんはいつも私が困った時こうやって慰めてくれる。

「それにしても王子役の人の演技も素晴らしかったね。あれはかなり劇に慣れてると見た。」

空ちゃんの発言に私ハッとする。

「あれ、楓先輩はどこに?さっきまでいたはずじゃ。」

辺りを見渡すとさっきまでいたはずの楓先輩がいなくなっていった。

楓先輩には劇中もずっとお世話になっていたし改めてお礼がしたかった。私が間違えそうになった時も楓先輩はずっとサポートしてくれていた。

「楓先輩なら劇が終わってすぐに何処かに行っちゃったよ。」

私が楓先輩が探していると蜜柑が教えてくれる。楓先輩はいつも自由だから困る。

「そっか、それなら部活の時にでもお礼を言っておこうかな。」

楓先輩といい鈴ちゃん達といいみんなが助けてくれたおかげで文化祭が無事終わることができた。

「それよりそろそろ屋上に行った方がいいと思いますよ。柳さんから連絡が来たので。」

「分かった。それなら今すぐ行くよ。」

鈴ちゃんの言う通りもう時間があまりなかった。私はドレスのまま舞台裏を後にした。

まだ後夜祭は続いているが私はこっそり抜け出して屋上へと向かった。この時間に屋上は空いていないが東くんにこっそり鍵を貰った。

なんで東くんが屋上の鍵を持ってるか分からないがこれでひまりと二人きりで話すことができる。

私はこの日をずっと待っていた。早くひまりに会いたくて仕方がなかった。

私は屋上の扉を開けてひまりを待った。風がなびいてとても清々しい。   









「咲ちゃん?待っててくれたんだね。」

「ちゃんと来てくれたんだねひまり。忙しい中来てくれて嬉しいよ。」

私が待っているとひまりが息を切らしてやって来る。今日のひまりは撮影後というのもあり、いつも以上に可愛くて見惚れてしまう。

やっとこの気持ちをひまりに伝えることができる。私は笑顔でひまりに向き合った。

「あたしも本当はずっと咲ちゃんに会いたかったんだ。それなのにずっと逃げてきてごめんね。」

ひまりはそう言って私を強く抱きしめた。この温もりもなんだか懐かしく感じる。

「大丈夫だよ。ひまりが戻ってきてくれてよかった。私もずっとひまりとお話ししたかったから。」

私はひまりの笑う顔が好きだった。またひまりと一緒に笑いたかった。

「あたしも咲ちゃんと話したいよ。だけどその前に一つ言いたいことがあるんだ。」

「いいよ。なんでも聞くよ。」

私はひまりの話を真剣に聞く。多分ひまりがずっと悩んでいたことなんだと思う。

ひまりは最初言いづらそうにしていたがその後ゆっくりと口を開いた。

「咲ちゃん、あたし咲ちゃんのことが大好きだよ。」

ひまりはそう口にすると顔が真っ赤になる。その言葉を聞いて私は安心する。ずっとひまりに嫌われていると思っていたから好きと言われて安心した。

「うん。私もひまりのことが好きだよ。また、一緒にいようね。」

私は笑顔でそう言ってひまりに手を差し出す。しかしひまりは戸惑っている様子だった。

「違うよそう言う意味じゃ。あはは、咲ちゃんってば本当に面白いね。」

ひまりは少しの間黙った後、いつもの様に笑っていた。しかしなんだか様子がおかしい様にも見えた。

「どうしたのひまり?もしかしておかしなこと言った?」

「いいよ、今はその好きで。今は咲ちゃんとこうやって話せてるだけ幸せだから。」

私もひまりがいてくれたおかげで学校生活が楽しかった。ひまりとはこれからも一緒にいたかった。

「それにしてもひまりに突然無視された時はびっくりしたよ。せめて何か言って欲しかったな。」

「ごめんね、みんなに迷惑かけちゃったよね。あの時はこれ以上傷つきたくなかったから。でも今は気持ちに整理がついたからもう大丈夫だよ。」

「そっか、それならよかった。こうやってひまりと話せたのもみんなのおかげだよ。」

後でみんなにはお礼を言っておかないといけない。誰か一人でもいなかったらこうやってひまりと話せなかったかもしれない。

特に鈴ちゃんと柳さんには感謝してもしきれない。今度パフェでも奢ってあげよう。

「そうだね、みんなのおかげで自分が愛されてるんだなって分かったよ。それに昔のことも思い出したし。」

「うん、みんなひまりのことを大事に思ってるから。

だから今度からこんなことしないでよ?」

私はひまりに対して少し怒っていた。だから次もしひまりが一人で苦しんでいたら私は許さない。

「分かってるよ。もう、咲ちゃんを困らせないって決めたから。」

今のひまりはいつも通りで落ち着く。やっぱりひまりとはこうやって仲良く話すのが好きだった。

ひまりはもうすぐ転校してしまう。だからずっとずっとこの空間が続けばいいのにと思う。

「今度またお母さんやマネージャーとも話し合ってみるよ。この前までは諦めてたけど咲ちゃんに勇気を貰ったからさ。」

「そっか、それなら私も応援するよ。私もひまりとずっと学校に通いたいから。」

「そうだね。だから今はあたしとたくさんお話ししようね。」

私とひまりは手を繋いだまま色んなお話をした。今まで話せなかった分ずっと話していた。

「今まで辛かったのが嘘みたいに軽いよ。みんなも待ってるだろうしそろそろ戻ろっか?」

「そうだね。みんなでひまりが戻ってきたお祝いでもしよっか。」

「本当に?それじゃあ今日はずっとみんなといられるね。ほら、手を繋いで行こう?」

そう言ってひまりが差し出した手を握り、みんなの元へと向かう。

「あっ、そうだ。一つだけいいかな?」

「ん、どうしたのひまり?」

私がひまりの方に振り向くと同時にひまりと私の唇が触れる。私はその瞬間、時間が止まった様に思えた。

ひまりの唇は柔らかくて暖かかった。

「えへへ、咲ちゃんってば顔が真っ赤だよ?」

「ひ、ひまりこそ顔が赤いよ。というか急にどうしたの?びっくりしたよ。」

私は突然ひまりにキスをされて頭が真っ白になる。初めてのキスでびっくりしてしまう。

ひまりは相変わらず笑顔だしもはや訳が分からなかった。









「東、その飾りはそこにつけて。」

「了解。それじゃあ後は飲み物と料理だけだね。」

私は今、東と教室の飾り付けをしていた。

「蜜柑、頼まれたものは買ってきたよ。」

私達がパーティーの準備をしていると買い出しに行っていた椿が戻ってくる。

咲がひまりを迎えに行った後、私達はひまりのためにパーティーを開くことにした。そのため時間がない中私達は急いでパーティーの準備をしていた。

「ありがとう椿。まさか椿がパーティーを開こうなんて言うとは思わなかったよ。」

このパーティーを企画したのは私でも咲でもなく椿だった。椿は他人に興味ない様で誰よりも優しい。

「前もアタシ達三人でひまりのお別れパーティーしたことがあるでしょ?やっぱりひまりが一番喜びそうなことはこれかなと思って。」

「それは間違いないよ。ひまりが泣いて喜ぶ様なパーティーにしようね。」

せっかくやるなら盛大に祝いたい。ひまりは涙脆いからまた泣いちゃうかもだけど。

「それにしてもひまりと咲を二人にしてもいいの?もしかしたらひまりが告白してるかもよ?」

「かもね。でも私は構わないよ。」

ひまりと私は友達でありながらお互いに咲のことが好きなライバルだ。だからお互いに遠慮なんていらなかった。前までひまりはずっと遠慮していたけどこれを機に遠慮しなくなってくれたら欲しい。

「それでも私は負けるつもりはないから。ひまりにも柳さんにもね。」

「ふっ、蜜柑らしいや。本当にあの日を思い出すよ。このためにアタシは頑張ったんだから。」

「本当に椿は可愛いね。もっと表にその可愛さを出せばいいのに。」

椿は誰よりも私とひまりのことを大事に思っていた。昔も今も私達三人がこうやって一緒にいられるのは椿のおかげだ。まさか篝さんや柳さんに霞先生の力まで借りてるとは思わなかったけど。

「アタシはこのままでいいんだよ。それとひまりが戻ってきたらまた三人で話そうね。」

「あっ、そんなこと言ってたら今回の主役が来たよ。ほら、みんなでお祝いするよ。」

噂をしているとひまりと咲がやって来る。二人とも顔が赤いし多分ひまりが告白したのだろう。

何はともあれ私は全て無事に終わったことに安堵するのだった。

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