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はなかご  作者: 和音
別れの季節
102/105

心に響く劇を

「咲、準備できたー?確認するよ。」

「ふえっ、ちょっと待ってまだ準備できてないから。」

何とか無事に文化祭の出し物は終わることができて、残すは後夜祭だけだった。あと少しで劇の時間になるため、私はシンデレラの衣装に着替えていた。しかしまだ恥ずかしくてなかなか表に出られないでいた。練習ではそこまで緊張せずに演じることができたがこの衣装でとなるとかなり恥ずかしい。

「もう、咲なら大丈夫だってば。だから開けるね。」

「ちょっと、まだ恥ずかしいからダメだってば。」

私はずっと緊張していたが蜜柑が気にせず入ってくるため、私は顔が真っ赤になる。蜜柑はいつも無神経だから困ったものだ。

それに蜜柑は私の姿を見た瞬間石像のように固まった。もしかして似合ってなかったのだろうかと心の中で不安になる。こんな派手な服人生で一度も来たことがない。

「ど、どうかな?もしかして変だったりする?」

「変なんかじゃないよ。すっごく可愛い!ぎゅーっとしてもいいかな?」

「シワができるから絶対ダメ。それに今すごく恥ずかしいんだよ?」

蜜柑からの評判はとても高くてとりあえず安心する。それにしてもこんな可愛い服を持ってるなんて安立さんは凄すぎる。

「すごいよ日野さん。練習中もとても上手だったからこれなら絶対に成功するよ。」

「あら、とても様になってるじゃない。他の人も準備が終わってたから一旦集合したら?みんな既に体育館に集まってるそうよ。」

私と蜜柑で待っていると城戸さんと柳さんもやってくる。二人とも劇には出ないため暇そうだった。二人は料理係を通じてからか何だか仲良くなっていた。城戸さんは厳しそうな感じだが話すと案外優しいからみんなが城戸さんと仲良くしていて私も嬉しい。

「確かにそろそろみんなと合流した方がいいかも。それじゃあ行くよ蜜柑。」

「はーい、絶対にいい劇にしてみせるから二人は客席で楽しみにしていてね。」

私と蜜柑は少し急ぎながらみんなと合流することにした。ちなみに蜜柑は妖精役だ。妖精らしい怪しさと無邪気さがあってとても似合っていた。

みんなに合流する途中でいろんなクラスの人と会うがみんなコスプレをしていて何だか不思議な気分だ。

どこも賑わっておりこの楽しい雰囲気がもうすぐ終わるとなると何だか悲しくなる。

「咲ってばそんなに寂しそうな顔しないでよ。ここからが楽しいんだから。それに文化祭が終わっても私達の絆はそのままでしょ?」

この文化祭を通じて安立さんや他のクラスメイトと仲良くなれた。なのちゃん達とも久しぶりに会えて本当に幸せだった。だけどこの思い出は消えることなんてないしこれを機にみんなともっと仲良くなれる気がした。

だから蜜柑の言う通りくよくよするのは無駄かもしれない。

「それもそうだね。蜜柑の言う通り今は笑っておくよ。だからここで手を握るのはやめてくれない?」

ただでさえこの衣装は目立つと言うのに蜜柑が手を繋ぐせいで廊下ですれ違う人全員にじっと見られて恥ずかしい。

「あの、日野さん。少しだけいいかな?」

「えっと、先輩ですか?どうされたんですか?」

私達が廊下を歩いている途中に男子生徒の一人が話しかけてくる。ネクタイピンの色的に先輩だ。というかこの先輩はサッカー部の部長でよく集会で表彰されていた気がする。

「そうだな、日野さんが暇ならでいいんだけど後夜祭の後校舎裏に来てくれないかな?」

「えっと校舎裏ですか?校舎裏で何かあるんですか?」

「えっと、その何というか伝えたいことがあるから。暇だったらでいいからさ。」

突然校舎裏に来てとだけ言われてもよく分からず頭を傾げる。先輩は少し顔を明るくしているし周りの人も異様に騒いでいる。何より蜜柑の表情がどんどん曇っていってとても嫌な予感がする。

「あの、咲は今急いでるんで後にしてもらっていいですか?それに咲はそういうの興味ないんで。ほら、咲行くよ。」

「う、うん。今は急いでるのですみません。」

「おう、こちらこそ突然話しかけてすまなかったな。それじゃあまたな。」

蜜柑に手を引っ張られた私は先輩に頭を下げてその場を去った。先輩は何やら残念そうにしていたが一体何だったのか?

それに蜜柑はなにやら怒っているようだった。もしかして私が何かしてしまったのだろうか?

さっきから蜜柑がぶつぶつと言ってるもの怖い。

「ついに咲の可愛さがバレてしまったか。今日は文化祭だしもしかしたらたくさんの人に告白されるかも。それなら私が咲を守らなきゃ。さっきの人ある程度話を聞いてくれたから良かったけどもしかしたら無理やり何かされるかも。そうなったら私は絶対に耐えられないし何より咲は私だけに振り向いて欲しい。でもそりゃあこんなに可愛かったら誰だって告白するよね。この後の劇なんてしたらさらに告白されるんじゃ?そうなると今からでも劇をするのはやめた方がいいかも。」

「えっと、もしかして蜜柑怒ってる?あの先輩と関係あったりする?」

早口で独り言を言い続ける蜜柑に私は恐る恐る声をかける。蜜柑が怒ってないか心配で仕方がない。

「別に咲に対しては怒ってないよ。ただちょっとモヤモヤしてただけだから。とりあえず早くみんなに会いに行こうよ。」

蜜柑はそれだけ言って私に手を握ったまま走るのだった。私はよく状況が理解できないまま体育館の中に入るのだった。









「うわあ、日野さんすごい可愛い!これなら絶対に一位確定だよ。」

「他のみんなも様になってるしこれなら一位も目指せるよ。僕は出られなくなった代わりに裏方で頑張るから。」

体育館に入ると後夜祭のステージに出る人がそれぞれ準備していた。私達が着く頃には私のクラスの劇に出る人はみんなおり、怪我をして劇に出られなくなった東くんもいた。

「そ、そうかな。それでもやっぱり恥ずかしいよ。」

「大丈夫だから安心して。私達が全力でサポートするから。とりあえずもうすぐ本番だから今は私と一緒に休もうよ。」

私は蜜柑の隣に座って大きく深呼吸をする。

大丈夫、今までたくさん練習してきたし蜜柑達だっている。だから心配はする必要はないんだ。私は自分にそう言い聞かせて立ち上がる。やっぱり劇が始まるまでにあと一度くらい練習しておきたい。

「というか、楓先輩は?まだあれから一度も会ってないんだけれど?」

「ああ、楓先輩なら丁度いい服を探しにきらら先輩達のところに行ったよ。劇には間に合うようにするとは言ってたよ。」

「そうだ、せっかくだしみんなで気合い掛けしない?ほら、手を合わせてさ。」

安立さんはそう言って立ち上がると手を差し伸べた。こんなことができるようになったのも文化祭があったおかげだ。これからもイベントはたくさんあるけれどみんなで笑って過ごせたらなと思う。

私は笑顔で安立と手を重ねる。その後に他のみんなも手を重ねて誓い合った。

「それじゃあこの後の文化祭も頑張ろうね。ということでえいえいおー。」

私達はお互いに笑い合う。きっとこれからも楽しい思い出をみんなでなら作ることができる。それが今私の中で確信に変わった。

「それでは後夜祭のステージに参加の方は準備をお願いします。」

私達がみんなで話していると放送が流れる。ついに私達の劇が始まってしまう。

私は緊張しながらも後夜祭が始まるのを楽しみに待つのだった。








「一年一組の皆様ありがとうございました。それでは次に一年二組の皆様準備をお願いします。」

あれからすぐに後夜祭が始まりあっという間に私達の番になった。後夜祭は一年生から順にやるため私達のクラスは二番目だった。少し客席の方を見たがたくさんの人がおり、どうしても緊張してしまう。

「咲、ついに私達の番だよ。緊張しちゃうのは分かるけど私達がついているから安心して。」

「分かってるよ。私達なら何とかなるよね。」

既にみんなは待機しており私達も遅れないように後を追った。楓先輩もちゃんと来ており王子役の衣装がとてもカッコよかった。

「それでは今から一年一組の劇を始めます。題名はシンデレラです。」

司会の説明とともに体育館全体が真っ暗になりステージだけに光が灯される。

最初はシンデレラがいじめられる所から始まる。継母役の安立さんはとても様になっておりいつもと違いすぎてびっくりするほどだった。安立さんは声が聞き取りやすく喋るテンポもいいため客の掴みもとても良かった。

私は劇をしながらも暗い中からひまりを探していた。しかしひまりはどこにも見つからずまだ劇は見ていないようだった。劇が始まる前から空ちゃんが電話したりして探してくれていたがひまりはどこにいるのだろうか。私はひまりが来てくれるかだけが心配でそれだけが頭を離れない。

「貴方が舞踏会に出れると思っているの?貴方は家で掃除でもしてなさい。」

「そんな、でも私。」

「うるさいわね。アンタみたいにみすぼらしい子はネズミとお話ししてるのがお似合いよ。」

継母がシンデレラを虐める所で最初の場面が終わる。

この後シンデレラは一人だけ舞踏会に出られずに家で一人雑用をすることになる。そこで妖精が現れて舞踏会へ向かうことになる。

ここまではうまく行っており、客も楽しそうに見てくれている。ただひまりはまだ来ておらずそこだけが気がかりだった。仕事が忙しいとか私のことが嫌いなのかとか不安なことばかりが浮かび上がってくる。

「シンデレラ、貴方は何で可哀想なの。貴方は美しいのだから王子様と結ばれるべきだわ。」

「王子様?私に王子様なんて釣り合いません。それに私は舞踏会に出られないんです。」

「可哀想なシンデレラ、私のいう通りにすればきっとうまくいくわ。私が魔法をかけるからかぼちゃの馬車に乗って舞踏会へ行くのよ。」

妖精はそう言ってどこかへ去っていく。蜜柑もとても様になっており自然に話が進んでいった。私達は劇の初めの頃は全員初心者でグダっていたというのにかなり成長した。

そしてここからはシンデレラ役である私の最初の見せ場だった。

ここでシンデレラは王子様に見つかり一緒にダンスを踊ることになる。しかし十二時に近づいた時シンデレラはガラスの靴だけを残して去ってしまう。それを王子様が見つけて何とかシンデレラを探そうとするパートだ。

「おお、シンデレラよ。君はどうしてそれほど美しいのだろうか?よければ私と踊ってはくれないだろうか。」

「ええ、喜んで。」

シンデレラはドレスの裾を軽く持ち上げてお辞儀をする。ここからはシンデレラと王子様のダンスパートだ。

王子様役の楓先輩は本当にかっこくて王子様そのものだった。楓先輩は急遽参戦したというのにあまりにも自然な演技で劇に吸い込まれるようだった。

それにしても楓先輩は学年が違うため、本当は出られなかったが私達全員で頼み込んだことで何とか特例で出してもらえた。

シンデレラと王子様のダンスパートはとても優雅でお客様もとても盛り上がる。ここは苦手かつ一番大事な所であり、一番練習した。私は緊張のあまり何度もりきみそうになるがその度に楓先輩は微笑んでくれる。

『ガーンガーン、ガーンゴーン』

「あら、もうこんな時間なんて。それじゃあ私はこれで。」

「待ってくれシンデレラ!もう少しだけ一緒にいてはくれないか。」

十二時になって魔法が解けそうになったシンデレラは急いで舞踏会を抜け出した。王子様は必死にシンデレラを追いかけるが見つけることはできなかった。

ここで一度この場面は終わり次の場面に切り替わる。

次は王子がシンデレラが落としたガラスを元にシンデレラを探すシーンだ。

このシーンは途中まで出番はなく、私は舞台裏で休むことにした。舞台裏に行くと真っ先に蜜柑がやってきて手を握ってくれる。やっぱり蜜柑の手は温かくて安心する。

「お疲れ咲。やっぱり咲の演技はすごいね。みんな楽しそうに見ていたよ。」

「ありがとう。でもひまりがまだいなくてどうしようかなと思って。やっぱり私は嫌われちゃったのかなって。」

どうしても嫌な想像をしてしまう。そう思うと頭の中が真っ暗になって何も考えれなくなる。

「咲の気持ちも分かるけど今はひまりを信じてあげて。咲はただひまりに届くような最高の演技をすれば良いから。」

そう言って蜜柑は拳を差し出す。

蜜柑は私が困った時にいつもこうやって隣にいて安心させてくれる。だから私は蜜柑を好きになったんだ。

「ありがとう。少しは勇気できたよ。それじゃあ私は行ってくるから。」

「頑張って。裏で私達全員で応援してるから。」

私は蜜柑に手を振ってまたステージへと向かった。

この劇を成功させて絶対にひまりに届けてみせる。そしてひまりこの想いを伝えたい。

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