第83話 冬ブロック3人衆が攻められる配信
----冬ブロック3人衆との、攻撃側と防御側を交代にやる模擬戦。
冬ブロック3人衆の攻撃を、土壁をダイヤモンドにするという方法で乗り切った私、錬金術師のススリア。
続いて、私側の攻撃になったのだが----
「(見られてるよなぁ~)」
と、私は注がれる視線をひしひしと感じ取っていた。
訓練中だった騎士団員たちも、私達、ひいては私の行動を事細かに観察されている事に気付いたのだ。
見られているというべきか、参考にされているというべきか。
----下手な行動が出来そうにないなぁ。
ここで思いっきり、力任せの攻撃を行うという戦法を取ったとしよう。
そうしたら、「私なら今の攻撃に耐えられますが!」というような力自慢が出て来そうだ。
一方で、目にも止まらぬ速さで一瞬で勝負をつけるという戦法を取ったとしよう。
そうしたらそうしたらで、「いま何をしたのか、もう少し分かりやすく教えてくれませんか?」などと行列が出来そう。
なにせ、この道場は、「私に指導して貰えるかもしれない」というお題目で、シュンカトウ共和国の騎士団長が用意した場所だから。
ここに居る全ての人間が、私の師事を得たいと思っている……そう言っても良いだろう。
「(ちょっと大げさかもしれないけど、なんか視線が見たことがある視線なんだよね……)」
----そう、これはアレだ。
ベータちゃんが、私を持ちあげるときに見るキラキラした視線!
あの視線には、それなりのモノで応えないといけないと思わせる、ベータちゃんの信頼感マックスに似たなにかを感じる!
「(ただドラゴンゴーレム作りが上手く行ってない鬱憤を晴らしに来ただけなのに、面倒ごとに巻き込まれてたまるモノですか)」
という訳で私は、そういう事情も鑑みて、行動を開始した。
3人衆が私の攻撃を待ち構える中、私は懐から3つの球体を取り出す。
そして、ぽいっと、私の足元に落とす。
「----速攻錬成『ゴーレム・クリエイト』」
3つの球体は、私の錬金術に呼応し、周囲の地面を吸収して、すぐさま3体のゴーレムが出来上がる。
そして、そのゴーレム3体を見て、3人衆も、そして観察していた兵士達も驚いているのが分かった。
----なにせ、3人に似せて作ったからだ。
ゴーレム作りは、私の中でも得意分野。
いつもゴーレムコアをいくつか持ち歩いており、こうして目の前の相手に似せた姿にするなんてのは、目をつむっても出来る。
ただし、あくまでも似せただけ。武器などは変えている。
敢えて3人とも、だ。こういう進化の姿もあるよ、という意味で。
ケンタウロス族のスグハに似せた、ゴーレム・タイプ『走』。
スグハと違い軽装の鎧で防御面はほぼゼロである。武装と言えば、腕と脚に大きな球体型の物体を取り付けた事だろうか。
羊獣人族のイボークに似せた、ゴーレム・タイプ『羊』。
大剣をふわもこの毛で作ったイボークと違い、こちらは羊の毛を杖のようにして加工して2本持たせている。そして杖の水晶の代わりに、もこもこの毛が乗っかっているようなデザインとなっている。
最後にダークエルフのスルーヨに似せた、ゴーレム・タイプ『黒』。
魔導弓なのはこちらも同じだが、その他に背中に大きな箱状の機械を背負わせており、足元の靴も少し調整して作り出している。
「このゴーレム達は、君達の可能性の1つ。こいつらに成れとは、私は言わない。
----しかしながら、1つの戦法としてこういう形もある、くらいに考えてくれればいい」
私がそう言い、3人衆は頷く。
そして、私は3体に行動の指示を出す。
『走、行動開始』『羊、行動開始』『黒、行動開始』
3体は機械的にそう言うと、それぞれ与えられた行動を開始する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「「「----とっ、飛んだぁ?!」」」
冬ブロック3人衆、そして兵士達がまず驚いたのは、スルーヨをモチーフにした『黒』の行動。
『黒』の靴が淡く光り輝くと、そのまま空高く浮遊したのである。
空に陣取った『黒』、高度を確認すると、魔導弓を構え、地上に居る3人に向かって、魔導弓で大量の弓矢を弾幕のように放つ。
「----ガードだ!」
盾職であるスグハが金属鎧と、取り出した盾で上空から降り注ぐ大量の魔力の弓矢をガードしていると、続いて『羊』が行動を開始。
杖を前に構えると、もこもこの毛が周囲に飛び散って、そのまま勢いよく3人衆に向かって行く。
『----爆破』
----どかあああああんんっ!!
「「「きゃあ!?」」」
自分達の近くまで、高速で飛んできた毛。その毛が急に熱を帯びて、そのまま爆破。
盾で構えていたはずのですら吹き飛ばし、スグハと、その後ろで魔導弓で『黒』を撃ち落とそうとしていたスルーヨも吹き飛ばして、ノックダウン。
「2人ともっ! ----こうなれば、一矢報いてっ!」
そう言って、イボークが大剣を前に構えての、突進攻撃。
これに対処したのは、『走』。『走』はすぐさまイボークの前に移動すると、両手を前に出す。
----ぬるんっ!
「なっ----!」
攻撃していたイボーク、しかしながら大剣は『走』の手によってあらぬ方向へと弾かれる。
そして、軽くジャンプしながら----
『----処理実行』
----そのまま、足で蹴り飛ばしていた。
『『『処理完了。タスク終了』』』
「お疲れ様~」
と、私はそのまま、ゴーレム達の身体を土へと戻して、コアを回収する。
「----はい、という訳で私の勝ちですね」
さぁ、とっとと反省会&いまの状況の説明タイムで、サクッと終わらせちゃいますぞ。
 




