第82話 冬ブロック3人衆が攻めて来る配信
グラウンドの一角を使わせてもらい、私と冬ブロック3人衆は模擬戦を行う事にした。
「何事か」と兵士達が戸惑いの表情で見られる中、私達が行う模擬戦の内容は、攻防戦。
お互いに攻撃側と防御側を交代交代でやり合うという、闘いよりも純粋に戦力確認のための戦いである。
ルールとしては、お互いに5分ずつ。
時間が経ったら攻撃側と防御側を交代する、という感じだね。
ちなみに、この戦いは配信映像として、現在進行形で配信中。
最近、私自身は配信をしてないんだけど、ガンマちゃん主導で色々な配信をやってくれているらしくて、安心である。
持つべきものは、映像関係が得意なゴーレムである。
この戦いに関しても、後でベータちゃんの方で映像編集で見やすく加工してもらう予定だし、本当にベータちゃんに感謝である。
「まずは、そちらからやってくれ」
「「「了解しました!」」」
私の指示に従って、3人衆は戦闘配置につく。
一番前に突進担当のイボーク、真ん中に盾職であるスグハ、そして一番後ろに弓で打つスルーヨ。
お手本通りすぎる布陣だが、戦闘に置いて定石というのはなにも間違ってはいないし、これで良いのだろう。
私個人としては、面白みに欠けると思うんだけど、戦闘で面白みなんて必要ないしな。
----ずんっ!
そんな事を考えている間に、イボークが攻撃を開始する。
自分の毛を使った大剣を前に構え、そのまま戦車のようにこちらに向かって突進してきたのである。
防御力はある代わりに、全身を覆う大量の毛を捨て去ったためか、イボークの走りは冬ブロックで戦った際のスグハと同等レベル。
つまりは、めちゃくちゃ速い足で、私の方へと突っ込んでくる。
「(真っすぐ突っ込むだけなら、対処も簡単……?!)」
そう思っていたら、イボークは地面に大剣を突き立てて、一瞬で地面をモコモコの地面へと変える。
そして、その変えた地面をジャンプ台として、大きくジャンプ。
直線的に迫って来るのかと思いきや、いきなりの方向転換に驚いていると、後ろで控えるスグハとスルーヨの2人も行動を開始していた。
スルーヨが魔導弓を用いて、火と風の魔力で出来た、大量の弓矢を放って来た。
それに関しては想定内で驚きはなく、驚いたのはスグハが鎧の中から弓矢を出して、こちらに放って来た事だ。
スグハが放って来たのは、折り畳み式の簡易ボウガン。
錬金術を用いて速射性、つまりはスピードを向上させていたらしく、スルーヨが放った魔力の弓矢よりも速く、こちらに向かって来ていた。
「面白いっ……!」
私はそう言って、グラウンドの地面に手を付ける。
手を付けると共に、私は地面を錬金術で硬い土壁へと錬成させると、ボウガンを防ぐ。
そして、同じ土壁でスルーヨが放った魔力の弓矢を防ぐも、土壁は脆くも崩れ去ってしまった。
「そして、このタイミングで----」
私はすぐさま上を見て、こちらに向かって流星のように上から突っ込んで来ようとするイボークの姿を目にする。
そして、愛用の剣を持つと、こちらに迫って来るイボークにクリーンヒットでぶつける。
「ぐふっ……!?」
そして、イボークを2射目を放とうとする、スグハ&スルーヨの2人に向かって、狙って打つ。
狙いを構えていたスルーヨを、自らの背に乗っけたスグハはそのまま2人1組となって走って来た。
「(イボークという第一撃がダメだった場合、続いて後ろに控えていた2人が攻めに回る。そして、イボークも復活して攻めて来る)」
なるほど、良い布陣だ。
「攻防戦のルール上、こちらから直接攻めるのはルール違反。守りに徹するとしよう」
私はそう言うと、地面に手を付ける。
そして、今度は壁ではなく、ドームのような硬さへと構造を変化させる。
「----『秘術・構造変化』」
私がそう唱えると、土のドーム壁が、みるみるうちに綺麗な銀色----ダイヤモンドへと変化する。
これは前世の知識がある私だけが使える錬金術師の秘技であり、その効果は私が触れている間だけ物質の性質を変化させる。
今、私はただの土壁を、ダイヤモンド----この世で最も硬いとも言える物質へと変化させた。
そんな硬いダイヤモンドで出来たドームは、スグハの突進、さらにはスルーヨの攻撃にも耐える。
イボークの突進は、ちょっくらヒビが入って、驚いた。
「(ダイヤモンドに変化させたと言っても、あくまでもダイヤモンドに近いナニカ、ダイヤモンドもどきだもんなぁ)」
まぁ、そんな感じで私は3人衆の攻撃を防いで、3人衆の攻撃側のタイムは終わり、私の番になるのであった。
----さて、今回、私はどう戦おうか。普通に悩みますね。
(※)『秘術・構造変化』
錬金術の基本である『抽出』『合金』『付与』『錬成』のうち、『錬成』を極め、なおかつススリアの前世の知識があって完成した彼女独自の錬金術
その力は、触れた物の物質を変化せる事。今回で言えば、土からダイヤモンドへと変化する事で硬さを著しく上げるなど。これは前世の知識で、原子や分子などの科学を学んだからこそ出来る事であり、そのためオリハルコンやヒヒイロカネなどの前世の世界にはない物質を想像する事は出来ない
色々と応用が利くが、ススリアが力を注ぎ続ける事が条件であるため、彼女自身はあまり多用しない技である




