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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第78話 立ち上がれ! ラーメン魂! 配信

 ----バンッ!!


 ジュールが乱暴に、テーブルの上に見せつけるように叩きつけたのは、献立表であった。

 厨房スタッフ達から借り受けた、10日分の献立表。


「これを見るがヨロシ!」


 怒気を強めてそう宣言するジュールに、スタッフ達は恐る恐る確認する。


 自分達は毎日、完璧な仕事をしているという自負がある。

 だがしかし、それでもこうして怒られているという事は、なにかを見落としている可能性があるからだ。

 その確認のために、スタッフ達は確認するのだが----


「「「うっ、う~ん?」」」


 さっぱり、分からなかった。


 そりゃあ、そうだ。

 そもそも、自分達はプロとして、ちゃんと仕事をしているという自負があるのだから、そんなに簡単に「あっ、ここが間違ってた!」と見つけられる訳がない。


「……分からないとは、とんだ厨房係アル」


 しかしながら、ジュールはというと、スタッフ達が見つけられなかったことに、酷く落胆している様子だった。

 そして彼女は、献立表を、スタッフ達から奪い取ると----


「これが、あの2人が食べて来た料理で間違いないネ?」


 ----分からないことが信じられないという様子で、ジュールはそう尋ねて来たのだ。



 スタッフ達がコクコクと頷くと、ジュールは「はぁ~」と大きく溜息を吐く。

 そんなに分かるくらい、変だっただろうかと思っていると、ジュールは端的にこう宣言した。



「明らかに、足りないアル」



 ----量が、あまりにも足らない。

 ジュールはそう言葉にした。


 そんなはずは、ない。

 彼らは一流のスタッフであり、栄養学なんて軽くマスターしている。

 そんな彼らが、今更食事量を見誤るなんて、ないはず……。


「では、あの2人の食べっぷりを見ても、そう言えるアルか?」

「「「「そっ、それは……」」」」


 ぐうの音も出なかったとは、まさにこの事である。

 2人は、腹ペコで仕方がなかったとばかりに、がつがつと、かきこむようにして食べている。

 あれはまさしく、量が足らなかったという証拠だ。


「分からないのが不可解アル。2人は、盟主様より仕事が不十分だと言われていた、だったら食う暇も(・・・・)惜しんで(・・・・)、がむしゃらに働くのが普通アルよ」


 ----そう、ここ10日日間、正確には盟主より継承権の順位を変更すると聞かされてからというもの、シセン王子とシミット王女はあまり食べていなかった。

 

 ただ我武者羅に、フランシアに負けないように努力していて、食べる暇なんてなかった。

 夕食の時も、緊張で味なんてしないのだから、結果的に食べる量が減る。


 バランスの良い食事を、完璧な食事を作っていたとしても、きちんと(・・・・)食べていない(・・・・・・)のだから(・・・・)、意味がないのだ。


「なっ、なんで分かったんだ……?」


 どうしてなのかと、答えを求めるスタッフの1人に、


「肌さえ見れば、だいたい分かるでしょうネ」


 と、答えてしまった。


 なるほど、確かにそうだ。

 肌艶があまり良くないのが気になったジュールは、ここ10日分の献立表を確認し、相手の心理状態なども考え、これでは足りないという結論に達したのだろう。


「これが、調理系ゴーレムの凄さ……」


 ----完敗だった。


 ガクリと、崩れ落ちていくスタッフ達を尻目に、ジュールは今もなお燃え続ける火柱寸動鍋に近付く。

 そして、魔導コンロを止めると、火柱は徐々に小さくなっていき、最後には何事もなかったかのようになった。


「----よいしょっと」


 そして、ジュールは丼に、その寸動鍋に入っていたスープを注ぐと、先程と同じような手順で2杯のラーメンを作って行く。

 作り終えたラーメンを、食べ終えて、だがしかし物足りないという様子の王族の前に差し出した。


「実はあの火柱、フランベ----旨味を閉じ込めるのと似た効果のためにやっていたアル。ロックバードの手羽先スープは、超高温で一気に過熱すると、物凄い栄養を含んだスープになるネ。

 ----そして、これが完成系! 『一気に体力満点ラーメン』! 数日分の栄養不足を、これで補うネ!」

「「いただきます!!」」


 ----ムシャムシャ!!


 美味しそうに食べる様子を見て、満足した様子のジュール。

 そして、今度は崩れ落ちるスタッフ達1人1人に、『一気に体力満点ラーメン』を渡していく。


「これは、王子様達のラーメン?」「凄いわ、物凄い栄養を感じる……」「太りそう、でも美味しそう!」「あのロックバードに、ここまでのスペックが?!」「私達の完敗なのに、敵に塩でも送ろうというの……?」「そもそも俺達、アイツの敵ですらねぇよ」「完敗だもんな」


 まだショックから立ち直れない様子の、厨房スタッフの面々。

 そんな彼らに、「早く飲むヨロシ」と、ジュールは早く食べろと告げていた。


「料理のプロなら、仕事をしろアル。言っとくけど、私が作れるのはラーメン、それに合うサイドメニューだけアルヨ? 

 ----ラーメンは残念ながら、栄養学で見れば、毎日食べるような代物ではないネ」


 その辺は、ジュールも分かっている。

 商売として、全員が毎日のように詰めかけるのではなく、毎日同じくらいの人数がお客様として通って来るのを想定している。


「私は週に1、2回お客様として通ってくれるだけで、十分でヨロシ。しかしあんたらは、毎日、同じ人達の身体を支えるのが仕事ネ。

 そもそも戦うフィールドが違うアル。あんたらの今からの仕事は、私が作ったこのラーメンを食べて、調整するのが仕事ヨロシ。さぁ、飲んで、調整するための仕事を始めるネ」


 その言葉に、感動した様子の厨房スタッフ達。

 スープを飲んで仕事をするスタッフ達を見つつ、さらに貰おうと考えている王族を見ながら。



「(あぁ、これは良いアルネ。これで確実に、あのシセン王子とシミット王女の2人は、うちの常連さんになったヨロシ。それに、厨房スタッフ達もそうだと思うアル。

 あの2人は王族! だとしたら、多少利益率高めの高級ラーメンでも買ってくれるアル。そして、『王族が通う食堂』という名目がつけば、私のお店に、王族目当ての客も来るネ!

 ススリア代表に非道な注文をつけたんだから、このくらいしてもらわないと、割り、合わないアル)」



 商魂(たくま)しい考えを見せる、ジュールなのであった。




 その後、シセン王子とシミット王女の2人が食べた、ロックバードの手羽先を使った『一気に体力満点ラーメン』は、その作る際のインパクトの大きさもあり、食堂の人気メニューの1つになるのは、また後の話。

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