第76話 燃え上がれ! ラーメン魂! 配信
シュンカトウ共和国の城、そこの厨房は常に戦場だ。
王族という高貴な貴族を相手に、超一流のスタッフが、超一流の食材と技術を用い、超一流のおもてなしを行う。
その緊張感は常に感じており、一日たりとも、一食たりとも気が抜けない。
そんな物凄い緊張感を常に感じている、王家の厨房。
しかし、いまその厨房では、そんな強い緊張感を常に感じているようなスタッフ達ですら、感じたことのない緊張感にあった。
「ふむふむ……なるほど、こういう感じでヨロシなのか」
新鮮な調理場の机の上に置いた、ここ10日分の献立表を確認する4本足の謎のゴーレム。
そのゴーレムは、王家とも強い結びつきがあるドラスト商会が新たに仕入れた、自動調理型ゴーレム。
ジュールという名前だったそのゴーレムは、人間の、しかも超一流の人間のみが入ることを許された厨房に入るやいなや、料理長に直談判。
「----すみませんアル。今から王家2人に、最高の料理を作るから、厨房を貸すヨロシ」
などと言い、料理長からの許可をあっさりと得て、献立表を譲り受けると、1枚1枚吟味し出した。
そして、後ろにはそんなジュールが連れて来た王族が2人。
第一王子のシセン王子、そして第一王女のシミット王女。
2人の王族が、訳が分からないという様子で、椅子に座り込んでいた。
いきなり厨房に入って来た、料理を作るゴーレム。
そして、そのゴーレムが連れて来た、2人の王族。
今までにない緊張感でスタッフがどうするか迷う中、直談判を快諾した料理長だけがニヤリと笑っていた。
「ちょっと、料理長! なんで笑ってるんですか!」「そうですよ、ゴーレムに料理なんて出来る訳ないでしょ!」「こんなん越権行為ですよ!」
スタッフ達が、注意しない料理長に文句を言い始める中、料理長は「黙りなさい」と一言告げる。
「「「「----?!」」」」
「あのゴーレムの料理スキルは見ておいた方が良い。君達の参考にもなるだろう」
そう言って、腕を組み、ジュールの姿を観察に入る料理長。
料理長の指示なら仕方がないとばかりに、スタッフ達も同じようにジュールの姿をチェックし始める。
「料理を作るゴーレム。果たして我々と肩を並べるだけのモノが出来るのか、出来ないのか。
新たな時代の幕開け、この目で確かめさせてもらおう」
料理長がドヤァと上から目線でそう言い。
あとで、その調理法に困惑するのは、もう少し先の話だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
献立表、そこには2人のここ10日分の食べた料理が記載されている。
流石は王家のシェフといった感じで、使う食材は一級品、栄養バランスも完璧。
王族という高貴な方々に出す料理としては、なにも問題ない。
----そう、問題がない。
「それじゃあ!」
----ドンッ!!
【アイテムボックス】から専用の寸動鍋を取り出し。
「料理ってのは!」
----ザザッ!!
その専用の寸動鍋に、大量の水を汲み。
「つまらないアルヨ!」
----ボゥッ!!
魔導コンロに火を点ける。
「さぁ、調理開始アル!」
まずジュールが取り出したのは、ロックバード。
岩山に生息する鋼のように固い翼を持つ鶏で、スープにすれば深い味わいの出汁が出るが、それ以外はあまり価値のないとされている鶏である。
ジュールはそんなロックバードを解体し始め、その中から手羽先を取り出すと、骨に沿って包丁で切れ込みを入れつつ、関節で半分に切り落とす。
水で良く洗い、血合いや汚れを取り落とすと、そのまま手羽先を鍋の中に入れ始めた。
「手際が良いな……」
料理長がそう呟いてしまうほど、ジュールの手際は非常に良かった。
1つ1つの手順が高い技術力で行われており、そして何より手際が良い。
スタッフ達も真似したいと思えるほどの手際の良さに、感嘆している中。
「----行くぞ、ラーメン魂!」
ジュールは解体しておいたロックバードの羽を、ていっと魔導コンロの火の中に突っ込んだ。
「「「「「はっ?」」」」」
----ドゴォォォォォォォッッ!!
途端に魔導コンロの火が暴走し、物凄い火炎柱となって、お鍋を丸ごと火が覆い包んでいた。
「ふぅ……」
額に流れる汗……はゴーレムだからないのだが、それを拭く仕草をしたジュールは、サッと【アイテムボックス】の中から別の、完成しきった寸動鍋を取り出して、火にかける。
軽く火を通して温めたスープを丼に入れると、鍋をしまって今度は麺をゆで始める。
----その間も、隣では物凄い勢いで火が燃え続けていく。
麺をサッと茹でたジュールは、その麺をスープが入った丼に投入し、ササっと煮卵やネギなどのトッピングを始める。
そして、もう1杯の丼も、いつの間にか完成させたジュールは、出来上がった2杯のラーメンをお盆の上に載せて運ぶ。
「さぁ、完成!」
----どんっ!
困惑しっぱなしのシセン王子とシミット王女の2人の前に、2杯のラーメンを置くジュール。
「この私渾身の一皿! 『カタ麺豚骨スペシャル』と、『やわ麺醤油スペシャル』!
----お上がりくださいアル! 王族共!」
「「「「「「いや、それより火柱! 火柱!」」」」」」
とんでもない調理をするジュールに、誰もがツッコまざるを得なかったのであった。




