第61話 ドラゴンの卵を調査をしちゃうぞ配信
イスウッドへと帰って来た私は、早速、炭酸発生魔道具を、作り上げておいた。
ただ液体の中に炭酸の泡を生み出す魔道具の原型を作るのに、3日。
そこからさらに2日かけて、液体の中の炭酸量の調整が出来るようにして、魔道具を完成させておいた。
5日ほどで魔道具を完成させた私は、発注数である残り119個の作成を、タラタちゃんに振って置いた。
既に魔道具は完成してあるし、あとはそれをタラタちゃんが分析して作るだけ。
『弟子に魔道具の作成をやらせる』というのは珍しい事ではないので、遠慮なく仕事を押し付けられたので、満足である。
そんなわけで速攻、炭酸発生魔道具を完成させた私は、優勝賞品であるドラゴンの卵の調査に取り掛かったのだけど……。
「はぁ~っ……」
調査結果を見て、私は溜め息を吐いていた。
「----大きな溜め息、ですね」
美しい銀の鎧を着た弟子、フランシアさんは私を見ながらそう言った。
デルタちゃんによれば、フランシアさんは課題として与えておいた体中剣を、ほぼ完全に会得できたらしい。
さらには、魔力武装も限定的ながら出来るようになったらしく、「そろそろ新たな課題を与えてみては?」とデルタちゃんから打算されてるくらいである。
「どうかしたんですか、師匠?」
と、フランシアさんは溜息を吐く私の懐を覗き込み、ドラゴンの卵を見る。
「それって確か、師匠が大会で優勝して手に入れたドラゴンの卵でしたっけ?」
「えぇ、ただいまドラゴンの卵の調査中です」
ちょっとドラゴンで確かめたい事があったのだけれども、思ったよりも難解なのだ。
「----というか、よくよく考えた結果、私はドラゴンの卵の孵化の方法とか知らなかったんですけど」
このドラゴンの卵、どうやったら孵化できるんだろう?
温める? 燃やす? 埋める? 凍らす?
あぁ、もう! ちゃんと聞いとけば良かった!
ドラゴンって有名な魔物ではあるけれども、その分、情報とかに規制がかかっているから、その生態とか全く分からないんだよ。
配信とか、図鑑とかに、そういうのが載ってないから分からないんだよ……。
「あぁ、いったいどうすれば……」
「つまり、ドラゴンの卵の孵化方法を教えて欲しい……そういう事ですか?」
「----? まぁ、そうだね」
「そういう事でしたら話は速いです!」
ガバッと、私の手を取るフランシアさん。
「ドラゴンの卵の孵化の方法が分からないのでしたら、それを知ってる人に聞けば良いのです!」
「知ってる人?」
「そう、私にはその伝手があります!」
キラッと、フランシアさんは笑みを浮かべ----
「ドラゴンを輸送に使うドラスト商会なら、ドラゴンの孵化の方法なんていっぱい知ってるに違いないです! という訳で、一緒にシュンカトウ共和国、私の故郷に行きましょう! 善は急げ、です!」
「はいっ……?」
という訳で、なんか私、次はシュンカトウ共和国に行くことになったんですけど……なんで、こうなったんだろう?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「----という訳で、私は今度はシュンカトウ共和国に行こうと思います」
私のその言葉に、ベータちゃんは「へぇ~、そうなんですね」とジト目で応えていた。
「ススリアさんってば、またしてもこの自分を置いて、このイスウッドの街を離れてしまうんですね。こんな短期間に、自分達との交流を抑えてまで……うぅ、自分、泣けてきましたよ……」
「うぐっ……そう言われると……」
ベータちゃんの言葉に、反論できない……。
確かに、実家を放っておいて王都の『錬金術師大会』、さらにはシュンカトウ共和国と、短期間に色々行くのは……ほんのちょっと、ベータちゃん達に悪いかもしれない。
「すっ、済まないとは思ってるよ。でもさぁ、シュンカトウ共和国に行くにはドラゴンの卵を孵化させるためであって、そしてあら----」
「----えぇっ、分かっております」
ベータちゃんはフフッと笑いながら、私の方に手を伸ばす。
「自分は、ススリアさんに作られたゴーレムなんだから、ススリアさんのやりたい事をサポートするのがお仕事! ススリアさんのために役立ち、ススリアさんのために仕事を手伝い、ススリアさんのために戦闘を行う!
----それこそが、ススリア製ゴーレムの役割なのですから」
ベータちゃんの顔で笑いながら、彼女は手を差し伸べて来る。
「えぇ、そうだな。まぁ、今度はちゃんとお前の本体にも挨拶に行くから許してくれ」
「ふふんっ、大丈夫です! 自分は常にススリアさんの近くにいるのですから! ----じゃあ、あとで謝っておいてくださいね!」
すーっとベータちゃんが瞼を閉じると、「はっ!?」とベータちゃんは目を覚ます。
「まっ、マスター?! 私いま、家事をサボってました?!」
「大丈夫だよ、ベータちゃん。ちょっと喋ってただけだから」
「はぁ……それなら、良いんですが……」
ベータちゃんは納得すると、そのまま家事に戻っていった。
「また一緒に話そうね。----なぁ、【アルファ】」
 




