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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第55話 秋ブロックの勝者は、面倒臭い魔女だった配信

 ----『錬金術師大会』3日目。


 王都にある多目的ドームには、各4ブロックを勝ち上がってきた4人が会場に立っていた。



『この伝統ある第8回『錬金術師大会』も、遂に決勝戦を迎える事となりました。果たして本選出場者256名の頂点に立つ錬金術師は誰なのか!』


 司会の声が響き割らると、会場に居る人々、そしてこの配信を見てくれている視聴者達が大きな歓声を上げていた。

 そして、司会の人は勝ち上がった4人をそれぞれ紹介していく。


『----春ブロック優勝者、錬金術師の弟子タラタ! 前大会優勝者、薬師のチアンを下した彼女に、もはや敵は居ないのか!』


「優勝して、師匠にドラゴンの卵を献上するのであります!」


 エルフにして、私の弟子である彼女がそう堂々と、宣言する。


『---夏ブロック優勝者、王都セイサ工房所属・錬金検査術師メキス。『錬金術大会』3回優勝の実力者、今日もその瞳は優勝を狙ってるぞ!』


「私の名前はメキス。この第8回『錬金術大会』を優勝する、ただの錬金術師」


 兎獣人ながら、ドラゴンの瞳を持つ独特な雰囲気を漂わせるメキスは、静かにそう宣言した。


『----秋ブロック優勝者、有名になりたい森の魔女【スタダム】。静かな森に住みながら、有名になるチャンスを今か今かと狙っているぞ!』


「遂にっ! 遂にここまで来た! ----そう、ここを勝って、明日から私は有名人(スター)!!」


 フード越しでも分かるくらい、メラメラと闘志を燃やす魔女が、そう威勢良く宣言する。

 ……彼女が私が冬ブロックを行っていた裏で勝ち上がった選手か。


 魔女ってのは、森や沼など静かな場所で暮らす、特殊な錬金術師だ。

 彼女達は代々受け継がれる錬金術を用い、現代では伝わっていない偉大な錬金術の使い手である。

 秋ブロックは私も見ていないから、彼女の実力は完全に未知数である。


『----冬ブロック優勝者、辺境イスウッドで暮らす錬金術配信者ススリア。配信にて、斬新奇抜な魔道具を作り上げる彼女は、今日はどのような魔道具にて皆を驚かせるのか!!』


 『はい、どうぞ!』と魔道具【音波増幅器(マイク)】を私に向ける司会者。

 ……え? 嘘でしょ?


「これ、なにか言わないといけない流れ?」


 というか、私の紹介、めちゃくちゃハードルが上がりすぎてない?

 なんか皆を驚かせる何かを作り出さないといけない流れ、普通に嫌なんだけど……。



『さて、決勝戦! 春夏秋冬の各ブロックを勝ち上がった彼女達が最後に挑みしお題の発表になります!』



 ----さて、どうするつもりだろう?


 私は最後のお題を、そう身構えていた。

 なにせ、錬金術師の大会に出たはずなのに、やったのはただの魔物討伐と、対人戦だけだから。

 なんなら、思いつかなかったからと言って、4人それぞれに武器を構えさせて品評会とかやってもおかしくないくらいだし。


「……まぁ、なんだって良いけど」

「随分と、余裕そうですね」


 と、なかなか発表されないお題を待っていると、いつの間にか近付いて来ていたスタダム、秋ブロックの優勝者たる魔女さんに話しかけられていた。

 彼女はフード越しでも分かるくらいの敵意と共に、私をビシッと指差す。


「錬金術師系配信者ススリア! 私は必ず、この大会に優勝して、スターダムへの道を駆けあがって見せるのです!」

「……魔女って、そんなギラギラしてたっけ?」


 私は、ギラギラと有名になりたい欲望を隠さない魔女、スタダムにそう問いかける。


 古の時代の錬金術を、血縁関係にて細々と繋ぐ魔女。

 彼女達が作る魔道具は『どんな相手だろうとも必ず落とす惚れ薬』や、『どんな傷だろうともたちどころに治す万能薬』など、私達が作る魔道具とは明らかに桁違いの性能を持つ。

 そしてそれらは、理屈や理論などなく、"魔女の血縁のみが作れる"という制約でのみ作れるもの。


 魔女はそのあまりの性能が良すぎる魔道具を作れるために、"王族や貴族などの有力者に飼い殺される"か、"飼い殺されるのを恐れて森や沼に引きこもる"のどちらかだと思っていた。

 だからこそ、こうして大会で普通に出ているのが、有名になろうとしているのが、分からんのだが……。


「ふっ、これだから素人は……私達を分かっていないようですね」


 彼女はそう言って、フードをふぁっと取りながら、



「----魔女(わたし)だって、チヤホヤされたいんですよ!!」



 ……聞いて、損した。


「私だって、配信したい! モテたい! チヤホヤされたい~!!」

「いや、それじゃあすれば良いじゃないですか……」


 私が正論をかますと、彼女は、途端にフードを被り直し、もじもじとした様子を見せる。


「……いや、もっとこう、"私は有名になりたくないのになぁ~! でも、仕方ないかぁ! だって私だって凄いんだから~"みたいに、自然と有名になりたいというか……」

「こいつ、面倒臭いですよ!?」


 有名になりたいけど、その過程(プロセス)にこだわりたいとか、面倒臭いの一言に尽きるじゃないですか!

 こいつ、魔女じゃないよ! ただの痛い女錬金術師だよ!



『はい、決勝戦のお題は、"子供でも飲めるポーション"! "子供でも飲めるポーション"です!

 効果は高い、しかしながらマズいでおなじみの、このポーションを子供でも飲める美味しい薬に変えていただきます! ただし、薬効はそのままです!

 ----子供審査員達、そして審査委員の人達からの得点が、もっとも大きい人が優勝となります!』



「子供でも飲めるポーション、ね……」

「ふっ、勝った! 錬金術師系配信者ススリア、あなたの人気も、私が優勝して、全てかっさらって、有名人の仲間入りです!」


 「オーホッホホホ!!」と、なんか無理してる感じの高笑いと共に彼女は、自分の製作スペースに帰って行った。


 ……ほんと、ろくな出場者いないな、この大会。

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