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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第54話 酒場で、人生相談する羽目になったんだが配信

「「「----すみませんっ!! 私達に、錬金術を教えてください!」」」


 冬ブロックという、錬金術師大会ならぬ武闘大会を制した私は、同じく決勝戦を戦った3人----羊獣人、ダークエルフ、ケンタウロスに詰め寄られていた。

 ----土下座で。


 冬ブロックに若干の不満を持った私は、タラタちゃんと一緒に泊まってる宿に直帰せず、近くの酒場で飲もうと決意したのだ。

 まぁ、明日は各ブロックの優勝者による決勝戦があるから、酔わないようにジュースで、だけど。

 そうして飲んでリフレッシュしようとした所、決勝で戦った3人に詰め寄られているという訳である。




 何でも私の宣誓----「あなた達が本当に錬金術師と言うのなら、種族としての特徴、そしてそれをさらに活かす魔道具で立ち向かって欲しかったです」というのに、いたく感動したらしく、今更ながら錬金術師として学びたいとの事。


「予選の課題はどうしたのよ、あの防刃手袋は」


 私がそう聞くと、3人それぞれに教えてくれたのだが----なんか、お悩み相談教室みたいになってしまうのだった。




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「私の毛で編みましたら、防刃くらいの性能が出て……」


 そう語るのは、羊獣人族の大男イボーク。


 羊獣人族とは白く綺麗な毛が特徴の獣人族なのだが、このイボーク、戦闘にしか興味がないらしく、わざとその毛を汚くするという手段を取ったのだ。

 毛が汚くなればふわふわの毛はゴワゴワとなり、鋼のような硬さになる----このイボークはそうやって天然の鎧を手に入れ、防刃手袋もそのゴワゴワの毛で手袋を作ったのだそう。


 錬金術なんてまるで使っておらず、ただ素材が良かったので合格したパターンだったのだ。


「ふむ、それで攻撃手段がタックル?」

「一番、楽なんで……」


 まぁ、硬い鎧を身を包んだ大男が突っ込めば、たいていの魔物は倒せるだろう。

 ただこれは、あくまでも格下、それも相手が飛ばない、泳がないなどの地上で居るという前提での作戦だ。

 一方的に距離を取った上で、遠距離攻撃を受ければやられるのは目に見えている。


「だから錬金術で、俺のこの毛皮をもっと強くしようと思って……」

「いや、それは難しいな」


 「どうして?!」というイボークに、私は彼の毛を触りながら----


「この毛は、今は確かに硬い。しかしながら錬金術を使おうと思うと、この毛を綺麗にした後、柔らかくなった後でしか加工できない」


 汚れまみれの毛では、錬金術を正しく付与できない。

 かといって錬金術を正しく付与するには、毛を洗って柔らかくするしかない。

 そうして柔らかくした毛を錬金術で付与しても、いまと同じか、それよりも硬いくらいにしかならないのだ。


「イボーク、君の毛は確かに強い。しかし、錬金術師は素材に囚われすぎてはいけない。

 ----"その素材を、最高のモノに仕上げる"。それが錬金術だけど、素材には限界がある」

「限界……」

「それを見極めるのが、錬金術だ。----そう言われて、覚悟はある?」


 私がそう言うと、イボークは強い決心を決めた瞳でこちらを見ながら。



「ありますっ!!」



 そう強い口調で、イボークは宣誓した。


「----よろしい。ならばその毛を洗って来てください。

 今までの強さの自信の源であるその毛を、柔らかくして捨てる覚悟があれば、私も教えましょう」

「----!! ありがとうございますっ!!」

「君に必要なのは、素材に対して向き合う事。柔らかくして、その素材の良さをしっかり理解して学んできなさい。そうしてあなたが理解したその時にこそ、錬金術師として師事するか決めましょう」


 「早速、洗ってきます!!」と、彼は酒場を走って出て行ったのでした。


 ……うん、あの汚さなら、毛を洗ってもふわふわには戻らない、つまりは絶対に無理。

 これで、1人目クリア~。


「じゃあ、次はスルーヨ。あなたの番」




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 スルーヨは、ダークエルフと呼ばれる種族だ。


 タラタちゃんのような普通のエルフは、森の中で暮らしているのだが、彼女達ダークエルフは山で暮らしている者が多い。

 険しい山でもなんなく登ることができ、なおかつエルフと同じく器用さも普通に高い。

 彼女はその2つを応用し、険しい山で見つけた特殊な糸を、高い器用さで編み上げる事で、予選突破したとのこと。


 とは言え、彼女の本分は『作成』ではなく、『戦闘』。

 錬金術は1つも出来ないらしく、私に弟子入りを志願したとの事。


「私は弓矢の技術に甘え、弓矢そのものを強くするという発想が出て来ませんでした!」

「なるほど、なるほど」

「なので、今後は弓矢自体を強化する----そのために、錬金術を学びたく、師事して欲しいと思います!」


 ----ふむふむ、なるほど。


「君は錬金術を分かっているようで、分かっていない」

「----!?」

「弓矢自体を強化する、それ自体は良い。しかし君には致命的に足りないモノがある」


 入手難易度が高い素材を取るための体力、高い技術力。

 彼女はかなり高いポテンシャルを持っているが、そんな彼女に足りないモノはずばり----。


「柔軟な発想力、だよ」

「発想力……」

「"今の弓矢では勝てない、だから強い弓矢に変える"。それ自体は良いけど、それってつまりは、"弓矢を強くする"ことに固執していると言える」


 私の言葉に、彼女はようやく気付いたらしい。

 ----そう、彼女は弓矢という武器に"こだわりすぎている"。


 弓矢さえあれば、例え神だろうと殺せると、そう思っているのだ。


「弓矢は強い武器だ。ただし、武器はそれだけではない。

 ----そんな君には、これを見せよう」


 私はそう言って、先程イボークに見せたのとは別のページを彼女に見せる。

 そこには大量の武器が載っているページだった。


「槍、剣、杖……。珍しい所で言えば鎖鎌やトンファーなどもある。

 弓矢がめちゃくちゃ強いのならば、こんなにも多くの種類が出るはずもない」


 そう、弓矢が強すぎるのならば、弓矢以外の武器なんてこの世界に生まれなかった。

 逆に言えば、弓矢以外にも、強い武器は山のようにある。


「弓を捨てろとは言わない。しかし、弓以外に得意な武器の1つや2つ、あってしかるべきだ。

 他の武器を知ればその武器の強みが見えて来て、弓矢に活かせるかもしれないじゃないか」

「----!? 弓矢に、他の武器の強みを、加える?」

「そう、それこそが錬金術師。"他のモノの良い所を見つけて、それを活かす方法を見つける"。----弓矢に固執してるだけでは、この世界は見えてこない」


 ----もし弟子になりたければ、他の武器の武術を、弓矢と同じか、ある程度極めてから来なさい。

 ----そうやって柔軟な発想力が身に着いた時にこそ、錬金術を教えましょう。


 私がそう言うと、「鍛錬に行ってきます!」と、彼女は酒場を飛び出して行った。


 ----これで鍛錬が終わるまで、彼女は弟子入りには来ない。

 あれほどの弓矢の射術を持っている彼女だ、同じほどの武術を極めようと思うと時間がかかるだろう。



「さて、最後はスグハ。君の話だ」




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 ----ケンタウロス族は、かなり特殊な獣人族。


 スコティッシュさんやイボークのように、身体全体に獣の特徴が現れているのと違い、ケンタウロス族は下半身にのみ馬の獣人的な特徴が出ている希少な種族だ。

 その希少さ故に、王都では彼以外にケンタウロス族は居ないらしい。


 彼はそのケンタウロス族の中でも槍に秀でており、現在はその槍の武術を活かして騎士団の一員として働いているんだそうだ。

 なにせ、走れば駿馬というべきトップスピードを持った彼が、槍で突進してくるのだ----普通に強いだろう。


「でもって、課題は騎士団の友達と一緒にやった、と」


 その友達も錬金術を少し使える程度で、師事してもらうには実力不足との事。

 そこで私に師事をして欲しいんだそうだ。


「----ふむ、スグハ君」

「はっ、はい! 覚悟は出来てます! なんなら、騎士団を辞めても良いくらいです!」


 やめてね、それ。

 それで騎士団を辞められたら、完全に私のせいじゃないですか。


「君に必要なのは、錬金術をやるという覚悟だ」

「かっ、覚悟はあります! だからこうやってお願いして!!」


 いいや、私が思うに、彼には錬金術の覚悟が不足している。


「私には、既にタラタちゃんという弟子が居る。そんな彼女ですら、私に弟子入りする際には魔道具を出して来た。----そう、自分1人で(・・・・・)作った(・・・)魔道具を(・・・・)、だ」


 スグハの話を聞く限り、彼は1人で何かを作ったという話は出てこなかった。


 予選課題も友達と一緒に、槍や服も騎士団から受け取ったモノ。

 彼には、自分1人で何かを作ったという感覚がない。


「錬金術師は、最終的には自分1人で考え、自分1人で作る職業。しかし君の言葉からは、私と一緒に錬金術をしたいという事しか見えてこない。それではダメなのだ。

 君は希少なケンタウロス族なんだろう? だったら、自前の武器くらい1人で作った方が良い。----"錬金術師が最も信頼する武器は、自分が作った武器である"」


 私はそう言って、彼に1枚の紙を見せる。

 そこには錬金術師として一番簡単なポーションの作り方が載っている。


「ここにはポーション、錬金術師としての初歩の初歩の品物の作り方が記載してある。とはいっても、錬金に必要な技術(スキル)も、それから道具も必要となってくる。

 ----これを君1人で作って見なさい。そして、店に置いて売るレベルになったら、見せに来なさい。そこまで出来て、ようやく錬金術師として師事しても良いか考えよう」


 私がそう言うと、スグハは「早速、やってみます!」と私から髪を受け取って、酒場を出て行った。


 ----実は彼に渡した紙のレシピは、ポーションづくりでも一番難しいやり方だ。

 その分、出来ればすぐさまお店におけるレベルのポーションが完成するが、その分、難易度は桁違い。

 1人で作った事がないと言っていた彼が出来るのは、数か月後の事となるだろう。



 さぁて、邪魔な3人に、難解なお題を出しておいたし、これでゆっくり楽しもうっと。

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