第52話 皆でマスターの活躍を同時視聴で応援しよう配信
「ベータと----」「同じくデルタの----」
「「マスター応援配信、はじめるよー(棒)」」
(※)『なんか、いきなり始まったぞ?!』『棒読みすぎて草ww』『ベータ&デルタの配信って珍しいよな』『というか、初めてじゃない?』『マスター応援??』
その日、ベータとデルタの2人は、辺境イスウッドから動画配信を行っていた。
配信内容はずばり、『マスターが王都で大会に出ているので応援しちゃおう配信』。
「この大会、第8回『錬金術師大会』に、我らがマスター、『あるけみぃ』様が本名であるススリアの名前で、参加しておられます」
「ですので、マスター大好きゴーレムである私達が、大会からの配信を見ながら応援するという配信です」
----同時視聴配信。
別の所が配信している映像を見ながら、あれやこれやと感想やら応援やらを行うという配信スタイルである。
(※)『というか、本名って言って良いのか?』ガンマ『配信に映る形で弟子たちが散々言ってますんで』『ガンマも来た?!』『ゴーレム全員で応援配信! これは勝った!』ガンマ『というか、2人は次に進んで』
ガンマはコメントで自分も居る事を見せると、2人に進行を進めるようにコメントで指示を出す。
指示を出された2人は「「了解」」と言って、配信を続ける。
「という訳で、今大会の配信を見て行くんですが、今大会は春・夏・秋・冬の4ブロックに分かれております」
「マスターが参加するのは冬。春と夏は前日に開催済み」
(※)『確か、春ブロックはタラタ、夏ブロックはメキスっていうのが優勝してたな』『タラタって全大会準優勝にして、現在は『あるけみぃ』の公式弟子の?!』『公式弟子ってなんだよww』『前回優勝者のチアン選手との決勝戦は白熱してたな~』『バカ野郎! その日の注目はメキス! 3連覇した錬金術師だぞ!』
コメント欄が白熱したのを感じつつ、ガンマは配信画面に前日の結果である春ブロック、そして夏ブロックでの結果を画面内に表示する。
【春ブロック 決勝『お題:農業している方のお助け魔道具』
優勝;錬金術師ススリアの弟子タラタ
夏ブロック 決勝『お題:斬新な虫除け魔道具』
優勝;王都セイサ工房所属・錬金検査術師メキス】
「あの収穫物を見極める魔道具、実に見事だったと思います。流石、マスターの弟子です」
「ベータ、あとでマスターに似たものを作ってもらいましょう」
(※)『収穫物を大きさや色付きで判断するって、斬新だよな~』『弟子のより、やっぱりマスターの方が欲しいよね』『作って勝ち上がった弟子、涙目ww』『夏ブロックの虫避けライターも良かった』『今年はレベル高いよな』『去年知らないので分からない勢』『明らかにレベルは上がってるぞ』『やっぱり、ドラゴンの卵がデカい』『ベータちゃん達の宣伝も大きいのでは?』ガンマ『それは……あるかも』『自覚あるんかい!!』
実際、ベータ達は宣伝しすぎていた。
自分達の創造主たるススリアが、大会で優勝して皆に賞賛されている機会が来たのだ。
宣伝して、この機会に知ってもらおうと思うのは当然の事だった。
「私、この機会にマスターの勝利を祝って、新作のケーキを用意しております。その名も、【ロールケーキ】でございます」
「私もマスターの勝利を祝い、【剣舞】を披露する予定です」
ベータはそう言って皿の上に乗せた、切り株上のロールケーキを画面上に見せる。
同じように、デルタは剣を使って、踊るように舞う剣舞を披露する。
(※)『ロールケーキ?! なんだそれ?!』『おいしそうっ!』『これ、木?』『木のように見えるけど、ケーキだからお菓子なのか!?』ガンマ『作り方は後で別動画としてご紹介いたします』『だれか剣舞にも触れてやれよ……』
そして、ベータとガンマは本題に入る。
「では、皆さま。そろそろマスターが出場している冬ブロックが始まりますので、視聴に入りましょう」
「マスターの活躍、みんなで見よう。ガンマ、よろしく」
(※)ガンマ『了解です』
と、ガンマの映像編集能力によって、2人の姿が小さめになって右下に行くと、配信画面の半分以上を覆い尽くすほどの『錬金術師大会』からの公式映像が現れる。
『では、冬ブロック! テーマは『厳しい冬、それでも頑張る冬』!
第1回戦は、討伐! ワイルドウルフを2時間でどれだけ討伐したかを競ってもらいましょう!』
「は?」
(※)『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』ガンマ『錬金術師の大会なのに、討伐?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』『は?』
そうして、マスターの活躍を応援するベータ達の配信は、錬金術師の大会なのに、いきなり魔物討伐をする様子を見せられて、困惑する映像が見られるのであった。
「いっけぇ! そこです、マスター! やっちゃってください!」
そんな違和感満載の大会を、ただ一人----討伐担当のデルタだけが凄い乗り気で、応援していたのだった。




