第513話 馬獣人曰く、激突は厄介な悪魔であるようです配信
【激突】の悪魔が居るとされる宝島へと向かう、俺達の船。
その船の操縦室に、密航者として潜んでいた馬獣人の女性ディープフェーブル。
俺はそのディープフェーブルから、【激突】の悪魔の情報を得る代わりに、一緒に激突女を倒すために同盟を組む事となった。
「それじゃあ私達は、普通に【激突】の悪魔と戦う。その際に邪魔せず、出来たら協力する。それで構わないで、合ってる?」
「えぇ。わたくしの狙いは激突女、ただ一人。わたくしの仕事の邪魔をしなければ、それで良い。その条件で、同盟を組みましょう?」
ディープフェーブルから出された同盟の条件。
それは、ディープフェーブルが【激突】の悪魔と戦う際に、邪魔をしない。たったそれだけの条件を守るだけで、同盟を組めるのである。
文字通り、破格の条件だと言えるだろう。
それはつまり、【激突】の悪魔に、このディープフェーブルは並々ならぬ恨みを持っていると言える。
「ちなみに、【激突】の悪魔とは、どういう関係なんですか?」
「激突女――カナエマスはわたくしにとって、目標ですわ」
「目標……?」
ぷるぷると、拳を強く握りしめているから、てっきり怒りだとか、憎しみ、恨みとかがあるのかと思いきや、まさかの目標だとは。
「激突女は、"他者の欲望を覗く事ができる"と言う能力を持っていますの。つまり、あの女の前で『頭に当たれ!』とか『足を怪我しろ!』なんて思ってしまえば、その狙いは見透かされて、全て避けられてしまいますの。その上、自分の視野の外からの攻撃も、欲望まみれの攻撃だと判断されて、攻撃を避けられてしまいますの」
「なにその、チート」
今までの"刀剣攻撃だけしか行えない、そして刀剣攻撃は無効化"という【闘争】や、"他者の頭に触るだけで、その相手の記憶から他人を使役状態で生み出す"という【狩猟】といったのとは、一線を画す、まさしくチート能力じゃないか。
相手の攻撃が来るのが分かっていて、その攻撃がどう来るかが分かっているからこそ、避けられてしまうとか、どういうヤツだよ……。
「それじゃあ、ヤツ目掛けてではなく、ヤツが結果的に死ぬような攻撃は? 例えば、宝島全体を巻き込んでの爆破で、とか?」
「無駄ですわ。彼女は他者の欲望を覗く事が出来るだけではなく、"他者の欲望を叶える"という能力もありますの。その能力を使って、『爆弾が爆発しなければ良い』という欲望を持つ誰かの願いを叶えて、自分は無傷ですみますわ。
ちなみに、他者というのは自分以外なら誰でも、それこそ虫でも、鳥でも良いですし、彼女を巻き込もうと思ったら、生物が本当に誰も居ない無人島を探すしかありませんわね。あっ、それと彼女は【アイテムボックス】の変位系で、ペットを数十種類飼っているので、その点も悪しからず」
いや、そんなのどうやって倒すというのよ、逆に……。
今の所、どうやって倒せば良いのか分からないレベルの情報がてんこ盛りで、こんなの弱点とかないじゃない……。協力があってもなかっても、こんな強敵、倒せるはずがないじゃないですか。
「しかし、激突女には唯一、弱点が、というよりも倒せる道が存在する」
「どういう道?」
私がそう聞くと、ディープフェーブルはゴホンッと、大きく咳払いをして。
「激突女に、素直に決闘を挑むのよ。
激突のカナエマス――魔王ユギーの五本槍にして、私が倒すべき目標としているアイツは、正々堂々と、お互いの合意を基に、そしてようやく挑むことが出来るの。
倒せない怪物から、倒す事が出来るかも知れない超人へと、ようやくそこまで落とし込む事が出来るのよ」
ディープフェーブルが語ったのは、悪魔退治には向かないだろう、そんな正々堂々とした道なのであった。
そんなわけで、ディープフェーブルが持っていた情報をまとめると、こんな感じ。
〇激突のカナエマスには、『他者の欲望を見る事が出来る能力』があり、こちらの攻撃を全て察知して避ける事が出来る。また、視界の外、または彼女を含む攻撃に対しては、『他者の欲望を叶える力』を使ってその攻撃を無効化する事が出来る
〇激突のカナエマスに攻撃を加えた場合、罰則として敗北する。例外はない
〇激突のカナエマスと戦うためには、彼女に正面から正々堂々と戦いを挑む。そこでカナエマスが戦闘の許可を出した場合のみ、欲望に関する能力は一旦無効化する事ができて、そこで初めて彼女と戦う事が出来る
〇なお、正々堂々とした戦いを挑もうとも、カナエマスは超人的な強さを持っている
……うーむ、聞けば聞く程、物凄くチートとしか言いようがないのだが?
唯一、この悪魔と戦う道は、正々堂々と決闘を挑む事。ただし、挑むだけではなく、それをカナエマスが受理するまで待つ事。
【激突】の名を持つからか、挑まれたら基本的に断らない性格らしいのだが、昔に決闘を挑むと同時に攻撃をして来た相手を、罰則として一瞬でやっつけた事もあるらしい。だからこそ、彼女がちゃんと試合を受けたのを確認してから、ようやく戦闘開始になるんだとか。
そして、そこまでお膳立てしてようやく戦う事が出来る、激突のカナエマス。
それでもなお超人的な性能を有しており、魔王ユギーに並ぶとも言われている実力者なんだとか。
……いや、試合とか云々の前に、島から出て行くことをお願いした方が良いかもしれない。
信じなきゃ、進まない!
明らかに怪しいディープフェーブルを
信じて、同盟を組むぞ!
ちなみに、ディープフェーブルは
「ディープインパクト」と
「オルフェーヴル」から来てますよ
ヴにするか、迷ったよ( ^ω^ )




