第407話 ススリアの秋、錬金術の秋配信
季節は、秋。夏の暑さも落ち着いてきて、イスウッドにも本格的な秋が訪れていた。
秋と言えば、色々ある。
たとえば、スポーツの秋。
夏のように暑すぎず、冬のように寒すぎないこの時期に、多くのスポーツを楽しもうという、時期。
たとえば、読書の秋。
秋は過ごしやすい季節なのだから、夜に明かりを灯して読書するのに最適という、時期。
たとえば、食欲の秋。
寒い冬を乗り越えるために冬眠する生き物がいるように、秋になると人間もまた寒い冬を乗り越えようと食欲という本能が活性化するという、時期。
たとえば、収穫の秋。
四季の中で一番食べ物を豊富に収穫できる、時期。
秋と言えば、色々ある。
色々あるのだが、今の私は――――
錬金術に、没頭していた。
「うーむ、反応なしか」
どうも、秋と言えば"錬金術の秋"の、錬金術師ススリアです。
先日、クリィム村に行った際に、タラッサ・ルミナスという神様から、神様の核とも言える神コアをいただいた。さらにこの神コアを使って、新たな神様を作ってくれとも頼まれた。
新たな神様の創造というと仰々しく聞こえるかもしれないが、実際はアレイスターやダヴィンチちゃんなどと同じく、魔物型ゴーレムを作るのと工程は一緒だ。違うのは、既に魂が入っているこの神コアを使わなければならない、という事。
これが、とーっても難しい。
要は、この神コアが納得する、新たな身体を作らなければならないという事。大量のポーションを使って自ら身体を錬成したタラッサは、ルミナス様が言うには、基となった神様は『母として全てを受け入れる神様』だったらしい。だからこそ、多くのポーションを自ら取り込み、そして自ら身体を構築したんだそうだ。
そんな彼女はいま、そのタラッサはイスウッドの教会にて聖職者の一員として、一生懸命働いている。本物の神様が教会で働くというのはどうかと思うが、タラッサ自身がその扱いを望んでいるのだから、彼女の好きに頑張ってもらう事にしよう。
そして、ルミナス様からもらったこの神コアは、【フルーレティ】という神様のコアらしい。
フルーレティというのは、前世の知識によると、とある上級の悪魔の名前である。なんでそんな悪魔の名前を知っているかと言うと、そのフルーレティというのを元ネタとした漫画キャラクターがいたからなのですが、どうやらこの世界のフルーレティという神様も、前世の知識にある悪魔と同じ能力を持っていたみたい。
フルーレティという悪魔の能力は、『仕事が速い』。
……嘘みたいな能力だが、そうとしか言いようがないのだから仕方がない。
どのような命令であろうとも、夜のうちに全てを片付けてしまうという、素晴らしき仕事遂行能力を持っている。それ以上の情報はなく、"夜までにどれだけの仕事を与えようとも解決する、仕事遂行能力が高いタイプ"なのか、"どんな命令であろうとも夜ならば自分の仕事能力を無限に遂行できるタイプ"なのかは意見が分かれるのだが、ルミナス様曰く、「とにかく仕事が速い」との事。
そんなフルーレティと、ルミナス様は親友であったと本人は言っており、
『私達は2人とも、仕事を遂行する事を誇りに思っているタイプでしたから、相性が良かったんです。だから、魔王ユギーに取り込まれる前に、頑張って回収しておいたんです。ちなみに、髪の毛は赤で、瞳の色は藍色でしたよ!』
と、自称親友であるルミナス様は、そう語っていたけれども、神コアを紛失してしまって、私にタラッサを作るきっかけを作った神様が言うセリフとは思えないのだけれども。
まぁでも、白髪赤目の事が大好きすぎる偏愛の神様のルミナス様が、赤髪藍色瞳というフルーレティの事を復活させたいと頼むというのは、それだけ2人には親交があったという事なのだろうけれども。
しかし、フルーレティという神様で分かっているのは、
『仕事が速い』。
『赤色の髪』。
『藍色の瞳』。
この3つだけでは、作れないよぉ~。
「せめて、この神コアと話す事が出来ればなぁ……」
しかしながら、私の目に映るのは、黄色い液体が入った瓶。ただ黄色い液体というだけで、「こうして欲しい」だの、「これは嫌だ」というような意見を言いそうはない、ただの液体。
今から作るのは、あんたのための、新しい身体だというのに、なんで教えてくれないんだか。しかも、気に入らなければその新しい身体に入らないどころか、破壊して来るのだ。神コアから、なにか衝撃波のようなモノを発して破壊してくるのである。
私が、フルーレティのために作り出した16個の素体。それは全て、破壊された。
場合によってはぶち切れ案件だが、私はこの破壊を通して、フルーレティが求める身体を探っていた。
男性型や女性型だの性別を変えたモノ、身長を変えたモノ、腕の長さを変えたりと、色々と用意しておいた。直接会話できないのなら、どこが気に入らないか、破壊によって教えて貰おうと考えたのだ。
足が短いのを破壊して、長い足は壊さなければ、長い足が欲しいという事が分かる。短い髪の頭は破壊せず、長い髪の頭は破壊すれば、髪の長さもだいたい把握できる。そう言った形で、このフルーレティが求める身体を1つずつ、根気よく作って行ったのである。
「さて、17回目の実験を始めましょうか……」
私はそう言って、フルーレティのための17個目の素体を作ろうとした時、スコティッシュさんから料理大会のお誘いを受けたのである。
……料理大会?
アイデアなどを練り直して良いモノとする
ブラッシュアップというモノがありますが、
ススリアが行っているのも、それに近いと思います
神様の身体を、ブラッシュアップ('ω')
 




