第403話 アルビノ大好きお母さん系神様と、会話しましょう配信(2)
ルミナス様の話によると、この世界は以前は神様が大勢居たそうだ。
八百万の神々――――そう言ってもおかしくないくらい、多種多様の神様がこの世界には居たんだそう。
魔物達も1種類ずつ、その力を与えられて強くなっていた。
魔物達を強くした目的は、自らの守護兵として採用する目的だったみたいで、魔物と神々はお互いに助け合いながら戦っていた。
そんな神々を滅ぼしたのが、堕落の魔王ユギー。
神様を滅ぼすだなんて、どこが"堕落"なんだよと言いたくなる私の想いも聞いて欲しいくらいだ。
堕落の魔王ユギーには、堕落の能力によって、神様を遥か上位の存在である神々の力を抑えるという能力があり、その力で多くの神々が弱らされ、そして消されてしまったのである。
そんなユギーの横暴を止めるべく、治癒神であるカンロ神様を始めとした神々が『研鑽の神アカデミア』という合言葉を用いて、魔王ユギーを封印した、というのがこの世界の歴史である。
そんな中、堕落の魔王ユギーと戦う事をせず、一目散に逃げだして、このクリィム村に引きこもったのが、タラッサ・ルミナス様という事なんだそう。
「つまり、魔王と戦わずに、この村に引きこもっていたと……」
『そういう言い方は、止めて欲しいです。まぁ、戦わなかったのは事実なのですが――――私は戦うのではなく、このクリィム村にて神々を治癒する事を進めていたのです』
神々の治癒……?
『悪魔は倒されても、悪魔の世界に戻りますでしょう? 神々は、悪魔と違って、倒されてもこちらの世界に留まるんですよ。普通の人には、【鑑定】して見る事も、触れる事も出来ませんが』
神々は倒されると、存在だけが、薄れてその場に留まり続ける。ルミナス様達神様は、それを神々のコア――――"神コア"と呼んでいるんだそう。
普通なら、神様はなんらかの事で倒された場合、神コアは数千年単位という長い年月をかけて神様として復活する事が出来るのだが、魔王ユギーはその神コアを自らの身体に取り込むことによって復活を阻止するというヤバイ事態が起きていたんだそう。
『私は、その神コアを魔王ユギーが食う前に、このクリィム村に隠した。この神社は、そんな彼らの復活を待つための隠れ家という事です』
「それと、うちのタラッサがどういう関係が……?」
『その神コアが、いくつか逃げ出しました』
「おい……」
ダメじゃないですか、それ。
他の神々が魔王ユギーと必死に戦う中で、神様達を食われないようにこの地に神コアとやらを運び、そして復活するまで守るのがルミナス様とやらの仕事なんじゃないんですか? その話の流れ的に。
『良くあるでしょ? 1000個あるうちの、1個が気付かないうちに紛失しているとかなんとか』
「良くあったら困る事ですよ、それは」
てなわけで、うちのタラッサは、ルミナス様が逃した神コアが水に溶けたのを使った結果生まれた、人造神というモノらしい。
本来は数千年単位で復活するのが神様という存在なのだが、私がいくつも上質なポーションを作っていたのを、それを媒介にして新たな身体として再構築して、神様の力を与えられた旧時代のスライムの形として復活。そして、新たな神様として復活したということだ。さしずめ、ポーションスライムの神様という所でしょうか。
『もう、基となった神様には戻せません。あなたが作ったポーションを、複数個集めて作り出したスライムと同等のボディに、神様の魂が合致した。もう、これはこの時代の神様の、新たな形といっても良いかもしれません。
というか、こういう事自体、私には初めてなので、良く分からないというか』
「…………。」
呆れて、何も言えないんですけれども。
『そこで、そんなあなたに、これを授けようと思って、今日はお呼びした訳です』
ルミナス様はそう言って、ひょいっと、どこから出したのか全く分からないけれども、小さな小瓶を1つ、私に手渡してくれた。
その小瓶には、小さな黄色い液体が入っており、私が揺らすと、瓶の中の液体はずずっと、ゆっくりと揺れていた。どうやら粘性が強い液体みたいだ。
「これは?」
『私の親友であった神、その神コアが入った液体です。それをあなたに預けますので、タラッサと同じく、人造神として復活してくださいませんか?』
……はい?
なんと、神様から、『神様の復活を頼まれる』というとんでもない依頼を与えられた私は、どう断れば良いのか、そして断っても良いモノなのかを真剣に悩む事になったのは、その後の話である。
(※)神コア
神様達にとっての魂であり、肉体そのものといって良い重要な器官。この神コアがある限り、数千年単位という長い時間をかける事にはなるが、必ず神様は復活する事が出来る
人間には触れる事も、見る事も出来ず、存在を感知する事は絶対に出来ないモノ。この神コアを堕落の魔王ユギーが取り込むことによって、八百万の神々といって良いほどの大量に存在していた神々を体内に取り込むという対処法を実行していたため、タラッサ・ルミナスは神コアとなった神々を回収して、クリィム村で保管していた
ただ、大量に保管する事、そしてタラッサ・ルミナスが元々ずさんな神様であったためか、神コアの一部がきちんと保管できずに、クリィム村の水の中に流出して、その水を使ったポーションを大量に作ったため、人造神タラッサが誕生したという事になっている
つまり、どう考えても、このアルビノ大好きお母さん系神様である、タラッサ・ルミナスが悪い
悪魔
→別世界から来ている。倒されると悪魔の世界に戻る
神様
→こちらの世界に降り立つ。倒されても神コアが残って、長い期間を経て復活する
悪魔と神様は、良く似ています(*'▽')
 




