第398話 フランシアは破りたい配信【守破離】(1)
----私の【オーラ】を模倣して、さらに強い高位の【オーラ】のような力を手に入れたお騒がせ系配信者ロンダリゼ。
彼女はその強力な力を、手に入れたばかりのおもちゃを喜んで遊ぶ子供のように、めちゃくちゃ楽しそうに遊んでいた。
「アハハッ! 凄い力です! 身体能力が倍以上に向上しちゃってますよ! なんですかこれ、最高過ぎるじゃないですかぁ!」
ロンダリゼは笑いながら、その凄まじい力を愉悦しんでいた。身体全体に雷を纏わせており、彼女の両方の拳は溶岩を纏わせていた。
「この強力すぎる身体能力! やはり、【模造する上昇志向】は凄まじいですねぇ!」
ロンダリゼは手に入れた能力を嬉しそうに振るっており、私とフランシアの2人はこの【模造する上昇志向】を、どう対処しようかと悩んでいた。
「(師匠、【オーラ】の力って、あんな雷とか、溶岩とか出来るんですか?)」
「(いや、あんなの出来ないよ。少なくとも、私にはあんな使い方は出来ない)」
もしかすると、出来るのかもしれないが、それにしたって私がいま出来ていない事を模倣するだなんて、本当に恐ろしい武器だな、【模造する上昇志向】。
「さぁ、私を追い詰めようとしたお二人さん! あなた達を殺して、第4の事件としてクリィム村をさらにどん底に陥れて見せましょう! その方が、配信的には盛り上がるしね!」
彼女はそう言って、私達に向かって拳を振り抜く。すると共に、溶岩の拳から、こちらに向かって衝撃波が向かって来る。そう、溶岩を纏った、触るのは絶対に危険な衝撃波である。
私は地面を叩きつけて、衝撃波を防ぎつつ、フランシアと2人揃って避ける。
そして、再び【オーラ】を纏って、ロンダリゼに殴り掛かる。
どんな力でも、その一段上の力を手に入れるというチート武器を持つロンダリゼに対抗するには、これ以上新たな力を与えないという方法で戦うしかない。そのため、私とフランシアの2人は、【オーラ】縛りで、ロンダリゼに戦いを挑む。
フランシアは拳にのみ【オーラ】を集中させて、その拳でロンダリゼの身体を殴りつける。先程と同じように、ロンダリゼの身体を纏っているなにかは硬く、そして柔らかい。フランシアの拳も、半分埋め込むような形で、止まっていた。
その拳を、私は彼女の肘に力を加えて、さらに押し込むっ!
「かはっ……!」
身体に半分埋め込む形で止まっていた、フランシアの拳。それ以上はフランシアの力だけでは無理だったが、私が力を加える事で、ロンダリゼの身体を抉る事に成功した。
「よしっ……!」
「ふんっ! たかが一撃加えたところで、どうって事ないですよ!」
ロンダリゼはそう言うが、それこそが私の狙いであった。
【オーラ】は、きちんと扱わないと、自らの身体をも崩壊させるという強力すぎる力。だからこそ、シュンカトウ騎士団の道場でも、ちゃんとした基礎を作り込んでいる人間にしか、この【オーラ】という能力は教えないようにしている。
一方で、ロンダリゼはそういう基礎は一切なく、しかも使っている力は【オーラ】以上の力。基が【オーラ】なら、ちょっとした傷口という綻びからでも、その傷から崩壊が始まるはずだ。
これで後は時間稼ぎさえしてれば、勝てる。
私とフランシアは、そう思っていた。
「----ふんっ!」
しかし、その考えは甘かった。
ロンダリゼの身体を纏っている力は、私とフランシアの2人で作った傷に集まり始めると、そこから傷を塞ぐように力を使い始め、まるで時間が巻き戻っているのかと疑いたくなるような高速スピードで、彼女の傷を瞬く間に再生、回復していたのである。
「おいおい、嘘でしょ……」
【オーラ】よりも上の力って、溶岩やら雷やらの自然災害的な力を扱えるだけではなくて、再生能力まであるの? もはや、別物じゃん。
私達が扱っている【オーラ】の力が、どれほどの物なのかは私自身も分かっていない。しかしながら、この力があらゆる物を崩壊させるほどの凄まじい力である事は、私は調査済みだった。だからこそ、再生能力があるあの力は、私達が扱っているのよりも、遥かに高次元な力であると、そう断言できる。
----唯一の、希望だった。
基礎が出来ていない、力の扱い方をまるで知らないであろうロンダリゼ。【オーラ】を基にしたであろう強力な力を手に入れたのだから、弱点も【オーラ】と同じく再生能力がない事だと思っていたのに、そうではないらしい。
さらに、私とフランシアの2人が協力すれば、一撃与えられるという事もバレてしまった。もう二度と、同じ轍は踏まないように、ロンダリゼは対処するでしょう。少なくとも、私なら、そうする。
どうすれば良いのかと迷っていると、フランシアは「まだ試してない攻撃があります」と、明るくそう言った。
「彼女が私の持っている能力よりも上位の能力を手にするのだとしたら、1つ、試してみたい攻撃があります。
師匠、どうか私の、新たな技の完成を手伝ってはもらえないでしょうか?」
他人のスキルの良い部分のみをコピーして、
マイナス要素はない、上位存在たるスキルを手に入れる!!
それが、【模造する上昇志向】なのです!!
ほんとう、どう対処するんですか。この状況を
作者「ほんとう、どうしよう('ω')」




