第382話 暴力のハルファス事件の顛末配信
----悪魔ハルファス、もとい魔王ユギーの五本槍の1人となった暴力のハルファス事件は、幕を閉じた。
ホテルに宿泊していた配信者様たちは、戦いに巻き込まれないように早めに返しておいたのが大きかったのか、特に大きな迷惑にはならなかった。元々、ホテル管理特化型ゴーレムであるイータちゃんの発案による先行オープンであったため、通常料金よりも割安だったのもあり、【憧憬の会】によるクラフトビールを一蔵分開けたのも良かったのだろう。
……あっ、お騒がせ系配信者ロンダリゼには、動画のコメントに明確な抗議文を送って置いた。ロンダリゼは【黒キ翼】を使ってホテル側にどっきり行為を仕掛け、スタッフ型ゴーレム1体をダメにしてしまった。そして、ダメにしたスタッフ型ゴーレムを用いて召喚した悪魔フォクマイラが、ホテルの一部をダメにしてしまった。
ロンダリゼはほんの少しだけ困らせて、あわよくばホテル側から連絡が来たら動画のネタになるだろうくらいのつもりで行ったのだろうけれども、まさか悪魔を召喚して、スタッフ型ゴーレムとホテルの一部を破壊して多大な賠償金を払う事になるとは思わなかっただろう。これを機に、少しは他者への迷惑を考えるようになってくれれば良いなと、そう思った。
続いて、悪魔ハルファスと交流していた、商人ラジンと錬金術師マコモの処遇について。【黒キ翼】を広めていた事、そして悪魔と取引をしていた事はかなりのマイナスポイントであったが、それを覆すほどのプラスとなるポイントがあった。
それが、錬金術師マコモの才能。錬金術師としての彼女の腕は、私なんかと比べようがないくらいに、高かった。同じ材料、同じ錬金術を使ったとしたら、私よりも2ランク上の魔道具が完成する。それが彼女の才能だ。
私は基本的にアイデア先行で作っている。前世の知識があるからこそ出来る、私なりの反則行為なのだが、それがなければ私の錬金術師としての腕は中の上……大負けに負けて、上の下、というところでしょうか?
一方で、錬金術師マコモは勘で作る。ただの勘と侮るなかれ、一分一秒の誤差が完成に大きく影響される職人の世界で、"この辺でやると良いかも"という事を本人の勘だけでやれるような魚人族ですよ? 大負けに負けても上の上、それもトップクラスの錬金術師としての腕の持ち主で、完成度がめちゃくちゃ高い。
彼女の才能を潰す訳には行かず、かといって彼女は商人ラジンとぞっこんラブ状態。ラジンを厳しく処罰したら、もう彼女は絶対に仕事をしてくれなくなる。それだけで済めば良いのだが、一番被害が大きくなるタイミングを狙って、反旗を翻す可能性が高い。それに、ラジンは前もって悪魔ハルファスの情報を提供するなど、司法取引みたいなことをして、貢献しているという実績もある。
ゼニスキー組合長は、2人のマイナスポイントよりも、マコモのプラスポイントの方が大きいと判断。結果として、ラジンとマコモの2人は王都の、ゼニスキー組合長が面倒を見ている錬金工房に所属する事となった。
……あぁ、そうそう。彼女にはもう1つ、問題があった。
商人ラジンが、悪魔ハルファスとの取引を続けていた理由の1つ。錬金術師マコモが、ダンクルオステウスという古代魚の魚人族である事だ。
悪魔ハルファスの取引によって、陸上でも酸素を取り込めるようになり、小食になったマコモ。悪魔ハルファスの取引の前は、1食で10人前を食べていたらしいが、今では普通の人間1人前になっているらしい。悪魔の力、すげぇなおい。
そんなマコモには、"陸上で歩ける足"を欲していた。
そこで私は、彼女に義足を提供した。
ただの義足なんかじゃあなくて、身体に取り付けると、所有者本人の生体電気を感知して、所有者の思うがままに動く。身体に取り付けるタイプなので、魚の尾ヒレのような自前の足を圧迫する事なく使える、名付けて魔道具【リモート義足】。
この義足のおかげで、彼女は尾びれをヒト型の足に交換する事なく、陸上で自由自在に歩けるようになったのでした。めでたしめでたし。
……3日後、その改良版を彼女が付けていたのを見た時は、少し泣いた。天才ってのは、すげぇなと思わざるを得なかった。
さて、これで今回の事件は終わりだと思いきや、まだ今回の事件では語らなければならない事がある。
----赤髪妖精ヴァーミリオン。
彼女は、『死の森』に帰る事となった。
悪魔ハルファスの正体が群妖精ハルファス・レギオンである事を伝えた結果、ヴァーミリオンは自らが妖精である事をバラしてしまった。暴力のハルファスを倒したヴァーミリオンの功績は大きいけれども、それでも商人ラジンと錬金術師マコモのように、「良い事をしてくれたので、お咎めなしで」という訳にはならなかった。
何故なら、抗議が届いたから。
----『死の森』から、上位妖精とやらが、私の家にやって来て、ヴァーミリオンを連れ戻すと言って来たからである。
こういう、事件のまとめって
作っていて、話の内容を確認できて好き
次回、上級妖精登場(*'ω'*)




