第379話 三度目の決戦配信【赤髪妖精ヴァーミリオンVS.暴力のハルファス】(2)
遊戯戦法『氷鬼』により、凍った状態となった赤髪妖精ヴァーミリオン。
凍らせて動けない状態となったヴァーミリオンに、ハルファスは止めを刺そうとしていた。しかしながら、動けないはずのヴァーミリオンは凍った状態のまま、ハルファスに攻撃していた。
「凍った状態のまま、攻撃?! バカな、この『氷鬼』は相手の行動を完全に停止させる無敵の戦法なのに?!」
ハルファスは困惑しっぱなしだったが、ヴァーミリオンは攻撃を続ける。剣をしっかり握りしめて、ハルファスに向かって斬りかかってくる。
「(『氷鬼』は発動していますが、効果なしという形ですか! それならば、単純に暴力で制圧する!)」
ハルファスはそう決心し、両腕に力を込める。すると、赤い両腕の拳が先程までの5倍サイズと、大きく膨らんでいた。ただ大きく膨らんだだけではなく、その拳の中には筋繊維がたくさん、ぎっしりと詰まっていた。
ハルファスはその拳で、ヴァーミリオンを殴りつける。
モノのサイズが2倍になると、そのモノの体積は8倍になるとされている。そしていま現在、拳が5倍になったことで、体積……つまり質量は125倍。しかも、筋肉繊維がぎっしりと詰め込まれている事により、その威力はそれ以上となっていた。
しかし、ヴァーミリオンには一切ダメージが効いていなかった。
身体が粉々に砕ける事を想定していたハルファスだが、一切ダメージを受けていない事、そして殴った感触が『硬い』よりも『柔らかい』だったことから、ヴァーミリオンが行動できた理由を判明して見せた。
重力だ。ヴァーミリオンは重力の力を使って、動けない身体に無理矢理重力を働かせて、動かしたのだ。重力と言うと、一方方向にしか動かないイメージがあるが、重力を能力として使えるのならば、重力の向きと強さなどを巧みにコントロールして見せれば、動けるようにも見せる事が出来る。
「(『氷鬼』はあくまでも身体を動けなくする力であって、能力を封じる力ではない。あくまでも遊びを基にしているから、こういう反則行為に弱い、弱い、弱いっ!)」
だが分かってしまえば、大したことはない。ただ単に、重力を使って動かしているだけと分かったハルファスは、拳のように握りしめていたのを、指3本に変更する。
指3本。そう"グー"でも"チョキ"でも"パー"でもない、反則行為の手である。
この指3本の手は、相手が能力などによって防ぐという違反行為をしている場合に、相手の防御を打ち破って直接ダメージを与えるという技。
ハルファスは指3本の手を使い、そのままヴァーミリオンに放つ。
放たれた攻撃は、思った通りヴァーミリオンの重力バリアを抜けて、ヴァーミリオンにぶつかる。
良くやったとハルファスが思ったその瞬間、ハルファスの腕が燃え始めた。
「なぬっ……?!」
急いで、消火するように身体に念じる。魔王ユギーの身体は万能のため、すぐさま腕に巻き付いた炎は鎮火され、ホッと一息吐いた。
しかしながら、そのホッとする瞬間を狙っていた蚊のように、ヴァーミリオンが殴る。殴る。殴る。そして、燃える。燃える。燃える。
重力しか扱えないはずのヴァーミリオンの、火炎攻撃。
ハルファスはこれが魔法なんかではなく、重力と同じスキルであると理解していた。理解したうえで、おかしいと感じる。ヴァーミリオンは妖精であり、群妖精とは違って単体。妖精の能力は基本的には1匹につき1つのはずだ。
重力と、火炎。相反する2つの能力を同時に持つ事など、本来あり得ないのだ。
しかし、相手が火炎をしてくるならと、ハルファスは自分の身体に水の膜を張る。これにより、燃えたとしても、身体を燃やす前に鎮火するという判定になるため、ハルファスはノーダメージ。
これで優位に立てたと思ったハルファスであったが、今度はその水の膜が凍り始める。
凍結。これで、3つ目だ。
水の膜をすぐさま取ると共に、全身に張り巡らせた微妖精たちが身体を温めようと動き始める。全身が燃えるように熱くなり、ヴァーミリオンの凍結攻撃も封じた。
「(どうやって複数の能力を使えるようになったのかは分かりませんが、能力の多彩さにおいては、魔王ユギー様の足元にも及びません! 様々な娯楽を司る魔王様にとっては、あなたがどんな攻撃をしようとも、どれだけ能力を得ようとも、数でも、そして質でも負ける事はない!)」
そして、攻撃力も、つまりは戦闘能力もハルファスの方が上だ。
ヴァーミリオンが1回攻撃している間に、ハルファスは3回攻撃が出来る。さらにヴァーミリオンが1歩動いている間に、ハルファスは3歩動くことができ、さらには破壊力もこちらの方が3倍。
なにもかも、こちらの戦闘能力の方が勝っており、ヴァーミリオンに勝ち目はない。
「(そのはず、なのに……)」
スペックは全てこちらが上のはずなのに、何故だかヴァーミリオンがこのまま負けるという想定が、未来が見えて来ない事に、違和感を覚えるハルファスなのであった。
ハルファスの攻撃回数は、ヴァーミリオンの3倍!!
ハルファスの破壊力は、ヴァーミリオンの3倍!!
赤い方が3倍強いという法則を、採用すべきだったかと
いまさらながらに考える、今日この頃('ω')ノ




