第378話 三度目の決戦配信【赤髪妖精ヴァーミリオンVS.暴力のハルファス】(1)
屋上へと続く扉を開けて現れたのは、赤髪の侍姿の女性。彼女は背中に大きなマントを羽織っており、手には禍々しい紫色の光を纏った刀を手にしていた。
「ほぅ。我が用意しておいたホテル・トラップを抜けて来た一番乗りは、あなたですか? 赤髪妖精ヴァーミリオン?」
「えぇ! 屋上で1人で待っているあなたを倒すため、ここまで一気にやって来ました!」
いきなり、この世紀末世界にあるはずのない侍姿へと変わった赤髪妖精ヴァーミリオンにも驚きだが、彼女の「1人」という言葉にハルファスはきょろきょろと辺りを伺う。
「あいつっ……!」
そこには、先程まで話していたはずの無敵のナタラの姿はなかった。入り口が開いた一瞬のうちに、どこかへと逃げだしたみたいである。
「【無敵】のくせに、戦いもせずに逃げるとは……いや、これくらい自分でやって見ろという事、なのでしょうか?」
「ぶつぶつと、何を言っているんですか!」
いきなり刀を振るって攻め込んで来たヴァーミリオンに、ハルファスはナタラから受け取って置いた娯楽刀アカツキで防ぐ。
「暴力こそ正義なら、ごちゃごちゃ言わずに、攻め込ませていただきます!」
「なるほど! 確かに、暴力に言葉は無用! 真理だね、ヴァーミリオン!」
ハルファスはそう言って、アカツキで刀攻撃を防ぎつつ、彼女の顔を背中から出した3本目の腕で殴り飛ばす。
「----っ!」
「暴力にルールは無用! 試合と違って、条件を揃える必要はないからね!」
ハルファスはそう言って、赤く染まった両腕で空中を殴る。殴りつけると共に、空気が震え、ヴァーミリオンに強い衝撃が伝わって来る。
さらに間髪入れずに、ハルファスは赤く染まった左足で、屋上を蹴りつける。すると共に、屋上が真っ黒に染め上がり、その真っ黒に染め上がった地面から何本もの黒い剣が現れる。
その黒剣を見る者が見れば、分かったであろう。
----【闘争のカイデン】。以前、倒された五本槍が使っていた、自分の領域を増やすのに使っていた剣であることが。
地面から這い出るように現れた黒い剣を、ハルファスはアカツキで斬りつける。
ただ地面に突き刺さっただけの黒い剣と、特殊能力とも言うべき驚異の頑丈さを誇るアカツキ。斬りつけられて勝ったのはアカツキであり、黒い剣は全て、宙に舞う。
宙に舞った黒い剣に、赤い右腕で触れる。触れると共に、黒い剣は元の折れていない形まで復元され、その黒い地面の中から顔が塗りつぶされた剣士が現れ、黒い剣を手にしていた。
「【狩猟のドン・デーロ】の能力により、剣に残る記憶から持ち手を復元しました!
----暴力の本質は、複数人によるふるぼっこが基本ですからね! さぁ、狩猟れ、歴戦の剣士たち!」
『『『『『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』』』』』
ハルファスの号令と共に、顔が塗りつぶされた剣士たちは、ヴァーミリオンに攻め込んで行く。
攻め込まれたヴァーミリオンは、黒い剣士たちの攻撃を、重力の力を使って、屋上から落としていく。横方向に落とされる力によって、黒塗り顔の剣士たちは屋上から落とされる。
そして、ヴァーミリオンはハルファスに対しても、重力の力を、刀に纏わせて斬りかかる。ハルファスの正体が群妖精であり、なおかつ現在は魔王ユギーの身体の中に居る事が分かってるし、ヴァーミリオンは重力の力をハルファスへと放っていた。
「よっ!!」
放たれた重力の斬撃を、ハルファスは赤い手で弾いていた。
「----っ!」
「重力、この魔王様の身体には効かぬ! 効かぬ! 効かぬ!」
そうして、重力をものともせずに近寄ったハルファスは、そのまま赤く染まった左腕を強く握りしめ、ヴァーミリオンに殴り掛かる。ヴァーミリオンは殴られると共に、激痛と共に、殴られた身体が凍って行くのを感じていた。
「五本槍だけが全てではない! 遊戯戦法『氷鬼』、殴られた箇所は動かなくなる!」
ヴァーミリオンは炎を使って、凍った箇所を溶かそうとするが、氷は解けず、それなのにその凍った肌は燃やされ焦げ始めた。
「ゲームの『氷鬼』は、味方に触られるまで動けないでしょう!? これも同様! もっとも、これは地域規範で、戦闘が終わるまで溶けないんですがね!」
ハルファスはそう言って、凍っていない場所を、ヴァーミリオンの殴っていない場所を殴る。
頭、心臓付近、両腕両脚。その全てが、ハルファスの能力によって、凍り付き、動かなくなってしまった。
「かはっ……!?」
「理不尽でしょう? 無慈悲でしょう? 不愉快でしょう? しかし、それらすべてが許されるのが魔王! その魔王の身体を持つ、【暴力】のハルファスの特権なんです!」
これで止めだと、ハルファスはヴァーミリオンの身体を殴り、そのまま屋上から下へと吹っ飛ばす。
「ろくに受け身もとれぬまま、やられるが良い!」
ハルファスはそう高らかに笑いながら宣言し、
----ぴゅんっ!!
「かはっ……?!」
いつの間にか、移動して居たヴァーミリオンの剣が突き刺さっていた。
「なっ、なぜ? 私の『氷鬼』は、まだお前の身体を凍らせ続けているはずなのに……」
突き刺さった剣を力で引き抜き、ハルファスはヴァーミリオンを睨みつける。
「なんで、お前の身体は動けるようになっている?」
ハルファスの瞳には、凍った状態のまま、剣をしっかりと握りしめてこちらを睨みつけるヴァーミリオンの姿があった。
魔王ユギーの持つ戦術は、遊びをモチーフにしてます
『氷鬼』は触れた相手は味方のタッチがない限り、
ずっと動けないという、"こおりおに"という遊びを基にしています
まぁ、遊びを基にしていても、戦闘に応用しているので
味方がタッチしても解除できない、クソ仕様ですが(*´Д`)




