第349話 ぱんぱかレディはコラボしたかった配信
『勝負あり! ホテル・イスウッドの管理特化型ゴーレム、イータの名において勝者を宣言します!
----勝者、ぱんぱかレディ!』
イータちゃんの勝利者宣言と共に、2人のコラボ配信は盛り上がり、そのまま配信は終了するのであった----。
「しゃらんら、しゃららーんっ! 負けた、負けたぁ!!」
「アーハッハハハ!」と、敗北者となってしまった『愛の叫び』は高らかに笑っていた。あまりの高笑いっぷりに、勝利者側であるはずの『ぱんぱかレディ』の方が「大丈夫?」と心配するくらいであった。
「あの、グリッシーニだっけ? なんでいきなり折れてたの? 良かったら、教えてくれないかな?」
「えっと、その、防がれることが前提のパン攻撃という感じでして」
ぱんぱかレディは、そう説明して行く。
グリッシーニとは、クラッカーのような食感のスティック状の細長いパン。"ブレンドスティック"、"スティック状のパン"という呼び方もされてる、ベータちゃんの料理配信で紹介された新作のパン。
長いまま食べるのではなく、適当な大きさに折って食べるのがマナーとなっているパンであり、長いままお菓子のように齧り食べるのはマナー違反である。
ぱんぱかレディの魔法によって強化されたグリッシーニは、目標となる人物の周囲で自動的に折れて、目標となる人物を取り囲むようにして、爆発する魔法である。
「なるほど、なるほどぉ~! 結界でパンの魔法を防いでも、その後に起きた爆発には対応できなかった、と! しゃらんら、しゃらんらっ! まったく、我ながら最強の防御魔法が聞いて呆れるわぁ……」
「反省、反省♪」とそう言った後、反省点を取り出したメモに書きこんで行くアイスクリーム。それを見て、ぱんぱかレディは「やはりアイスクリームですね」と納得していた。
彼は魔法に対して、真摯に向き合っている配信者。視聴者として見ていた通りの姿だから、ぱんぱかレディは安心して見ていられたのであった。
「視聴者として見ていた姿と一緒で、めちゃくちゃ安心しますわぁ~」
「ん? なにか言った?」
「いいえ、特に何も」
ぱんぱかレディは誤魔化すように、アイスクリームが魔法にて生み出した愛らしい雪だるまを1つ持つ。
「軽っ! そして、寒く……ない?」
「あぁ、そうなんだよね」
ぱんぱかレディの反応がさも当然かのような声で、アイスクリームはそう肯定した。
「一応、見た目から"雪だるま魔法"という名目にて、やっているんですが、雪のような重みも寒さもない、謎の物体なんですよ。それ」
「これ、いったい何なんでしょう?」
「それを調べるのが、このアイスクリームの永遠の課題、という所ですかね」
メモを書き終わったのか、メモ帳を閉じたアイスクリームは、雪だるまを持っているぱんぱかレディに手を差し出す。いわゆる、握手の形である。
「今日はコラボしてくれてありがとう。早速、この成果を活かしたいと思います」
「お役に立てたのなら、こちらとしても嬉しいです。こちらも、視聴回数的に助かりましたし」
ぱんぱかレディとアイスクリームはがっちり握手をして、そのままアイスクリームは部屋へと帰って行ったのであった。
『ふぅ、配信終了っと』
一方で、2人が配信外で話し合っている間、ずっと2人の代わりに視聴者と話し合うという、明らかにホテルの管理特化型ゴーレムがするにはおかしい仕事を終えたイータちゃん。
お客様の役に立つのが仕事であると、イータちゃんはマニュアルにそう記載したが、これはなんだか違うからマニュアルを書き換えようと、イータちゃんは決心するのであった。
『それでは、ぱんぱかレディ様。お部屋へご案内を----』
「その事なんですが----」
「実は、1つ相談事が……」と、ぱんぱかレディは話を切り出していた。
お客様のご要望に寄り添うのも、ホテル管理特化型ゴーレムである自分の職務であるとマニュアルと、そして自分自身にそう定義しているイータちゃんは『遠慮なくどうぞ』とニコリと笑顔でそう言う。
『私は、当ホテルの管理特化型ゴーレムのイータ。お客様のご要望に対しては、法律に触れない限り、全力で支援したく思っていますため、まずはご要望からお伺いしてもよろしいでしょうか?』
「そう言ってくれると、本当に助かります。今回のコラボも、イータさんに話したらすんなりと決まって、大助かりでした」
『お相手であるアイスクリーム様も、受けてくれて何よりでした。もしかして、次のコラボ相手の相談、というところでしょうか?』
イータちゃんはそう言いつつ、今度は"視聴者に困惑させないように、動画を繋いでおいてくれ"という事に関しては断ろうと決意する。自分はホテル管理特化型であり、ガンマちゃんのように映像編集には長けていない。さっきの配信だって、自分の能力範囲外の事だったから、出来ているか正直不安でしかなかったのである。
だから、映像編集など、自分の範囲外の事であれば、断ろうと、イータちゃんはそう決意する。
「はい。実は、このホテルに来るのも少し迷っていたんですが、会いたい人物が居たので、ここに来るのを決心したんです。
----お願いします! パン配信の元祖、ベータちゃん様にお取次ぎ願えないでしょうか!」
『はい。そのくらいなら大丈夫です』
お取次ぎするくらいなら大丈夫だと、イータちゃんは二つ返事でオーケーを出すのであった。
イータちゃんにとって、自分の専門外の配信の管理を任されるよりも
ベータちゃんを呼びつける方が簡単だと、
そう判断した訳です
まぁ、同じ製作者のゴーレムですし




