第340話 イプシロン&イータの解体ショー配信(2)
「はいっ、こちらイプシロンちゃん特製の超絶期待作! 【ポークフィッシュ】になりまぁす!」
じゃじゃーんっと、そんな音が聞こえてきそうな感じで、イプシロンちゃんはそう宣言した。豚のような鼻をしたでっぷりと太った魚を受け取ったスタッフ型ゴーレム。そして、なんの魚か分からず困惑するイータちゃん。
『イプシロンさん、これは?』
「養殖担当であるこの私の、超絶期待作であるポークフィッシュ! 豚のように、部位ごとに味や肉質が違ってます!」
「ここがロースで、こっちがバラでぇ~」と、イプシロンちゃんはポークフィッシュの身を触りながら、淡々と説明して行く。
『つまりは、中トロやカマなど部位ごとに味が違うマグロのように、色々な調理法が楽しめるって事で良いですか?』
「えぇ、この鼻の部分が特にこだわって養殖ってましてね!」
こうして、イプシロンちゃんはポークフィッシュについて説明して行く。
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〇ロース
きめが細やかで上品な味わいが特徴。カツやソテーなど、洋食メニューに向いている
〇ヒレ
高タンパクで低カロリー、しかも柔らかい肉質で良いとこだらけ。柔らかく、味が淡泊。長時間の過熱はあまり向いていない
〇バラ
高カロリーながら健康維持効果も高い。ベーコン、角煮、炒飯、焼き豚など様々な調理法に向いている
〇肩ロース
赤身とサシのバランスの良い肉質で、料理を選ばない食べやすさが特徴。ソテー、カツ、カレーなど様々な調理法に適している
〇かた肉
人間が生きて行くのに必要な亜鉛が多く含まれている。長時間に込んで柔らかくして調理する豚汁などの煮込み料理に人気
〇モモ肉
脂肪が少なく、ローカロリー。肉質はきめが細かくしっかりとしているので、焼いて食べても美味しいのですが、焼く際に加熱しすぎると硬くなりすぎてしまう恐れがあるので、加熱時間には注意が必要
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『これ、完全に豚肉なんじゃ……』
「はい、豚肉です」
キラッと、曇り一つない瞳で言うイプシロンちゃん。
『つまりこの魚は、豚肉……? 豚肉の味がする魚?』
「えぇ。魚の見た目なのに、豚肉! めちゃくちゃ船長でしょう?」
『ワイルドかなぁ……?』と、イータちゃんは考える。
『(けれどもまぁ、部位ごとに味が変わるという点は活かせれば、お客様の印象はすごくイイですよね。人間は見た目から味を想像する事が多いので、見た目とは反した味が出てくるのは、目玉になりそうで嬉しいです!)』
色々な観点から判断したイータちゃんは、そのままピッグフィッシュを10匹買い取っていた。
「ありがとう! 是非、この魚を活かしてくださいね!」
『----1つ、忠言させていただきます』
ピッグフィッシュ10匹を買い取って、嬉しそうな様子を見せるイプシロンちゃん。その様子を見て、イータちゃんは1つだけアドバイスをする事にした。
『豚肉の味にするのは良いですが、ちゃんとこの魚にする利点も必要だと思いますよ?』
「魚にする利点……そっか! これだと、ただ豚肉を再現しただけの魚ですからね! 確かに、いささか海賊精神が足りてないように----」
「むむむっ……」と、新しい養殖魚のアイデアを考え始めるイプシロンちゃん。そんなイプシロンちゃんを無視して、イータちゃんはこのピッグフィッシュを活かした目玉企画を考える。
『スタッフ型ゴーレム達、すぐさま3階の調理場へと運んでくださいませ。ピッグフィッシュの特性は既に【アルファ・ゴーレムサポートシステム】にて共有済みですので、彼らのスペックなら解決策がすぐに出るかと』
「「「「イエス、ボス!」」」」
こうして、イータちゃんはお昼に向けて、一生懸命動くのであった。
『さぁ、あともうひと踏ん張りです! お客様の最高の笑顔のために、皆様、張り切って仕事をしましょう!』
「「「「イエス! ボス!」」」」
----現在11時。お昼まで、あと1時間。
(※)シェフ型ゴーレム
【ホテル・イスウッド】に導入された、2階と3階の食堂に導入された料理が得意なゴーレム達。元々の基礎スペックは、ドラスト商会に導入されたワットの知識を共有しており、食材を見て適切な調理法をすぐさま考える事に優れている
1体1体のスペックはワットには及ばないが、複数体を同時に運用する事を前提としている。複数体いるが、全員分にかかった費用を合わせても、ワット1体作るよりも安くなっている
(※)スタッフ型ゴーレム
【ホテル・イスウッド】に導入された、ホテル内の清掃やお客様対応のために導入されたゴーレム。元々の基礎スペックは、家事特化型ゴーレムのベータちゃんの知識を共有しており、一般的な仕事ではなにも問題はない
ベータちゃんと違って、難しい問題に関しては横からイータちゃんが直接指示するために問題はない。ベータちゃん曰く、『我がマスターの家を任せるには値しませんが、複数人で仕事をするのでしたら問題はありません』との事
ワットの技術をいっぱい利用して
このホテルは運営されてますよー




