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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第338話 商人ラジンのホテル体験配信(2)

『ではここが、お客様のお部屋になります。お昼は12時から3階にある食堂にてホテル開業記念バイキングパーティーを行います。その後、18時から2階にあるパーティー会場にて祝宴を行いたいと思います。1階にある大浴場は現在(いま)から使っていただいて大丈夫ですので、遠慮なくお使いくださいませ。

 ----ほかに、なにかしつもんがございますか?」

「特に、ないです、が……?」

『そうでしたか。それでは、ごゆっくり』


 ペコリと頭を下げる、半透明姿のイータちゃん。そうして、すーっと消えていった。


「まさか、部屋にまで入る事となるとは……」


 商人ラジンは驚いていた。

 本当は、ホテルのエントランスに【黒キ翼】を置いてそのまま帰るつもりだったのだが、そのままイータちゃんに案内され、あれよあれよという間に、宿泊する予定の部屋に案内されていた。


「しかし、部屋の中も良い感じだな」


 ----どんっ!


 ラジンが部屋の豪華さに驚いていると、彼が背負っている大きなリュックサックからドンッという、大きな音が聞こえて来る。まるで、リュックサックの中から誰かが叩いているかのような、そんな大きな音である。


「あぁ、悪かった、悪かった。いま、出してあげるから」


 ラジンはそう言うと、ベッドの横にリュックサックを置く。そして、リュックサックのファスナーをスーッと下へと下げて行く。


「はぁ~! ようやく息が出来るぅ!!」


 リュックサックのファスナーを下げきって、中が見えるように開ける。すると、その中から出てきたのは、大柄な魚人族の女性であった。

 

 3mはあろうかという、どうやってリュックサックに入っていたのか分からない巨体の女。頭と胸の辺りに、強靭な金色の甲冑のようなモノに身を包んでいる、吊り目の女性。

 魚の尾のような脚で床を跳ね、キングサイズのベッドに横になる。


「うわっ、マジで柔らかい! なぁに、ラーくんってば私に内緒で、独り占めしようとしてた訳? なんなの、喧嘩? 喧嘩しよっか?」

「落ち着けよ、マコモ! そんな訳ないだろう! いつも通り、周囲の安全を確認するのに時間がかかっただけだから!」


 「なら、良いけどね」と、そうやって「怒ってごめんね? でも、寂しかったんだよ?」というような殊勝な態度を見せられると、ラジンは怒れなかった。それどころか、自慢の恋人がめちゃくちゃ可愛いと、改めてマコモの可愛さに虜になっていた。


 リュックサックから出て来たこの巨大人魚娘、彼女こそがワイルド工房の工房長として名前が書かれているマコモである。

 彼女はダンクルオステウスという古代魚の魚人族である。「甲冑のような骨の甲羅を持つ魚」、甲冑魚と呼ばれるダンクルオステウスの魚人族である彼女との出会いは、悪魔ハルファスが持ち込んでくれた。


 ある時、可愛い彼女が欲しいと考えたラジンは、「可愛い彼女が欲しい!」と願った。その結果、ラジンの元に現れたのが、ダンクルオステウスの魚人族であるマコモであった。

 彼女は顔と胸の部分に硬い骨の鎧を持つ魚人族であり、そして天才であった。水魔法の高い適正によって、液体の中から欲しい成分だけを持ってくる事が出来るという特殊能力を持つ錬金術師であり、そして、なによりめちゃくちゃ可愛かった。ラジンは一目で虜になり、そしてマコモもまたラジンの虜になった。


 2人は、恋人となった。

 しかし、マコモは古代魚の魚人族であるからなのか、他の魚人族のように、陸でも歩ける足を持たず、そして水中で酸素を取り込まないといけない体質があった。


 ラジンは、マコモと暮らしたかった。


 だから、悪魔ハルファスと取引をし続けた。

 おかげで、この巨体をなんなく運べる移動手段(リュックサック)、さらにはえら呼吸とは別に肺呼吸の才能も与える事が出来た。2人で住むための、大きな家もある。


 あとは、マコモのために、陸地を自由に歩ける足を、悪魔ハルファスから貰えば良い。それで、2人は幸せに暮らせる。

 魔王復活なんてどうでも良い。ラジンにとっては、マコモと一緒に暮らせることこそが重要なのだから。


「ラーくん、大丈夫? 無理してない?」

「無理なんかしてないさ。マコモと暮らせるためなら、悪魔にだって取引し続けて見せる。それに、次の願いで、マコモは陸地でも自由に暮らせるようになる」

「うん、むちゃくちゃ嬉しい。ラーくんと一緒に走れるかと思うと、今からワクワクが止まんないよ。……あっ、足を手に入れたら、私の方が速く走れちゃうかもね?」


 「ニヒヒっ」と笑うマコモを見ると、元気が、そして未来への希望がムクムクと湧いて来る。


「ごめん、マコモ。出て来てもらってなんだけど、またリュックサックに戻ってくれないかな? やっぱり依頼をすぐさま達成して、君と早く、一緒に歩いて行きたいんだ」

「やっ!」


 ぷいっと、マコモは拗ねたように顔を背ける。


「マコモ……」

「ラーくん、分かってるの? 相手は魔王復活を企んでんでしょ? この箱(リュックサック)の中から聞こえていたし、状況は分かってるよ? いくら一緒になりたいからと言っても、他の人を巻き込むのはちょっとねぇ?」

「でも、これしか方法がないんだ。魚人族の足を別のモノに変える方法を調べなかった訳じゃないだろう?」

「でも……私達は幸せになりたいだけなんだよ? 他人の幸せを踏みにじろうとか、そういうのはないんだよ? 魔王復活なんて、明らかヤバそうなことからは足を洗おう? ねっ?」


 マコモの言葉に、どうすれば良いか分からず、困り果てるラジンであった。

ダンクルオステウスって、めちゃくちゃカッコいい魚なんです

鎧を身に纏っているようで、太古にはこんな生き物がいるんだって

調べる度に驚いています

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