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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第337話 商人ラジンのホテル体験配信(1)

 翌日、商人ラジンは【ホテル・イスウッド】へと向かっていた。


「(魔王の復活、か……)」


 僅か3歳で故郷を追い出された商人ラジンには、(がく)がない。一般常識だとか、そういった知識は大人達から教えて貰わなかったから、ラジンにはそもそもなかった。冒険者時代も、親切な受付が担当であったから、なんとか食い扶持に困らなかったくらいなのだから。

 それでも今、商人ラジンに魔王の知識があるのは、悪魔ハルファスの報酬として貰ったからだ。


「この世界を滅ぼしかけた、魔王の復活か」


 魔王が復活すれば、どうなるかはラジンには分からない。しかしながら、ラジンにとっては魔王復活だの、世界崩壊だのは、どうでも良い。

 ラジンにとっては、自分の事だけが大事だった。そう、自分さえ美味しい話を受けられればそれで良い。



 ----自分が願いを叶えてもらえれば、それで良いのだから。



「しかし、今回の依頼は、いったい何なんだろう?」


 悪魔ハルファスからの依頼はいつも、商品を何処に居る誰々へと運んで欲しいという、そういう運びの依頼が多かった。時折、魔物を倒して欲しいという依頼はあったが、それでも圧倒的に運んで欲しいという依頼が多かった。

 今回のように、ホテルのエントランスに仕掛けて来いという依頼は、初めてである。


「まぁ、なんだって良いか」


 今回は、いつもとは違って楽な依頼だ。そのホテルとやらに入って、エントランスにぽんっと置いたら、そのまま逃げれば良いだけなのだから。


「おっ、見えて来たぞ」


 そんな事を考えているうちに、問題の【ホテル・イスウッド】が見えて来た。

 10階建てと聞いていたが、めちゃくちゃ大きい。ラジンが冒険者時代に突入した事のある廃城よりも大きいかもしれない。


 今日、ラジンはこの【ホテル・イスウッド】完成披露会のための、一番最初のお客様である50人に選ばれた。配信で応募した際は、当たるはずもないと思ったのだが、悪魔ハルファスがなにか当たるような工作をしたのだろうと、ラジンはそう思っていた。

 入口へと入り、エントランスへと入ると、その綺麗さに驚いた。赤く彩られた高級そうな絨毯は、草むらのふわふわ具合よりもふわふわであり、それでいてゴミが何一つとして落ちていない。天井には綺麗なシャンデリアが吊り下がっており、壁にはこれまた高級そうな壁紙が貼られている。


 既にラジンの他にも、20名近くのメンバーが到着しており、彼ら全員がラジンと同じように、このホテルの美しさに魅了されていた。中には絨毯に寝転がったまま、「もうここで寝たい~」なんていう人まで居たくらいだ。


 宿屋というモノは、ラジンが知る限り、「ただ泊まる場所」という印象であった。

 しかし、この【ホテル・イスウッド】は違う。行くこと自体が自慢になるようなそういう施設といったら、良いのだろうか?


「このホテルの姿、マコモにも見せたいなぁ」

『お客様』


 と、すぐさま逃げてしまおうとしていた施設に、そんな事を考えていると、ラジンの前に半透明な少女が現れる。

 右目に薔薇(ばら)の花を生やした、スマートなクール系美少女という、なんとも特徴的な姿をしたその少女は、ラジンの前までやってくると、ペコリと頭を下げる。


『お客様、ラジン様でお間違いないでしょうか?』

「…………」

『あぁ、申し訳ございません。わたくし、当ホテルの管理を任されております、イータと申します』


 ペコリと、イータは頭を下げる。


「(調子が狂うなぁ……)」


 ラジンとしては、いきなり自分の名前を言われて、驚いて無口になっただけである。それだけなのだが、こんな風に素直に謝られると逆にどうしたら良いか分からなかった。

 こんな風に、誰かに素直に謝られた事なんて、ラジンは経験していないのだから。


『お客様、名前の確認はあくまでも当ホテルに宿泊してもらうお客様の確認のために行っている事であり、他意はありません。他のお客様にも、全員行っている事でして』

「そう、なの……かっ?!」


 それだったらおかしくないかと思ったラジンであったが、その自分の他のお客様とやらの状況を見て驚いていた。

 全員だった。全員、自分と同じように、このイータという人物と話している。


「あんた、分裂できるのか?」

『いえ、私は……まぁ、似たようなことが出来るだけですね。えへへ』


 どこか困ったような笑顔を浮かべる彼女に、思わずラジンはドキッとしてしまう。


 ----どんっ!


「----?!」

『おや、お客様? いきなり背中のリュックサックが揺れたような?』

「いっ、いや、なんでもない! なんでもないんだ、本当に!」


 慌てて否定すると、イータは『そうですか』と納得してくれたようだ。

 納得してくれたのか、あるいは触れられたくないと判断されたのかは分からないが。


『では、早速ではございますが、当ホテルの簡単な規約。それと、これからの流れについてご説明差し上げたく思います。

 ----ようこそ、愛すべきお客様に最高のサービスを提供するホテル。ホテル・イスウッドへ』


 こうして、すぐさま帰るはずだったラジンは、イータに促されるようにして、ホテル宿泊の流れになったのであった。

ラジン「違うんです、本当に! 最初は帰ろうとしてたんですよ、本当に!」

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