第320話 Afterアレイスター配信
それから、1週間後。
本日は、アレイスターに渡しておいた【信仰と理想と天使と悪魔】の効果を試す時である。
この研究は誰にも見られる訳にはいかないため、私とアレイスターの2人は魔法魔道具【競争会場】の中に居る。
だだっ広い戦闘会場に居るのは、私とアレイスターの2人だけ。
試合会場には今回のテスト用にと、魔術を当てる用の的。それから【騎乗スキル】の確認用のロデオマシーンが置かれていた。
ちなみにこれは、以前に魔女スタダムが作り上げたのを見て、発注しておいたモノである。あの戦いの後、魔女スタダムは新生ハンドラ商会の会員となり、今では気軽に話が出来る間柄だ。
今回のこの魔法魔道具も、彼女の御厚意でかなりお安く手に入れられたのだ。ちなみにあの時は戦闘用として作り上げていたが、今回のこれはあくまで全力を出しても壊れない模擬戦場として作ってもらったタイプである。
この中でなら、思う存分、【職業力】のテストが出来る!
【職業力】を用いたこの計画が上手く行けば、私はどんな能力だろうと、思いのままに使う事が出来るようになる。まさしく革命と言っても良いだろう。
ゴーレムもまた錬金術の範囲に適用され、複数の効果を重ねる事は出来ない。私が特化型ゴーレムを作っているのは、1対1体のゴーレムに無数の能力を宿す事が出来ないから。これが上手く行けば、夢の万能型ゴーレムが誕生するに違いない!
「では、アレイスター。準備は良いかな?」
「えぇ、勿論!」
アレイスターはそう言って、持っていた【信仰と理想と天使と悪魔】を置いて、すっと的に向かって、手を構える。
「【火球】!」
-----ゴゴゴゴゴゴゴっ!!
「おいおい、これが【火球】?!」
私は驚いていた。アレイスターが放った魔術は【火球】、ビーチボールサイズの火炎の球を放つ、子供でも使える初級魔術。
しかしながら、いま目の前でアレイスターが放った【火球】は、ビーチボールサイズなんてモノじゃない。気球かと思うくらいに大きく膨らんでおり、さらに威力も私が知っている【火球】とは比べ物にならないくらい高火力であった。
「【魔術理解度向上】、杖なしでも発動できたッス!」
「みたいだね……」
正直、【魔術理解度向上】がここまでの代物とは思ってなかった。
あれは持っている人の魔術の腕を分析して、「あれがダメ!」「これがダメ!」「ここはこうするべき」って無駄にうるさく言って来るので、正直な所あまり人気がない魔術付与である。
私も、作った後に【信仰と理想と天使と悪魔】を持って魔術を発動しようとしたら、「魔術付与はこの辺りを削れるはず!」だの、偉そうに意見して来て本当にムカつきましたからね。正直、ほんの少しばかり強くなるのかと思っていたら、これは予想外である。
今度、【魔術理解度向上】のスキルも、どうにかしてみようかと見当の余地が出て来た。
まぁ、流石にあんなにズバズバ言うのは反感を買いそうなので、その辺をどうマイルドな表現にするかが課題でしょうけれども。
「マスター・ススリア?」
「……あっ! あぁ、問題ない。【魔術理解度向上】は、確かに会得できたようだ」
ちなみに【鑑定】しても、やはりアレイスターのステータスに【魔術理解度向上】というスキル名は表示されていなかった。勿論、【信仰度向上】と【乗馬スキル】の2つのスキルもない事を確認しておいた。
けっこうお高めの【鑑定】用魔道具を使ってみても判別できないということは、【職業力】で才能を付け足しできる事はバレずに済みそうだ。
なにか言われても、今回の【鑑定】結果を見れば、ただ単にアレイスターが頑張った結果、魔術の威力などが向上したと言い訳できる。
そして次は、【魔術理解度向上】以上に、獲得したのがバレたくないスキルだ。
「では、アレイスター。次はこのロデオマシーンの上に乗ってくれ」
「了解しました、マスター・ススリア」
アレイスターはそう言って、続いてロデオマシーンの上に乗った。アレイスターがきちんと座った事を確認した私は、ロデオマシーンのモードを【暴れ馬】モードに設定する。
魔道具【ロデオマシーン】は、乗馬の楽しみを味わいつつ、身体のシェイプアップを目指した魔道具である。そして、この【暴れ馬】モードは、もう二度と乗馬をやりたくないと思うくらい、激しく揺れるように今回のタイプにのみ搭載した機能だ。
上下左右、複雑に暴れ動くこの【暴れ馬】モードは、【乗馬スキル】がない限り、決して乗りこなせないくらいに過酷で、そして過激に仕上げてある。アレイスターがこの【暴れ馬】モードの魔道具【ロデオマシーン】に、しっかりと乗り続ける事が出来れば、【乗馬スキル】の方も会得したという事が分かる。
という訳で、スイッチオン!
私がスイッチを押して起動させると、魔道具【ロデオマシーン】はぐらんぐらんっと、最初からトップスピードで揺れ始めた。
当然、上に乗っているアレイスターは乗馬なんて初めてだ。あわあわと慌てふためいているだけで、備え付けの縄にも手を触れる様子はない。完全に素人丸出しというモノだ。
しかしながら、アレイスターの様子を見るに、落ちる気配はない。
雰囲気は素人同然なのに、彼女の身体が落ちないように最適解を見出しているように見える。
「これは、【乗馬スキル】も獲得できている感じですね」
【職業力】が上手く行ったようで、ホッとする私なのであった。
「【乗馬スキル】じゃなくて、【乗馬】やろ!!」と思われる方も
いらっしゃると思います
しかしながら、スキルとつけないとややこしいかなと思って
このような形で提供させていただきました




